ソーセージピザ
冬のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
その一方で宅配に関しても順調に売上を伸ばしている。
またテイクアウトしてくれる客も割と増えている傾向にあるとのこと。
家でも食べてくれるというのは店としても嬉しい限りのようだ。
「今回の届け先ってどこかな」
「11番街のジェレミーさんの家ですね」
「11番街か、なら寒いしさっさと届けちゃおうか」
「はい、行きますよ」
今回の届け先は11番街のジェレミーという人の家。
宅配に関してはこの都市の中だけは一応全域をカバーしている。
「今日届けるものって何かな」
「ソーセージピザですね」
「ピザってあれだよね、パン生地にチーズを載せて焼いたやつ」
「はい、チーズはこの国でも安く手に入りますよ」
「確かチーズって西の方の国の食べ物なんだっけ」
「発祥の地は諸説ありますが、西の方にある海沿いの国と言われてますね」
「あたしの故郷だとヤギのチーズは結構有名だよ」
「ヤギのチーズですか?」
「うん、ヤギを飼ってる家も多いからミルクっていうと牛よりヤギなんだよね」
「リーザさんの故郷って離島でしたよね」
「そうだよ、牛も飼ってるけどヤギの方が多いと思う」
「それでヤギのチーズなんですね」
「アヌークもヤギのチーズは好きって言ってたよ」
「だとしたらアヌークさんの国でもヤギのミルクは普通なんでしょうね」
「でもお店のピザのチーズはバッファローのミルクのチーズらしいね」
「バッファロー、チーズも様々ですね」
「ピザって美味しいしね、チーズをたっぷり乗せたのがあたしは好きかな」
「今回のソーセージピザのソーセージってヴルストの事ですしね」
「国によって呼び方は違うんだろうね」
「美味しければそれでいいんですよ、美味しいは正義です」
「ソアレも言うようになったね」
「そろそろ11番街ですね、行きましょう」
そのまま11番街に足を踏み入れる。
11番街は中流層の多い地域になる。
また中流層ながらも割と裕福に寄っている人が多い。
格差があるというのは大きな都市の宿命というべきなのか。
「ピザってあたし達にも作れたりするのかな」
「プロの人は生地を空中で伸ばしていくそうですよ」
「マジ?」
「はい、生地を放り投げて回しながら伸ばすんだとか」
「なんか曲芸みたいだね」
「本場のピザ職人はそうやって作っているそうです」
「ピザってそうやって作るのか…」
「ただ本場のものはピッツァというそうで、ピザとはまた違うとか」
「そうなの?どう違うのかあたしにはよく分からないけど」
「そこは国による違いなんだとアヌークさんは言っていましたね」
「ふーん、ピッツァとピザか」
「そこはそもそもが別物なのかもとかは言われてるらしいです」
「この先かな」
「ですね、行きましょう」
ピッツァとピザの違い、ピッツァはイタリアでピザはアメリカみたいな感じなのだろう。
あとは作り方や他にも生地の違いなどがあるとアヌークは言う。
日本のピザが高いのはチーズの関税や具が多いからというのはアヌークの持論。
人件費などもそうだが、宅配以外で購入すると日本のピザも割と安いのだ。
「ここだね」
「すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「はい!」
「お待たせしました」
「はい、まず先に代金として銅貨一枚をいただきます」
「これでいいですか」
「はい、ではこちらがご注文のソーセージピザになります」
「はい、確かに」
「容器は行政区分に従った上での可燃ごみでお願いしますね」
「分かりました」
「ではまたのご利用をお待ちしています、それでは」
「さて、いただきますか」
ソーセージピザ、輪切りにしたソーセージをたっぷり乗せたシンプルなピザだ。
シンプルながらもチーズは割と多いのも嬉しい。
そこにトマトソースという子供にも人気のピザでもある。
店としては子供の人気もある程度は意識しているのはあるようだ。
なのでこういった子供が喜びそうなメニューもある程度充実させている。
もちろん大人でも人気は高いものである。
「ん、これは美味しいですね、生地はふわっとしててチーズも美味しい」
「ソーセージというのはヴルストの事みたいですね」
「シンプルなのにこの美味しさは素晴らしいです」
「それにしても割とボリュームがあるんですね、ピザというのは」
「これならお腹も満たされて満足出来そうです」
その頃のリーザ達は帰り際に休憩していた。
防寒具と温かい飲み物を持たせてくれるのもスタッフへの気配りである。
「はぁ、温まるね」
「この水筒は温度を保てるみたいですけど、不思議な水筒ですね」
「でもだからこそ寒い中でも温かいものが飲めるのはいいよね」
「全くですね」
休憩を終えてそのまま帰路につく。
帰ったらまた仕事である。
「ただいま」
「お帰り、はい、温かいおしぼり」
「ありがとうございます」
「冬は宅配も確実に増えていマスね」
「家で食べたいっていう人も多いんだろうね」
「寒い季節はそうもなるよね」
「それでも仕事はしますから、任せてくださいね」
「ハイ、頼みマスね」
冬はやはり外に出るのが億劫なのだろう。
だからこそ宅配が増えるのも納得である。
宅配も来店もテイクアウトも美味しいと言ってもらえるのが嬉しいのである。




