87 バレンタインデーに向けて
冬休みが終わって三学期が始まったけど、卒業式までは特に大きな学校行事は無い。
2月に入ると節分があるので、低学年が豆まきをしたり、給食に豆や恵方巻きが出たりする程度のことはあったけど、私達が能動的に何かをするということは何も無かった。
ちなみに恵方巻きは、一口大に切ってあって、恵方巻きである必要が無いだろう……って思ったよ。
たぶん、喉に詰まらせることを危惧しての処置だろうけれど、恵方巻きって恵方を向いて無言で1本を食べきる物だよね……。
まあ、私はそういう風習にこだわりは無いので、別にいいけど……。
そんな訳で学校行事は無いのだけど、何故かクラス内にはそわそわした空気が漂っていた。
まあ、私にも分かるよ。
2月と言えばバレンタインデーだしね。
もうテレビや雑誌でも、その話題をよく見かける。
でも、この女子しかいないクラスで、需要がある行事なの?
私みたいに女の子が恋愛対象になることを自覚した人なら、分からないでもないけれど……。
そういう人、そんなに多くいる?
それともクラスの外に、チョコを渡す人がいるのだろうか?
そして私のすぐ傍にも、そわそわしている人がいた。
「も、もうすこしで、バレンタインデーですね、珠戸さん!」
「そうだね」
……さすがに私もそろそろ分かるよ?
福井さんが私に向けてくる感情が、お母さんのと同じようなものだということを。
でも、福井さん自身がアクションを起こすまでは、静観かなぁ……。
福井さんは魅力的な人だとは思うけど、私はまだ恋愛には興味が無いし、今の友人関係をあえて壊したくないというのもある……。
だけど友人として、親交を深めること自体は悪くないと思う。
「それじゃあ、みんなでチョコでも作ろうか?」
「いいですね!」
そんな訳で、いつものみんなで手作りチョコのイベントを企画することになった。
「そんな訳で、材料費を出して欲しいんだけど……」
「はい」
お母さんにチョコ作りのことを話すと、あっさりと材料費を出してくれた。
なんと5000円だ。
業務用のチョコを買い込むことにしよう。
で、お母さんがこんなにあっさりと、お金を出した理由なんだけど……。
うん、私の手作りチョコが貰えることを、期待してのことだというのは分かっている。
「ありがと。
出資者のお母さんには、大きなチョコを進呈する予定です」
「わーい、ハート型のお願いね!」
「それはどうかな……。
そもそも、形だけの愛がこもっていないのでもいいの……?」
「ええ!
そう言いつつも、実は愛がこもっているという、ツンデレな可能性に賭けてみるわよ!」
「……そうだね。
2%くらいは可能性があるかもね」
「え~!?」
正直言って、私にも自分の気持ちはよく分からないところもあるからねぇ……。
まあ親子愛くらいは、あるんじゃないかな……。
ともかく今度の休みに、みんなでチョコ作りだ。
会場はいつも通り、丹治易さんの家。
あそこのキッチンは広くて設備も整っているから、楽しみだなぁ。




