65 修学旅行に向けて
ブックマーク、ありがとうございました。
文化祭が終わると、それで学校生活が暇になる……ということはなく、今度は12月にある修学旅行に向けて動き出す。
とは言っても、旅行先とそこでの行動予定は教師が決めているし、その辺の予定や決まりごとなどを書いた「旅のしおり」の制作は、図書委員を中心にして行われる。
委員長である私が決めることと言えば、一緒に行動する班を決めることくらいだけど、これは大体友達同士が集まってすぐに決まった。
私の班はさくらちゃんと福井さん、羽田さん、そして丹治易さんと頭映さんという、いつものメンバーだった。
宿泊先の部屋もこの6人だ。
クラス内での準備は順調だと言える。
しかし問題は別にあった。
「お母さん……子離れをしようか?」
「私に死ねと!?」
自宅での夕食時、私からの提案にお母さんは絶望した。
だけどここは、心を鬼にしなければならない。
「このままだと、私の方が社会的に死ぬので。
いや、お母さんも死ぬけどさ……」
そう、これは深刻な問題だった。
「お母さん、学校でも定期的に私にくっついてくるけど、さすがに修学旅行中には他の子の目もあるし、移動も多いから2人きりになるのは難しいでしょ?
私がいなくても我慢できるように、頑張ろ?」
学校だとお母さんが校長先生に手を回して、私と2人きりになれる場所や状況をいくつも確保しているようだけど、旅行先ではそうもいかない。
思いつくのは、宿泊先のトイレくらいだろうか?
それ以外の場所だと、人に見られるリスクがかなり高くなると思う。
お母さんが私を抱きしめているところを誰かに見られでもしたら、恥ずかしいなんてもんじゃないんだよねぇ……。
「そんな訳だから、これから修学旅行が終わるまで、私に密着することは禁止ね?」
「そんな、一緒に寝るのも!?」
「はい」
「一緒のお風呂も!?」
「それは大分前から禁止でしょ……」
確かあれは、6年生になる前日だったっけ……。
お母さんが入浴中にセクハラ的な言動を取ったから、全面禁止にしたんだよね……。
ともかく、諸々の接触は禁止だ。
するとお母さんは、
「ああ~っ、死ぬうぅぅぅぅ~!!
死んじゃうよおぉぉぉぉ~!!」
号泣である。
「いい大人が喚かないでよ……」
「じゃあせめて、今晩だけ解禁してっ!!
限界まで綺美ちゃん分を摂取して、我慢してみるからぁ!!」
と、涙ながらにすがりついてくる。
……泣かれると弱いんだよなぁ……。
結局その後、私はお母さんと一緒にお風呂に入ることになった。
今は2人で湯船に浸かっている。
「はあぁ~綺美ちゃんは、最高の入浴剤ね……。
綺美ちゃんの成分が、私を満たしてくれる……」
「セクハラ的な言動が限界値を超えたら、強制終了だからね……」
今の一言だけでも、限界値にかなり近づいたよ。
「でもこうやって一緒にお風呂に入っていると、綺美ちゃんの成長が実感できて、お母さん嬉しいわぁ……」
「えぇ……変わっていないでしょ……。
この前の身体測定だって、1 cmも身長が伸びてなかったし」
「そんなことはないわよ?
身長だってこの前お風呂に入った時から3mm伸びているし、胸が1mm、お腹周りが2 mm、お尻が5mm大きくなっているわよ?」
「誤差ぁ!?」
怖い怖い、なんでそんな微妙な違いを、見ただけで分かるのさ……!?
あと、身長以外の数値の変動は、ちょっとした食事量の増減で変わりそうなので、成長しているのかは微妙だ。
まさに誤差だと言えるんじゃないかな……。
「よし、もうあがろうか」
なんだかもう色々と限界突破だ。
「ちょっ、待って綺美ちゃん!?
もうちょっと、もうちょっとだけっ!!
修学旅行の時の、お小遣いを増やしてあげるから!」
「……お金を払って……って、なんだかいかがわしいんだけど……」
「ありがとうございますっ!!」
「なんで!?」
「いや……綺美ちゃんから蔑んだ目で見られるのも、それはそれでいいかなって……」
「……これ以上面倒臭くなるの、やめてくれる?」
なんだか最近のお母さんは、本当に開き直っているなぁ……。
そんなお母さんを相手に、この後も抱き枕にされて眠ったし、私もなんだかんだで甘いな……と思った。




