焼豚チャーハン
秋のフェアメニューも順調に売れている異世界キッチン。
そんな中でも甘いものの人気があるとのこと。
その一方で宅配も順調に対応メニューを拡大中。
なので対応メニューはそれを持ち運ぶための容器の確保をしているそうな。
「今回の届け先ってどこかな」
「えっと、17番街のスタイナーさんのお宅ですね」
「17番街か、ならそんなに遠くはないかな」
「はい、行きましょう」
今回の届け先は17番街。
王都は広いとはいえそれでも宅配に対応させているのは本気という事だ。
「そういえば今回の注文って焼豚チャーハンだっけ」
「はい、でも焼豚と言うのに実際は煮て作る料理みたいですよ」
「煮て作るのに焼豚?なんか不思議な感じだね」
「なんでも文字にすると焼豚ですが、実際は豚肉を煮る料理なんだとか」
「そうなんだ、それって確かチャーシューってやつだよね」
「はい、豚肉のブロックを甘いタレで長時間煮込むものですね」
「美味しいんだよね、余り物をたまにもらうけどお父さんの晩酌に最適だって」
「お酒を飲む人なんですか?」
「うん、でも基本的に一人で飲むし飲みすぎる事もないみたい」
「そこは弁えているんですね」
「お父さんもお酒は飲むけど、それは自分へのご褒美って言ってた」
「自分へのご褒美ですか、そういう考えなら大丈夫でしょうか」
「あとチャーハンってあのライスを炒めた料理だよね」
「はい、アヌークさんが言うには火力と油が命なんだそうです」
「火力と油?」
「家庭でも作れるんですが、火力の関係でお店のもののようにパラパラは難しいと」
「そうなんだ、でもチャーハンって美味しいよね」
「パラパラのライスと細かく刻んだ具が美味しいですからね」
「それで焼豚チャーハンか」
「料理は具が増えると値段も高くなるのは必然だと言っていました」
「そっか、それはそうかも」
「こっちですね、ここから真っ直ぐに抜けた先です」
アレッシオの父親はお酒を飲むのは自分へのご褒美らしい。
なので普段から飲んだくれているというわけではない。
なのでアレッシオがもらって帰るおつまみなんかは嬉しいのだとか。
またアヌークにレシピをもらっているので簡単なものは作るようになったとか。
それによりアレッシオの家の食卓も少し贅沢になったようだ。
それもアレッシオが一気に高給取りになったおかげだろう。
「でもまさか僕が料理をするようになるなんて思わなかったよ」
「アレッシオさんは料理はしない人だったんですか?」
「うん、だからお母さんの苦労も分かったよ」
「ならそれはよかったのかもしれませんね」
「もちろん難しいものを作れるわけじゃないけどね」
「でも作れるだけ立派ですよ」
「そうだね、だから簡単なものでも美味しいって言ってくれるのは嬉しいよ」
「立派な親孝行ですね」
「まあ流石に給金で銀貨十枚もらってるっていうのは最初は驚かれたけど」
「銀貨十枚って普通に高給取りですからね」
「本当だよ」
「それだけ出せるアヌークさんも凄いという事でしょうけど」
「そろそろかな」
「ですね、行きましょう」
そのまま17番街へと足を踏み入れる。
その足で目的地のスタイナーさんの家へと向かう。
「ここかな、すみませーん!キッチンハウスの宅配です!」
「ご注文の品をお届けに上がりました!」
「はい!」
「すまんすまん、待たせたな」
「はい、では先に代金で銅貨一枚と青銅貨二枚をいただきます」
「これでいいか」
「はい、確かに、ではご注文の焼豚チャーハンになります」
「サンキュな」
「食べ終わった容器は行政区分に従った可燃ごみで処分してください」
「可燃ごみな、分かった」
「あと早めに召し上がってくださいね」
「分かった」
「では失礼します」
「またのご利用をお待ちしていますね」
「さて、早速食うかな」
焼豚チャーハン、その名の通りチャーシュー多めのチャーハンだ。
普通のチャーハンよりもチャーシューが倍の量入っている。
その分普通のチャーハンよりも割高だが、人気の一品でもある。
細かくカットされたチャーシューがたくさん入っているのは嬉しいのだろう。
それもあってなのか肉が好きな人にも人気でもある。
やはり肉はそれだけ人気という事らしい。
「さて、この匂いがたまらないな」
「ん、美味いな、ライスがパラパラで肉もたっぷり入ってる」
「それに少しだけピリッとした感じの味もいいな」
「これはガンガン食べられて止まらないぜ」
「ライスがこんな美味くなるなんて凄いもんだな」
「肉も美味いし、ライスも美味い、最高だぜ」
その頃のソアレ達は帰り際の休憩をしていた。
休憩はきちんと取るように言われているらしい。
「ふぅ、落ち着くね」
「水はきちんと飲むようにと言われてますからね」
「だね、それは大切だって言ってたし」
「飲んだらお店に帰りますか」
休憩を終えて店に帰還する二人。
帰ったら次の宅配まで店での仕事だ。
「ただいま戻りました」
「お帰り、はい、おしぼり」
「ありがとうございます」
「宅配も順調に知られ始めているみたいデスね」
「家で食べられるっていうのは好評みたいですから」
「それが宅配の売りだもんね」
「そういうサービスはこの街だと強いですからね」
「では休んだらまた頼みマスね」
「はい」
「分かりました」
そうして宅配は順調に王都に知られていく。
店の味を家で食べられるというサービス。
それはこの街の他の飲食店にはなかなか手を出しにくいサービスである。




