マッサマンカレー
冬のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
その一方でテイクアウトや宅配も多く出ている。
それは冬だからこそ家で食べたいと思ったりもするのだろう。
麺類などは電子レンジがこっちの世界にないのでまだ試行錯誤中である。
「今回の届け先ってどこかな」
「10番街のラトリーさんの家ですね」
「10番街だね、ならそんな遠くないかな」
「はい、行きましょう」
今回の届け先は10番街。
宅配は保温性のある宅配用のバッグに入れて届けるようになっている。
「今回届けるのってカレーだっけ」
「はい、マッサマンカレーというカレーだそうです」
「マッサマン?」
「なんでも熱帯地域の国のカレーらしいです」
「そうなんだ」
「ココナッツミルクとスパイスを使ってあって世界一美味しいとも言われるとか」
「世界一って、それは大げさなんじゃ」
「なんでもその国には美味しい食べ物が凄くたくさんあるそうですよ」
「でも世界一っていうのは流石に言い過ぎのような」
「その国だと辛い料理や酸味のある料理が多いとは聞きました」
「今回届けるマッサマンカレーもその国の料理なんだよね」
「はい、カレーと言っても国によってそのスタイルは違うらしいです」
「同じ料理なのになんか深いね」
「ええ、カレーと一言で言っても国によってそのスタイルは別物らしいです」
「ココナッツミルクって普通の牛のミルクとは違うんだよね」
「名前の通りココナッツという木の実に含まれる水分みたいですね」
「それをココナッツミルクって言うんだ」
「南国の方に自生する植物で固い事でも有名みたいですね」
「料理については詳しくなったつもりだけど、まだまだ知らない事も多いな」
「そのまま飲んでも美味しいみたいですよ、ココナッツミルクは」
「へぇ、なら飲んでみたいかも」
「近くなってきましたね、行きましょう」
アレッシオも料理についてはなかなかに詳しくなっている。
とはいえまだまだ知らない事も多いようだ。
ココナッツミルクやスパイスの事など、知識としては聞いた事がある程度。
それでも店に来た当初に比べれば料理についてはかなり詳しくなったのは確かだ。
「でもカレーにも種類があるっていうのは意外だったかも」
「他にもグリーンカレーとか激辛のジョロキアカレーとかもあるみたいですね」
「やっぱり辛いものなんだよね」
「カレーを甘くする時ははちみつやりんごをすりおろして入れるみたいですね」
「はちみつにりんご、そういうのも入れるんだね」
「辛くする時はスパイスや香辛料を多く足すみたいですから、味の調節は出来るみたいです」
「カレーはうちのチビ達みたいな人の場合は甘い方がいいのかも」
「なんにせよカレーは自分で調節出来るという事ですね」
「それについても少し考えてみなくちゃ」
「この先です、行きましょう」
カレーは店の人気メニューでもある。
辛いものが好きな人も甘い方が好きな人もいる。
だからこそカレーはその辛さによって好きなものが変わってくる。
店のカレーは辛さも選べるので子供でも食べやすいのだ。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、先に代金として銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどですね、ではこちらはご注文のマッサマンカレーになります」
「はい、確かに」
「容器は行政区分に従った上での可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
マッサマンカレー、ココナッツミルクとスパイスが香るタイカレーの一つ。
味は辛さの中に甘さもあるのはココナッツミルクの味なのだろう。
また一般的なカレーに比べると酸味のある味になっている。
そういう味はタイカレー独特の味とも言える。
タイカレー自体がそもそも辛い傾向にあるのは確かでもある。
タイという国の味付けともいえるのがマッサマンカレーである。
「ん、これはなかなかに刺激的な味ですね」
「辛いのは確かなのですが、同時に甘さもある」
「この甘さは砂糖の甘さではないですね、もっと別の何か…」
「言うならばミルクのような甘さです、ただのミルクでもなさそうですが」
「スパイスというのは南の国のものと聞いていますが、これがその味ですか」
「この刺激、やはりカレーはいいものですね」
その頃のアレッシオ達は帰りの途中で休憩していた。
冬は体を暖める事も大切なので。
「ふぅ、美味しいね」
「保温出来る水筒というのも不思議なものですが」
「アヌークさんの持ってくるものって不思議なものも多いよね」
「それだけ技術が発達した国から来たのでしょうね」
休憩を終えたらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「宅配もしっかりと売れていて想定よりも儲けが出ていマスね」
「お店の味が家でも食べられるのは大きいんだと思います」
「やっぱり美味しいっていうのは正義なんだね」
「宅配の需要は確実にあったという事になりますからね」
「ではまた注文が入ったら頼みマスね」
お店の味を自宅でも。
テイクアウトや宅配のキャッチコピーはそれしかないのである。
異世界の人にもその味は確実に受け入れられている。




