世界救ったら全世界に告白を中継された
『この映像を君が見ているということは、僕はもうこの世には居ないんだろう。これだけはどうしても君に伝えたかった。身勝手で本当に済まない。でも、この我儘くらいはきっと、君なら許してくれるだろうと思う。僕は君のことが──
「はい」
端的に言うと、僕はめっちゃ怒られている。好きな子から。
もうずっと地面に膝を着いた状態から姿勢を変えることすら許されず、足が痺れてきている。
「で?私のことを愛してる勇者様は?仲間を置いて?一人で魔王城に吶喊して?自爆して?どうするつもりだったのかな?」
なんていうか、いまの僕の気持ちを答えよう。すごく、恥ずかしい。
だってさあ、普通に決死の覚悟だったんだよ。絶対に、みんなを守れて、確実な方法は、これしかなかったから。
「しかもなんで自爆した上で無傷なのよ」
勇者の加護って、思ったよりも凄かったらしい。自前の魔力も加護の対象だった。僕ってどうやったら死ねるのだろうか。
「そこまでは、まあ、全くもって許さないんですけどかろうじて、理解も納得もしてやらないけど、事実として認めてあげるとして」
彼女のつま先が、僕の太ももを突っついてきた。めっちゃしびれる。泣きたい。というか、泣いた。
「なんで、無傷なのに、そのまま姿を隠そうと、したの、かしら?」
「ちょっと歴史の影になってみたくて」
こう、後世の人から、複数人の偉業を習合した存在とか考察されてみたい気持ちが2割ほどあった。
「それなら、私もさらってからそうなりなさいよ、せめて。どうせ、新しい争乱の種になるのを嫌って消えようとしたんだろうけど」
「ぎくっ」
「本気でその効果音口から出すのは、あなたくらいね。その心配はなくなったわ、とっくに」
「え」
どうやって?
「すごいわよね、魔法使いって。いくら王位継承権も持っていたとはいえ、あっという間に王国を帝国に」
「え、なんかすごい怖いこと言ってない?」
どうやって?(2回目)
「あと、私も実はすごくて、あなたが遺した(笑)記録をね。世界中に広める事ができる加護を、今さっき都合よく授かったのよね」
どうやって?(3回目)
「聖女に甘すぎないかな、この世界」
「あんたがいうな。で、どうする?もっと怖いことできるわよ、私達」
僕の仲間達は本当に最高だった。
「戻ります……あと、結婚してください……」
「ついでなのが気に入らないから、すでに実は世界に公開しちゃった♡」
「え」
外堀が埋まったどころではないらしい。
これが僕の罪だというのか──。
「知ってるかしら。人の恋路を邪魔すると、聖女に大逆襲される、って」
「当事者もそうなるかあ」
「当たり前じゃない」
そっかあ、当たり前かあ。
じゃあ、もういいか。
「その、不思議な加護って、今発動できる」
「できるわよ」
「発動してほしいな」
「別にいいわよ」
ぶおんと音がして、四角い枠のようなものが出てきた。枠の中は空白のはずなのに、知らない景色が写ってる。
「これで世界中に今、見えてる状態ね。で、これから何を宣言するの、人類最高の勇者様は」
「僕っていうより、君もかな」
「どういう意…………〜、?!!んむっ!?」
僕達の初めての口づけは、たぶん相当深かった。後日、魔法使いにめちゃくちゃからかわれた。




