84 お正月と相談
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あれから私とお母さんの間では、ぎこちない空気が漂っている。
さすがにお母さんも反省したらしく、過度なスキンシップもしてこなくなった。
一方私はというと、あんなことがあった所為で大掃除が中断してしまい、その遅れを取り戻す為に大忙しだった。
大晦日はおせち料理も作らなきゃないけないしね。
……まあ、家事に集中することで、色々と忘れることができたので、私にとっては良かったのかもしれない。
そして大晦日の晩は年越し蕎麦を食べて、私は早めに寝た。
元々夜更かしは得意じゃないので、今までも除夜の鐘を聞いたことがない。
それに都合の悪いことを忘れる為には、やっぱり眠るのが1番だ。
そして翌日──。
「「あけましておめでとうございます」」
私とお母さんは、新年の挨拶をかわした。
そしてお母さんは、
「はい、綺美ちゃん、これ」
と、お年玉を渡してきた。
「ありがとう」
ポチ袋の中身を見てみると、いつもの倍額は入っていた。
「お母さん、これ……」
「ん~、なんのことかなぁ~?」
取り合うつもりはないようだ。
……もしかして慰謝料のつもりなのかな?
う~ん、クリスマスに無駄遣いしたばかりだから、家計に響かないかちょっと心配だけど、うちは親しい付き合いをしている親戚がほぼいないから、お年玉を貰える機会は少ないんだよねぇ。
だからありがたく貰っておこう。
その後、朝食……というか、正月なので昼近くまで惰眠を貪っていた為、昼食と兼用でお雑煮を食べた。
それが終わって片付けが終わったら、ゆりさんのところへ行くことにする。
作ったおせちやお雑煮を、お裾分けする為だ。
「あけましておめでとうございます」
「おめでとー、綺美ちゃん。
はい、お年玉」
「あ、そんな気を使わなくてもいいのに」
「いやぁ……、いつも差し入れをもらっているから、食費だと思ってよ」
「そういうことなら……」
私は素直に受け取っておくことにした。
「ゆりさん、今……時間がある?」
ゆりさんは作家なので、正月でも仕事がある。
完全に休みならば、実家に帰省していてもいいはずなのに、それをしていないのが証拠だ。
まあ、ゆりさんのことだから、そのうちさくらちゃんの顔は見に行くのだろうけれど……。
「今は大丈夫だよ。
何か?」
「じゃあ話があるから、ちょっと上がらせてもらうね」
私は百合さんの部屋に入り、テーブルの椅子に座った。
ゆりさんも、その正面に座る。
「話があるって、何かな?
綺美ちゃん」
「あのね……ゆりさん。
ゆりさんがイベントで買ってきて、お母さんに渡したあの薄い本はどうなの?」
「!!」
私の言葉を聞いた途端、ゆりさんの目が泳ぎ始める。
その額には、冷や汗が目立つ。
「えっと……それは……その……」
ゆりさんはなんと答えていいのか分からないのか、まともな言葉はなかなか返ってこなかった。
そしてようやく──、
「……もしかして綺美ちゃん、中身を見ちゃったの?」
「うん、まあ……」
ゆりさんは、「あちゃー」という感じで、顔を片手で覆った。
「ごめん、ちゃんと管理しなかった先輩が悪いけど、私もごめん」
そして平謝りだ。
「まあ……ゆりさんは悪くないから、そんなに謝らなくてもいいんだよ。
それでね……私としては、あまりああいうのを、親には読んで欲しくないとは思うんだけど……。
でも、大人には……お母さんには、どうしても必要な物なのかな……?
その辺はどうなの、ゆりさん?」
私がゆりさんにそう質問すると、今度はきっぱりと──、
「それは必要!」
と、断言した。




