63 文化祭
ブックマークをありがとうございました。
私は倉守ゆり。
今日は私立百合ヶ島学園の文化祭に来ている。
私は校門で係員に招待状を見せて、中に入った。
昔は出入りは自由だったそうだけど、昨今は校内に侵入して無差別に児童を襲うような馬鹿がいた所為で、人の出入りはかなり制限されるようになったようだ。
この文化祭も、児童1人当たり2人の招待枠が割り振られ、事前に登録した者だけが中に入ることができる(ちなみに私は綺美ちゃんから枠をもらった)。
今だって身分証明書の提示を求められたし、入校時の検査は厳しい。
子供の頃は自由に出入りしていたから実感は無かったけど、大人だとこんなに出入りが難しいのか……と、改めて実感する。
まあ作家としては、作品の糧になるかもしれない、面白い経験ではあったけれどね。
そして校門をくぐっても、来客が入ることができるのは基本的に体育館だけだ。
ここのステージで文化祭の全ての発表が行われるので、私達は用意されている席から動く必要が無い。
例外的に動けるのはトイレに行く時と、昼休みの時だけだ。
ちなみに昼食は、弁当を持参するか、学園へ事前に申請して用意してもらい、それを購入するか……ということになっている。
そして昼食を食べるのは、指定の空き教室のみに限定される。
この時、子供達は自分達の教室で給食を食べる為、来客とはたとえ親兄弟とでも一緒に食べるということはない。
これは警備的な理由の他に、教室に各児童の保護者が来ても、彼らの為の机が入りきらないというスペース的な問題もあるのだろう。
なお、1度帰宅して昼食を食べてから再入場という手もあるが、近所じゃないと時間的に難しいな……。
再入場の手続きも面倒臭いし……。
さて、朝から各クラスの出し物を観てきたけど、歌や演奏にせよ劇にせよダンスにせよ、小学生がやることだから拙い。
まあ、子供が頑張っている姿は微笑ましいし、女子は可愛いけれど、身内という贔屓目を抜きにすると、純粋に楽しめるとは言いがたかった。
正直言って、私がこれまで観てきた中で面白かったのは、こぶしのクラスの手品ショーくらいだと思う。
クラスメイト達が手品ショーでよく聞く例の曲を演奏している一方で、こぶしが素手で鉄棒を曲げ、久遠さんが物を空中に浮かせたり透視能力を披露したりしていた。
……これ、たぶん種も仕掛けも無い奴だよね……?
こぶしは純粋に筋力を使っているだけだし、久遠さんは私のお姉ちゃんが嫁いだ啓内家の神社で、霊関係の仕事を引き受けている家系だと聞いている。
リアルにラノベや漫画みたいなことをしているらしいので、ああいう超能力じみたこともできるんだろうな……。
……こんな小学校の文化祭で、披露すべき術じゃないと思うんだけど!?
たぶんテレビ局とかに持ち込めば、世界的に有名になれるんじゃなかろうか……。
ともかく、そういう一部の例外はあるが、大抵のクラスの出し物は、退屈な物だと言っていい。
だから私は、綺美ちゃん達のクラスの順番を心待ちにしていた。
劇のシナリオには私も協力しているから、どのような出来になっているのか確認したいしね。
「お、いよいよか」
そしてついに綺美ちゃん達6年1組の劇、『勇者を求めて』が始まる。
この劇は中世ヨーロッパ風の世界を舞台にして、世界を闇に包もうとしている魔王を倒す為に、勇者が旅立つ──という、典型的なRPGっぽいものを題材にした物語だった。
最近よく見る異世界転生の要素は無いので、古典的と言ってもいいだろう。
さて、どんな仕上がりになっているのかな?
ブザーが鳴る……が、まだステージの幕は上らない。
『世界は、闇に包まれようとしていた!』
と、まずはナレーションで基本設定と、序盤の展開のあらすじが紹介された。
劇の上映時間は精々30分程度なので、重要ではない部分は省略する必要がある。
それに場面転換が多いと、その分背景のセットを作る手間が増えるので、極力場面を固定して展開させた方がいい。
そのような諸々の制限を考慮しながら話を作ったのは、思っていたよりもいい経験になったと思う。
『こうして勇者キミーは、魔王を倒す為に旅立つのであった』
そしてついに幕が上がった。




