70 宿泊施設の夜
ブックマークをありがとうございました。
それから夕食の時間までは、自由時間となった。
まあ、自由とは言っても、行動範囲はこの宿泊施設の中だけだ。
しかしこの宿泊施設、思いの外構造が入り組んでいて、歩き回っているとちょっとした迷路の中にいるような感覚になる。
なんとなく探検ごっこの気分だ。
それに玄関のホールは広く、そこには色々な地元の物が展示されていた。
この施設の歴史的な沿革や、この地域を立体化したジオラマ模型もある。
それを見ているだけでも、結構暇つぶしにはなるなぁ。
まあ、そんな感じで楽しんだのはいいんだけど、ふと気がつくと、
「あれ? 私達の部屋って何処だっけ?」
自分達のいる場所も、帰るべき場所もあやふやになった。
まさか建物の中で、軽い迷子になるとは思わなかったよ。
「確かC棟の1ですから……ここがA棟なので……。
……どちらへ行けばいいのでしょう?」
福井さんでも駄目か。
確かに通路の壁には「A棟」と、大きく表示されているけど、どちらへ行けばC棟なのかはまったく分からなかった。
「玄関に案内板がありましたし、そこで確認すればよろしいのではなくて?」
おおっ、珍しく丹治易が建設的な提案をした。
本当に珍しく。
そういえば玄関で案内板を見た記憶がある。
それで確認できれば──、
「でも、玄関はどっち?」
「あ……」
結局、玄関を探し回ってあちこちと歩いていたら、偶然部屋に戻ることができてしまったのだった。
そしてその後は夕食だ。
料理はセルフサービスで、受け取りカウンターに置かれている御盆に載せられた料理を受け取って、自分達の席まで持っていく方式になっている。
メニューは……普通。
とにかく普通。
北海道名物とかそういうのは一切無く、全国何処でも食べることができそうな内容だった。
国立施設ということで、あんまり観光業とかは考えていないような気がする。
しかし旅行先で地元の名物が食べられないとか……本当に残念だ。
「ごはん、おかわり!」
ただ、各テーブルに設置されたおひつとヤカンの範囲内で、ご飯とお茶のおかわりは自由だったので、さくらちゃんは大喜びだったけれど……。
味よりも量だよね、さくらちゃんは……。
あ、ほうじ茶が美味しい……。
これはおかわりしておこう。
ん……?
先生達の席からお母さんがこっちを見ている……。
まさかもうエネルギー切れになったとか、言わないよね……?
昨日は一緒にお風呂に入ったり、寝たりしたんだから、さすがにこれ以上の甘えは許さないよ。
ここは無視すべきかな……。
で、食事が終わると部屋に戻る途中で係の者がリネン室に寄って、台車に積まれたシーツ等を部屋まで運ぶ。
そして各自が受け取った寝具でベッドメイキングをすれば、就寝の準備は終了だ。
だけど就寝時間までには、まだ時間がある。
その時間までにやることと言えば、クラス毎に時間が割り振られた大浴場の使用くらいかな。
なにやらお風呂上がりにまた福井さんが鼻血を出して倒れたけど、なんだか幸せそうな顔をしていたから、大丈夫かな……と判断して、部屋へ回収して寝かせた。
あとはトランプとかで適当に時間を潰して、時間になったら寝るだけだ。
「あ、こぶしちゃんは部屋に帰ろうか」
「えー?」
えー、じゃない。
というか、さくらちゃんのベッドに潜り込まない。
こぶしちゃんは一緒に遊びに来ていた久遠さんに、回収してもらいました。
入浴描写は次回にもあるので、今回は割愛しました。




