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プリンタルト

宅配スタッフの募集をかけてから少し。

そう簡単に来るものかと思っていながらもそれを待つ。

そんな待っている日の開店前。

噂をすればなんとやらのようではある。


「おはようございます」


「あ、おはよう、アレッシオ、リーザ…と誰?」


「例の募集の人だよ、お店の前で見つけた」


どうやら噂をすればなんとやらのようだ。


とりあえず開店前に面接を済ませるべく由菜がアヌークを呼んでくる。


「お待たせしマシタ、あなたが宅配スタッフの募集で来てくれた方デスね」


「おもてなしのプリンタルトだよ、どうぞ」


「とりあえず名前を聞かせてもらっていい」


「あ、はい…えっと、ソアレ・セイーシアといいます」


「ソアレだね、宅配スタッフなんだけど、本当に大丈夫?」


「あ、はい…一応力もあります、それにこの国の街の事なら大体は…」


「見た感じ子供だし、力があるようにはお世辞にも見えないよね」


「ですがこの国に限らずこれぐらいの年齢から働いている人はいます」


「そうなのよね、国としてはそういうのは本当はってとこなんだけど」


「あ、美味しいです」


とりあえず募集で来たのは小柄な体格で向こうで見ると中学生ぐらいの女の子。

どう見ても腕っぷしが強そうに見えない細身の体。


メイド服のような感じの服を着ているため、そういう仕事の志望なのか。

それとメガネをかけている事から視力はよくないのだろう。


視力の悪い人は目が細くなるという事もあり、恐らくはインドア系の人だ。

それに加え明らかに気が弱そうな感じを受ける。


「宅配スタッフは注文を受けた料理をその人の家に届ける仕事になりマス」


「街の事には詳しいみたいだけど、そっちは平気かな」


「はい…重いものも持てますし、問題はありません」


「ねえ、試しにあれ持ってみてよ」


「あれは野菜の箱ですね、姫様ではびくともしないものですよ?」


「はい、えっと…これでいいですか」


「嘘でしょ、あの箱あたしでも凄く重いやつだよ」


「えっと、アヌーク、あの箱何キロあるの?」


「あれは5キロぐらいデスね」


「それをあっさりと…うん、力があるのは分かった」


「それより背中にしょってるものが気になるんだけど」


「あ、これはバトルアックスです、護身用に買った武器ですね」


「バトルアックスってそれこそ武器の中ではかなり重いものなんだけど…」


「持たせてもらっていいかな」


「はい、どうぞ」


「ふっ!あれ?ふっ!」


「アレッシオも腕力は少しはついてて、それなのに少ししか持ち上がらないね」


「こんな重いものを使ってるとか…その小さな体と細い腕はなんなの…」


「採用デスね、これはとてもいい人材デス」


そのギャップにアヌークは即決で採用と言ってしまった。

流石に150に満たない身長でしかも細腕でバトルアックスである。


ここで働くようになって料理をまとめて運ぶようになったアレッシオでも重いもの。

それを片手で持ち上げる小さな細腕の美少女というまさに異世界な存在。


メイド服はそういう仕事に就きたかったのかとも思う。

その事から料理は問題なさそうで、街の地理にも詳しいと本人は言う。


条件は完全に揃っている事からもこれは採用である。

しかしとんでもない人材が来たものである。


「とりあえず仕事については分かった?」


「はい、注文を受けた料理をその人の家に届けるんですよね」


「うん、注文は電話で受けるから、それは手の空いてる人がやるね」


「その料理をこっちで調理しマス、完成したら届けてクダサイ」


「分かりました、それぐらいなら私にも出来そうですから」


「そういえばあんた、メイドにでもなりたいの?」


「えっと、料理とかは好きです、この服は可愛いと思ったので自作して」


「そうでしたか、それにしてもメガネとは、メガネは結構しますよね?」


「本を読んだりするのが好きで、気づいたら目が悪くなってて…」


「メガネって高いって聞くけど、それいくらしたの?」


「えっと、銀貨5枚ぐらいです」


「それならまだ安い方だと思いますよ、平民でも手が出せるギリギリぐらいです」


「こっちのメガネはそんな感じなんだ、それじゃよろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


「イクスラサン、チラシの方はもう行けマスか?」


「はい、合意は取り付けています、いつでも置いてもらえますよ」


「分かりマシタ、では宅配は来週の頭から始めマス」


「かしこまりました、ではそのように手配させていただきます」


「イクスラは本当に有能だわ、流石ね」


「なんか凄い職場に来たんでしょうか…でも美味しいものも食べられる…」


「では開店まであと少しデス、各自頼みマスね」


「あの、手が空いてる時は私も手伝います」


「そうデスか?ならお願いしマス」


「はい、任せてください」


そんなこんなで宅配スタッフとしてソアレが加わる事になった。

まさに異世界と呼ぶに相応しいその人材。


国内の地理に詳しく、腕っぷしも強い子供という凄さ。

とはいえ本人は気弱だし、争いは好まない。


それでも護身用の武器にバトルアックスを選ぶそのセンスにアヌークは惚れた。

宅配も常に入るわけではないので、手が空いている時はキッチンスタッフに回す。


宅配は来週の頭から始まる、チラシはそれに合わせて各所に置いてもらう事に。

新聞の折込チラシと合わせての宣伝がどの程度広まるか。


電話はすでに工事が完了し、番号も割り振られている。

あとは開始してから次第となる。


宅配サービスはこの国の人々の助けになるのだろうか。

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