75 嵐の最終日
ブックマークといいねをありがとうございました。
午後からは宿泊施設に戻って昼食を食べ、その後はスキーで疲れた身体を休めた。
まあ、まだ体力が余っている人は、体育館へ行って遊んでいたようだけど……。
私は無理……。
あと、さくらちゃんも昼食では足りなかったのか、ぐったりとしている。
スキーで体力を使いすぎたな……。
「夕飯まで我慢できる?」
「無理かも……」
「こんなこともあろうかと」
「わっ!?」
何処からかこぶしちゃんが現れて、さくらちゃんにバナナを一房差し出した。
……バナナはオヤツに入らないから、いくら持ってきてもいいけどさぁ……。
相変わらず、妹には甘い……。
それにしても明日には、もう家に帰るんだなぁ……。
そう思うと、あっという間の修学旅行だったと思う。
まあ、2泊3日だしね……。
でも、他の学校だと1泊2日なんて場合もあるらしいから、これでも長い方なのか。
それにこれ以上長くなると、お母さんの限界がきそうだ……。
実際、夕食の時にお母さんは、助けを求めるような目でこちらを見ていた。
いや、そんな目で見られても、「我慢して」としか言えないんだけど……。
明日、家に帰るまでなんとか耐えてほしい。
ハグくらいまでなら、許してあげよう。
その後、私はスキーで疲れたのか、10時前には眠ってしまった。
後で聞いた話だと、みんなは丹治易さんに、必ず「う」で終わる言葉をまわすという縛りのしりとりをやって、暇を潰していたらしいけれど、それは負けず嫌いの丹治易さんがさぞかし燃え上がっただろうね……。
で、丹治易さんが「う」で始まる言葉を思いつかなくなった頃に、さくらちゃんとこぶしちゃんが結託して、ハメ技を使ったそうだ。
こぶしちゃんがさくらちゃんへ「かいじゅう」をまわして、丹治易さんが「ターゲットが変わった?」と、勘違いして安堵したたところで、さくらちゃんが「うちゅうかいじゅう」のコンボを決めた時は、なかなか爽快だったそうな。
……そういえばなんかうるさかったような気がするけど、丹治易さんが悔しさから騒いだんだろうなぁ……。
なお、羽田さんは終始、「胃」とか「蚊」とか、一文字だけで答えていたらしい。
まだ日本語が不慣れだから、長い単語はあまり知らない所為……いや、それって逆に語彙力が必要じゃない?
謎の言語能力だな……。
朝、片付けを終えて出発の準備を整えたら、体育館に集まって退所式を行う。
簡易的な卒業式みたいなものだけど、2泊しかしていないので、なんだか大げさだと感じてしまう。
まあ、これは観光旅行ではなく、あくまでも学校行事だという体裁を整える意味もあるのかもしれない。
どうでもいいけど、体育館は無茶苦茶寒くて死ぬかと思った。
いくら暖房があっても、広い場所が暖まるまでには、やっぱりそれなりの時間がかかるという当たり前の現実を、実体験で思い知ったよ……。
それが終わると、バスに乗って空港へと向かう。
あれ……雪が降ってきた。
……結構凄いな。
「あああーっ!?
窓の外が真っ白ぉ!?」
強い風で雪が舞い上がって、視界が零になる。
これが噂に聞く、地吹雪によるホワイトアウト!?
「大丈夫?
これ大丈夫?
事故とか起きない?」
「バ……バスもゆっくり走っているので、大丈夫……かと?」
あ……福井さんも自身が無さそう。
事故が起きるかもしれないんだね……?
実際、ゆっくり走ったらそれはそれで、追突されそうで怖いんだよね……。
そんな事故のニュースは、何度か見たことがある。
まあ、幸い事故は起こることもなく、空港に到着したけど……、
『吹雪により、全便の運行を一時見合わせ』
という、衝撃の事実が私達を待っていた。
「「「「「ええぇーっ!?」」」」」
あれ……私達、今日家に帰れないの……?
このまま吹雪が終わらなければ、空港に泊まり込み?
これからどうすればいいの!?
……って、お母さんの身体がグラグラと揺れている?
え? ちょっと待って?
まさか──!?
「はぷぅ……」
「お母さ──ん!?」
お母さんは倒れてしまった。
……そう、ついに私分が切れてしまったのだ。
たぶんお母さんは、あともうちょっと我慢すれば、家で私とイチャイチャできる……と、精神力を振り絞って耐えていたのだろうけれど、飛行機の欠航でいつまで我慢すればいいのか分からなくなってしまったことで、気力が途切れてしまったのだろう。
勿論、イチャイチャする予定なんて、私には無かったのだけどね……。




