69 素通り札幌
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食事が終わったら、再びバスに乗って札幌へと向かう。
私達が住んでいる百合ヶ島市の20倍以上の人口がある大都市らしいけれど、よくニュースで街の中に熊や鹿が出没するというのを見ているので、都会なのか田舎なのかよく分からないイメージがある。
そして実際に札幌の町に入ると、雪の多さに驚く。
道路の脇に私の身長の倍くらいはある雪山ができている。
都会なのにこんなに雪に埋もれているのは、ちょっと意外な光景だ。
「これは……移動するだけでも大変そうだねぇ……」
東京とかでこれだけ雪が積もったら、確実に街の機能が停止していると思う。
「近年は除雪の費用が足りなくて、大変だと聞きますねぇ」
福井さんがそう言ったけど、そうだろうな……と思った。
雪で道が狭くなっているし、これはちょっとしたことで渋滞になりそうだ。
実際バスは、信号で長時間止まることが多かった。
信号が青になっても雪の所為ですぐには動けず、それが後続の自動車にも影響して、なかなか前に進めないということなのだろう。
そんな訳でそこそこ時間をかけて、有名な観光地の前に辿り着く。
……が、
「はーい、今日は時間が無いので、バスの中から外観を見るだけです。
興味がある人は、別の機会に見に行ってください」
と、お母さんが身も蓋もないことを言った。
そしてその言葉通り、その建物の前をバスは通り過ぎただけだった。
でも、それで十分かな……と感じる。
「あれが札幌時計台か……。
ビルの間にぽつんとあって、意外と小さいね」
がっかり観光名所と言われることもあると聞いていたけど、確かにそんな感じだった。
しかし福井さんの解説によると、
「あ、でも時計台は、中身の方が重要なんですよ。
沢山の歴史的な資料が展示されていたり、お土産の売り場所があったりするそうです。
そして、2階にある大講堂はなかなか見応えがあるのだとか」
どうやら外観の見た目だけでは判断できないらしい。
とはいえ、わざわざ限られた自由時間で、ここまで移動するのは大変そうだし、またの機会だな……。
せめて雪の無い夏なら考えたんだけど……。
その後はテレビ塔の前を通る。
小さな東京タワーって感じだけど、それでも実際に見てみると大きいな……。
展望台に登ってみたいけど、ここもバスの窓から見るだけなんだよね……。
どうやら専用駐車場が無いらしく、別の場所に駐車してから他の手段で移動してくる必要があるらしい。
「地下鉄の駅から地下街を通って来るのが便利らしいので、地上から行こうとすると逆に大変みたいですね」
「まあ、この雪じゃねぇ……」
私は福井さん言葉に同意する。
というか、バスよりも地下鉄で移動した方が良かったんじゃないの、これ?
まあ100人以上もいる小学生の集団が地下鉄に乗ったら邪魔かもしれないけれど、バスよりは移動時間が短縮できたかもしれないなぁ。
え? そういう北国の大変さを知るのも、この旅行の目的だって?
知らないよ、そんなこと……。
それからバスは、いよいよ私達が宿泊する宿泊施設へ到着した。
スキー場のすぐ近くに建てられた国立の施設で、「青少年大自然家屋」というそうだ。
私達のような学校行事で訪れた子供の団体を主に受け入れているらしいけど、一般客も泊まれるそうだよ。
で、この施設は数百人単位で泊まれるらしいので、その辺の旅館よりもかなり大きいように思える。
ホテルのように縦に高いのではなく、横に広いって感じだ。
しかも学園にある体育館と、同じくらいの大きさの体育館もある。
それに私達が宿泊する部屋も、クラス全員が泊まれるほど広い。
というか、吹き抜けの二層構造になっていて、壁際にいくつもの二段ベッドが設置されている。
これだけでもちょっとした遊び場って感じで、わくわくするね。
「あたし、ここで寝る!」
さくらちゃんが早速2階へ上り、二段ベッドの上を確保している。
そしてそれに対抗するように、丹治易さんも隣のベッドの上によじ登り、
「私は、ここで鮎ちゃんと寝ますわ!」
「え?」
頭映さんと一緒に寝るの?
確かに二人は同じ家で暮らしているけど、普段から一緒のベッドで寝ているってこと……?
仲がいいのは知っていたけど、そこまで……?
「じゃあ、あたしもさくらと一緒に寝る!」
「なんでいるの、こぶしちゃん!?
2組は隣の部屋でしょ!?」
そして更に、
「そ、それじゃあ私も……」
福井さんが何か言いかけたので、私が「え、まさか?」という目で見ると──、
「私は珠戸さんの下のベッドで寝ます」
と、言い直した。
「だよねー」
もうそういうのは、お母さんだけで間に合っています。
宿泊施設のモデルはありますが、色々と同系列の施設が混ざっています。なので位置関係もフィクションです。




