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オイスタースパイス焼きそば

冬のフェアが始まりフェアメニューが新しくなった異世界キッチン。

期間はアヌークの世界で言う２月の末までが冬のフェアとなる。

そんな冬は美味しい食材も豊富な季節。

野菜も果物も肉も海産物も冬だから美味しいものが多い。

「この辺りかしら、噂の料理屋って」

「なんでも美味しい海産物が食べられるって聞いたけど」

「内陸のこの国で海産物って本当なのかしら」

「あ、ここみたいね、行きましょう」

彼女の名はマライア、漁師の娘で国に魚の加工品を卸している。

仕事で立ち寄った際に話を聞いてやってきたようだ。

「防犯はしっかりとされているのね」

「中は暖かいわね、これもキカイなのかしら」

「いらっしゃいませ！何名様ですか！」

「一人よ」

「かしこまりました、おタバコはお吸いになられますか」

「いえ、吸わないけど」

「かしこまりました、では禁煙席にご案内します」

「店員は全体的に若いのね、それに一人のお客も多いみたい」

そうして席に案内される。

そこで一通りの説明を受ける。

説明は問題なく理解した様子。

続いてタブレットの説明に移る。

「タブレットの説明をしますね、まず画面をタッチしてください」

「こうね」

「続いて食べたい料理をタッチします」

「こうかしら」

「はい、そして選択の際はこうしてスライドします」

「こうね」

「そしてよろしければここをタッチ、そして確定をタッチします」

「分かったわ」

「一旦リセットして…では説明は以上になります、それでは」

そうして由菜は一旦下がり別の料理を運びに行く。

マライアは一旦水を取りに行く事に。

「さて、水を取りに行かないと」

「ここにコップを当てて…これはどこから水を引いているのかしら」

「あとは氷と手拭き、それにしてもこれだけのものを使い捨てで用意出来るとは」

「さて、注文を決めてしまわないと」

「海産物の料理…本当にあるのね、何にしようかしら」

「ん？フェアメニュー…ならこれとこれ、あとこれで確定っと」

「さて、飲み物を取りに行かないと」

そうしてドリンクバーに飲み物を取りに行く事に。

一通り見て選んだのはベルガモットティーだった。

元々お茶が好きらしく、仕事の関係でお茶にもよく触れる。

漁師の娘ながらお茶にも詳しいのだとか。

「ん、これは不思議な味…味からして香草の一種かしら」

「でも飲みやすくて、体も温まるわね」

「香草のお茶、はじめての経験だわ」

「はぁ、落ち着く」

そうしているとオイスタースパイス焼きそばが運ばれてくる。

大粒の牡蠣を乗せたピリ辛焼きそばに特製スパイスがついた一品だ。

「お待たせしました、オイスタースパイス焼きそばになります」

「ありがとう」

「お好みでこちらのスパイスチップをかけてください」

「分かったわ」

「ではデザートが必要な時はお呼びください、それでは」

「ではいただきましょうか」

オイスタースパイス焼きそば、ピリ辛のソース焼きそばに大粒の牡蠣を乗せたもの。

また焼きそばを炒めるのにもオイスターソースを使っている。

そしてピリ辛の味付けだが、辛いものが苦手な人でも食べやすい。

また付属のスパイスチップはアヌークが独自に配合した秘伝のスパイスだ。

ちなみに細めの麺にニラやもやしなどの野菜を加えて炒めた焼きそばである。

ただしアヌークなりのこだわりもある模様。

焼きそばを作る際には麺の量が主に野菜より少なくならないようにする。

それはアヌークのこだわりの一つであり、焼きそばを作る上での信念だ。

あくまでも主役は麺であり野菜ではない、それがアヌークの焼きそばへの信念。

野菜ばかり多くて麺が少なく感じるものは焼きそばとは思っていないそうな。

「ん、これは美味しいわね、少し辛いけどそれが美味しい」

「これがカキってやつなのよね、見た感じ貝かしら」

「貝を油で軽く揚げてある？それもこんな大粒なんて凄いわね」

「麺を炒めるのに使ってるのも貝のソースみたいね」

「このスパイスをかけて…これはこれで美味しいわね、スパイスの味がよく合うわ」

「スパイスをかけて味が変わるというのも面白いわね」

「確かにこれは美味しい海産物ね、内陸の国でこれは凄いわ」

そうしているうちにオイスタースパイス焼きそばを完食する。

続いてデザートを頼む事に。

「お待たせしました、デザートですか」

「ええ、お願い」

「かしこまりました、では器はお下げしますね、少々お待ちください」

それから少ししてみかんゼリーが運ばれてくる。

冬のフェアメニューのデザートの一つで、みかんの味が濃いゼリーである。

「お待たせしました、みかんゼリーになります」

「ええ、どうも」

「こちらは伝票です、会計の際にお持ちください、それでは」

「さて、いただきますか」

みかんゼリー、シンプルにみかん果汁を使ったゼリーだ。

それを崩してあるためスプーンで食べやすくもある。

「ん、これは美味しいわね、果物の味が凄く濃い」

「それを固めて再度崩してあるのね」

「これなら食後でも美味しく食べられるわ」

そうしているうちにみかんゼリーを完食する。

飲み物を飲み干し会計を済ませる事に。

「支払いをお願い」

「はい、オイスタースパイス焼きそばとみかんゼリー、ドリンクバーですね」

「全部で銀貨一枚と青銅貨一枚になります」

「これで」

「銅貨二枚と青銅貨一枚でちょうどいただきます」

「満足していただけマシタか」

「あなたが料理人かしら」

「ハイ、シェフ兼オーナーのアヌークといいマス」

「とても美味しかったわ、あのオイスターというのは貝類でいいのかしら」

「はい、カキという貝デスね、ただ生で食べるとノロウイルスの危険がありマス」

「要するに加熱して食べろという事かしら」

「熱を通しても完全に安全ではないデス、でも生よりはずっと確率は下がりマスね」

「そんなものを出して大丈夫なの」

「一応死に至る病気にはなりマセン、トイレから出てこられなくなる程度デス」

「それはそれで困るような」

「ノロウイルスはあくまでも胃腸の問題デス、発症したらうちで手を施しマス」

「ならいいんだけど」

「なのでうちでは生の牡蠣は出さないと決めているのデスよ」

「でももし発症したら？」

「その際は国のお抱えの医者に診察させるように契約していマスから」

「ノロウイルスにかかった場合のみよね」

「ハイ、加熱してあればなる確率は極めて低くなるというだけデスから」

「なら信じるけど、おっと、それじゃそろそろ行くから、機会があればまた来るわね」

「流石に加熱してあれば平気だよね」

「もし発症したらその時はエトサンに医者を用意させマスから」

そうしてマライアは満足そうに帰っていった。

カキは基本的に火を通したものしか出さないのがこの店だ。

それでもノロが出た時はエトを通じてそれを教えた医者を保証させている。