66 禁 娘
ブックマークをありがとうございました。
それから修学旅行までの期間……は、さすがに1ヶ月以上もあって長いので、取りあえず1週間だけ──。
月曜日からお母さんは、学校で私に接触することが禁止となった。
原則的には、教師と委員長の間での業務連絡と、授業中の教師と生徒のやりとり以外は、会話も禁止である。
まあ、家でならば一緒に食事をして、ゲームなどで遊ぶくらいはしてもいいけれど、やっぱり私に触ることは禁止だ。
その初日に──、
「なあ、綺美。
おばさんと喧嘩した?
「してないけどどうして?」
さくらちゃんが目ざとく異変を察知した。
「なんかいつもよりも距離感が、ちょっと離れているというか……」
「ああ、うん。
修学旅行じゃ、いつも一緒にいる訳にはいかないし、少し私のことを我慢してもらっているの」
「ああ……そういう……」
多少は私とお母さんの関係を知っているさくちゃんは納得した。
「でも大丈夫なの?
近所のおじさんとかが、禁煙や禁酒をしようとして、結構苦しんでるのを見たことがあるけど……」
「私の存在って、タバコやお酒レベルなの!?」
「いや……おばさんにとっては、脱法ドラッグレベルかな……」
「脱法!?」
人を麻薬かなんかみたいに言わないでよ。
いくらなんでも、そこまでの常習性は無い……はずだ。
でも、禁断症状で震えているおかあさんを、見たことがあるな……。
なんだか少し不安になってきたぞ……。
それでもお母さんにとっては長いであろう1週間が始まる──。
で、最初の2日間は、問題無かった。
さすがにお風呂まで解禁して、エネルギーを充填させたのだ。
たった数日でエネルギー切れを起こすようでは困る。
だけど、3日目からはちょっと様子がおかしくなる。
平静を装ってはいるんだけど、お母さんの顔色は少し悪かった。
それにボ~としていることも増え、呼びかけられるまでなんの反応も示さなくなったり、小刻みに身体が震えていたり……。
そういうことが、徐々に増えていった。
本当に薬物中毒者っぽいな……。
「なあ、綺美……なんかあれヤバくない?」
さくらちゃんから見ても、お母さんの様子がおかしいのは明白なようだ。
「体調でも悪いのでしょうか……」
「う……うん」
心配そうに言う福井さん。
違うんだ、福井さん。
体調じゃなくて、精神が悪いんだ。
でもこれは潮時かな……。
このままだと突然倒れたり、暴れ出して人前で私に抱きついたりとか、ロクなことにならない気がする。
私がそう判断したのは、5日目の金曜日だった。
丁度明日からの土日は休みなので、スキンシップを少し解禁してあげようかな……。
そのことを家に帰ってからお母さんに告げると。
「うっ……ううっ……」
突然泣き出した。
「何事!?」
「だってぇ……ようやく綺美ちゃんと触れあえると思ったら、嬉しくってぇ……!」
「そんなに……」
これは子離れするのは、なかなか難しそうだなぁ……。
それでも、5日間はなんとか我慢できたので、とりあえず修学旅行中は私がいなくても大丈夫……だと思う。
ともかく、こうやって少しずつ訓練を続けて行こう。
ただ、今晩はお母さんの抱き枕として眠ることになった。
結局、私からエネルギーを吸収しないと、長時間もたないという問題点は、何も解決していないんだよなぁ……。




