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83 気付いてしまった

 12月30日──。

 明日で今年も終わる。


 私は大掃除の為に、家の中を行ったり来たりしていた。

 お母さんは学校にちょっとした用事があるらしく、今はいない。


「さて……お母さんがいないうちにやっておくか……」


 私はお母さんの部屋を掃除することにした。

 うわ……相変わらず散らかっているなぁ。

 とにかく物が多い。


 その大半は本なんだけど、数千冊はあるから、本棚に入っているものは下手に整理しようとすると1日仕事になるので、手を付けない。

 表面に付着した(ほこり)を落とすだけにとどめる。


 片付けるのは、床に置かれた雑誌などだ。

 大人なのに結構漫画雑誌が多くて、クラスのみんながこれを見たら、どう思うのだろう……と、ちょっと感じる。


「ん……?

 なにこの薄い本?」


 床の雑誌を片付けようとして身を(かが)めると、直立姿勢からは死角になる本棚の1番下の段──その奥に、ペラペラの本があった。

 なにかのパンフレットかな……と思ったけど、表紙を見ると漫画のようだ。

 しかもこれは、えっちなやつでは……?


 これ……私が見ちゃいけないやつだよね……?

 でもこの表紙の……女の子同士……?

 もしかして、お母さんが私としたいことが、描かれているの……?


 怖い物見たさ……じゃないな。

 純粋な好奇心というのが無かったと言えば、嘘になる。

 私は恐る恐ると、その本のページをめくる。


 え……これ、母親と娘で!?

 やっぱりこれって、お母さんの願望……?


 嘘、そんなことまでする……って、これ何してんの……!?

 ヤバイ……心臓の音、凄い……!

 顔が熱い……!


「ただいまー」


「ひうっ!?」


 お母さんが帰ってきた!?

 早く……早く、冷静さを取り戻さなきゃ!

 いつも通り……いつも通り……!

 …………よし。


「おかえりなさい、お母さん。

 取りあえず、正座して?」


「え……また?

 ……なんで?」


 お母さんは、訳が分からないという顔をしつつも、素直に正座をした。

 いつも何かしらやらかしているので、自分では心当たりが無くても、「何かをやってしまったのかも……」と、思っているのかもしれない。


 そんなお母さんの前に、私は例の本を置いた。


「なっ……!?」


「お母さんの部屋で見つけました」


「わっ、わ~~~っ!!」

 

 お母さんは、本の上にガバリと覆い被さり、それを隠す。


「き、綺美ちゃん……!

 こっ、これはね……!?

 ゆりちゃんのお土産で……!」


 ああ、なんか漫画の祭典とかに行っていたんだっけ……。

 あとでゆりさんとも、ちょっと話し合おうか。


「これは別にその……」


「お母さん」


「はいっ!?」


 何か言い訳をしようとしていたお母さんの言葉を、私は(さえぎ)る。


「大人なんだから、そういうのを見ちゃ駄目とは言わないけどさぁ……。

 子供の手が届かないところに保管するのは、大人としての義務だよね……?」


「そっ、そうですね!

 酔っ払っていた時に、うっかりいつもの場所とは違うところに入れちゃったんじゃないかと!」


 いつもの場所……。

 つまりそこには他にもこういう本があるんだ……。


「これはペナルティが必要かなぁ……。

 クリスマスにプレゼントした『一緒にお風呂券』と『添い寝券』は没収だね」


「ええっ、そんなっ!?」

  

「あ゛?」


「いえ……(つつし)んで返上いたします……」

 

 お母さんは異議を唱えようとしたが、私が声を低くして聞き返すと、あっさりと引き下がった。


「そうだよね……。

 こんなの読んでいるお母さんは、気持ち悪いよね……」


「……そこまでは言っていないけど、まあ……うん」


 私は否定できなかった。

 この薄い本を抜きにしても、日頃の言動がね……。


「ともかく、反省してよね」


「あ……」


 そう言い残して、私は自分の部屋に戻る。

 お母さんから逃げるように……。


 バレてないよね、私が動揺していたこと……。

 まだ心臓がバクバクしている。

 それにお腹の下の方がなんか変な感じ……。


 困った……。

 何が困るって、あの本の内容が、そんなに嫌じゃなかったってことだ。


 いや、お母さんが相手ってのは考えられないよ!

 たぶん……きっと!


 でも私って、女の人が相手でも、大丈夫なんじゃないか……ってことに、気付いてしまった……。

 女の人同士のえっちに、まったく抵抗感を覚えなかったのだ。

 今まで男の人は好きになったこと無いし、むしろ男子とか苦手だったけど、その理由がまさかこんなことだったなんて……。


 ええぇ……お母さんとは似ていないと思っていたけど、こんなところだけ遺伝しているなんて、そんな馬鹿な……!


 でも、修学旅行のお風呂で、みんなの裸を見てもなんとも思わなかったし、女の子同士に抵抗感が無いだけで、積極的にどうにかしたいって感じでもないんだよね……。

 お母さんがよく密着してくるから、女の子同士がくっつくことに慣れきっちゃっただけという可能性もある……?

 そうであって欲しい。


 ともかくこれはお母さんに……いや、みんなに知られたら、どんなことになるのか分からないから、隠しておこう……。

 というかこれから、みんなとどういう顔をして付き合っていけばいいのか、分からなくなりそう……。

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