76 おうちへ帰ろう
ブックマーク、ありがとうございます。
倒れたお母さんは、空港の診療所へと運ばれた。
私もそこに付いていく。
「今はもう呼吸も脈拍も安定しているので、過労か貧血だと思います。
今日はここで少し休んでいけば良いでしょう。
一応、後日に病院で検査をしてください」
お母さんはそんな診断を受けて、ベッドで寝かせてもらっている。
……まあ、今は私も傍にいて手を握っているから、エネルギーは少しずつ充填されていると思うし、そんなに心配は無いと思う。
「それじゃあ、後のことは私に任せて、ゆっくり休んでください」
「あ、ありがとうございます」
壬山先生はそう言い残して、空港のロビーへと戻っていく。
これから飛行機が欠航したことへの対策とかで色々と忙しいのに、お母さんも抜けちゃって大変だろうなぁ……。
まあ、他のクラスの先生もいるんだし、なんとかなるだろうけど。
暫くしてお母さんが目を覚ました。
「あ……綺美ちゃん……」
「一体なにをやってるの……。
いきなり倒れるとか……」
と、非難がましく言うと、
「うう……っ!」
ブワッと、涙を流し始めた。
「な、なにさ!?」
「ごめんね、綺美ちゃん……。
私、我慢できなかったの……。
家に帰って綺美ちゃんと、あんなことやこんなことをするのを心の支えに頑張ってきたのに……」
うん、家に帰っても、そんな予定は無い。
「その希望を目の前でいきなり取り上げられて、絶望しちゃって……」
……なんだかお母さんが、「待て」も我慢できない駄犬に見えてきたんだけど……。
これは今後も躾に力を入れていかないと、駄目かもなぁ……。
でも、今は家に帰り着くことを考えないと……。
「家に着いたら、1回だけ一緒のお風呂を解禁してあげるから、頑張ってよ」
私が提案すると、お母さんはガバっと跳ね起きて、
「うん、頑張るっ!!」
と、満面の笑みを浮かべた。
テストで良い点を取ったらご褒美が貰える、子供のようだ……。
「まず、迷惑をかけたクラスの皆や、他のクラスの先生に謝ってね」
私がそう言うと、お母さんは意気消沈とした顔になる。
「うう……面倒臭い……
もうちょっと寝てからでいい?」
「夏休みの宿題を後回しにする、子供か……」
私は呆れて物が言えなくなった。
その後、なんとか吹雪は終わり、5時間遅れで飛行機は飛ぶことになる。
それまでの時間は、みんなでしりとりをして潰した。
今度は私も参加したよ。
ちょっとくだらないことをやっているような気もしたけれど、こんなことが将来、楽しかった思い出として残るのかもしれないね……。
そしてようやく飛んだ飛行機の中のことは、疲れたのかすぐに寝ちゃって、あまり覚えていないや……。
空港に着いて、そこからのバスの中も同じ。
そして自宅の前まで送ってもらって、修学旅行は終了となる。
なお、お母さんは児童全員を家に送り届けるのを確認し、学校でも何かしらの雑務があるらしいので、バスに残った。
その時の、私にすがるような視線と言ったら……。
なんだか『ドナドナ』を思い出したよ……。
それから私は、ゆりさんにお土産を渡した後、ようやく家に到着する。
この時には既に夜の8時くらいになっていた。
「うう……寒。
数日家を空けると、中も冷えているなぁ……」
まずは暖房を入れて、夕食の準備は……疲れたからカップ麺でいいや。
食べている間にお風呂にお湯を溜めて、お母さんが帰ってくる前に入っちゃおう。
お母さんには「一緒のお風呂を1回だけ解禁」とは言ったけど、「いつ」とは言っていない。
つまり1年後でもいいということだ。
さあ、お風呂から上がったら、さっさと寝よう。
飛行機やバスの中で結構寝たけど、まだまだ眠い……。
これならベッドに入ったら、すぐに眠──、
……ん、玄関の扉が閉まった音がした?
お母さんが帰ってきたのかな?
今何時だろ?
あれ……真っ直ぐ私の部屋に来た……?
……何故ベッドに入ってくる!?
「うう……綺美ちゃん……。
グス……」
半泣きって……。
学校で残業しただけで、そこまで弱るの!?
お母さんは私に抱きついたまま、眠ってしまったみたい。
せめて服は着替えて欲しかったんだけど……。
まあ、私も眠いから、もう面倒くさい。
後は朝になってからだ。
こうして私が行った初めての修学旅行は、終わったのだった。
次の展開の構想がまだまとまっていないので、次回の更新に間に合うかどうか……。




