シーフードパエリア
冬のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
その一方で宅配やテイクアウトも順調に売上を伸ばしている。
家で食べたいという需要にも対応してこそだとアヌークは言う。
美味しいものを提供するからには持ち帰りもウェルカムなのだと。
「今回の届け先ってどこかな」
「18番街のマークさんの家ですね」
「18番街、少し遠いね」
「それでも行くんですよ、行きましょう」
今回の届け先は18番街。
王都は広いので、遠くに届ける場合も当然ある。
「そういえば今回の注文って何かな」
「シーフードパエリアですね」
「パエリアってあれだよね、お米を炊いたやつだっけ?」
「浅い鉄鍋で炊いたやつだって言ってましたね」
「なるほど、でもライスの料理っていろいろあるよね」
「パエリアはサフランライスにするって言っていましたよ」
「サフラン?」
「香草の一種でライスが黄色くなるらしいですよ」
「あれってサフランだったんだ」
「サフランに似たものがこっちにもありますけど、高いですよ」
「そうなの?」
「少し勉強で食材や調味料を扱うお店に言った時に見ましたから」
「サフランってそんなに高いものなんだね」
「はい、香草としてはかなり高かったです」
「そんな高いものを普通に使ってそれも安く出せるお店って凄いね」
「それでもお店のメニューでは高い方らしいですよ」
「サフラン、こっちだと香草を使った料理とかってあったっけ」
「肉を香草で焼くみたいなのはありますね」
「香草焼きか、鶏肉とかだよね」
「はい、鶏肉を香草で焼く料理はあります」
「あたしは料理とかそんなしないからなぁ」
「香草自体は高いものから安いものまでピンキリですから」
「ソアレはきちんと勉強してて偉いなぁ」
「リーザさんも勉強してますよね?」
「まあしてるけど」
「ならいいんですよ、そろそろなので急ぎますよ」
サフランはこっちの世界にも似たようなものはある。
ただソアレが言うにはそれもとても高いものらしい。
香草も安いものから高いものまでピンキリである。
平民なんかでも手軽に買えるものは家庭料理にも使われたりもする。
そういった高いものは高いというのはこの世界でも当然のようである。
サフランライスに似たものは高級レストランなんかでは出るとのこと。
「それにしてもサフランライスか、黄色いライスってそういう事だったんだね」
「パエリアはサフランライスにするのが定番だそうですよ」
「それなのにあの値段で出せるのか」
「パエリアは鶏肉のものと魚介のものとあるらしいです、お店でも選べますね」
「今回のは魚介のパエリアだよね」
「はい、パエリアは浅い鉄鍋で炊いたライスですから」
「だとしたらピラフとかチャーハンに近いものなのかな」
「そんな感じだと思います」
「ライスと一緒に魚介とかきのことかを炊くとライスも美味しくなるのは知恵だよね」
「旨味がライスに染み込むからだそうですね」
「旨味、知らない事ばかりだなぁ」
「そろそろですね」
パエリアに限らずチャーハンやピラフも人気メニューでもある。
ライスを美味しく食べられる料理は珍しがられてもいる。
だからこそライスの料理は人気メニューだそうだ。
こちらの国ではライスはまだ珍しいものなのだとエトも言っていた。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、まずは先に代金として銅貨一枚と青銅貨二枚いただきます」
「これでお願いします」
「ちょうどいただきます、ではこちらがご注文のシーフードパエリアになります」
「確かに受け取りました」
「容器は行政区分に従った上での可燃ごみでお願いします」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきましょうか」
シーフードパエリア、名前の通りエビやイカをふんだんに使ったパエリアだ。
具が多い料理は高いという例に漏れない料理でもある。
それだけに店の料理でも高い方ではあるが、味も美味しいのだ。
少しリッチな人はよく頼んでくれる料理だとアヌークは言う。
とはいえそれでもこの世界からしたら格安で食べられるともいう。
それがレストランというものの考えの違いでもあるようだ。
「ふむ、これは美味しいですね、海の幸のライスですか」
「黄色いという事はそうなるように調理している、ですね」
「エビやイカといった魚介も美味しいですし、これはいいですね」
「しかし内陸のこの国で海の幸が食べられるとは」
「それだけ技術も持っているという事ですか」
「これならお腹も満足しそうですね」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
しっかり休憩するのも大切なのだ。
「ふぅ、落ち着くね」
「冬は温かい飲み物が落ち着きますね」
「だね、体が温まるし」
「はい、感謝ですよ」
休憩を終えたらそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま戻ったよ」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「宅配を頼んでくれる人も嬉しい限りデスね」
「お店の味を家でもって事だもんね」
「寒い季節だからこその巣ごもりかもね」
「宅配の仕事も悪くないものです、いつでもいけますから」
「頼もしい限りデスね」
冬だからこその巣ごもり需要なのかもしれない。
家でも食べられるというのはやはり大きい。
それだけ知られてきたという事なのだろう。




