60 宿題提出
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私達が教室に入ると、さくらちゃんが既にいた。
基本的にグータラな子だけど、家業が神社である関係で早起きを強いられることもあるらしく、そういう時は早く登校してくることがある。
家にいると、余計な手伝いを押しつけられることがあるから……なんだとか。
「おはよー」
「おはよう、さくらちゃん。
宿題は忘れていない?」
「ふっふっふ、大丈夫だ、綺美。
あたしには秘策があるから」
あ……これは駄目っぽい。
浅はかなことを考えているという予感が、ひしひしとするよ……。
それからすぐに学級会が始まり、夏休みの宿題を提出することになったんだけど、お母さんはさくらちゃんが提出した宿題をパラパラとめくり──、
「再提出ですね。
もう少し空欄を埋める努力をしましょう」
「ええぇぇぇぇぇーっ!?」
無情にもそう言い渡した。
さくらちゃん、本当に分からないところを空欄だらけで提出したのか……。
年号とかは教科書に書いてあるんだから、調べれば分かるはずなんだけどなぁ……。
「それに提出物が足りないようですが……」
「あ、忘れてきました!」
ああ……間に合わなかったものを、時間稼ぎでわざと持ってこなかったな。
さくらちゃん……自由すぎる。
「それじゃあペナルティとして、このプリントを追加でやってきてください。
他の忘れた人もですよ」
「「「「はあぁぁぁーっ!?」」」」
さくらちゃんをはじめ、数人の悲鳴じみた声が上がった。
お母さんもさくらちゃんとの付き合いは長いから、こうなることは予測済みだったか……。
ズルは許さないという姿勢は立派だけど、私には甘いからバランスが取れていない気が……。
まあ、私はそんなことで人から「贔屓だ」とか言われたくないので、ちゃんとやるけどね。
その後は夏休みの宿題の一環として制作した工作や絵を、教室の後ろの方にある棚の上や掲示板に展示した。
その中で1番目立っていたのは、頭映さんが割り箸や爪楊枝で作った東京タワーだった。
全高が40cmほどある上に、色も塗ってあるので、遠くから見たら本物のようにみえなくもない。
「すっご!?」
いくら器用だからって、このクオリティを夏休み期間中だけで作れるの……?
もうプロの仕事でしょ、これ……。
「鮎ちゃんなら当然ですわ!」
丹治易さんが我がことのようにドヤっているけど、あなたは別に凄くないからね?
一方私はというと、絵を描いてきたんだけど……。
「なんですのこの前衛的な……。
……緑色の岩?」
丹治易さんにそんな感想をいただいた。
「いや……サボテンだけど?」
「ふふっ、私を馬鹿にしないでくださいまし。
サボテンと言えば、丸いか柱みたいなものでしょう?」
まあ、確かに一般的なサボテンのイメージはそうなんだろうけれど、他にもウチワサボテンとかもあるよ?
実際サボテンには多種多様の品種があり、イメージ通りのものばかりではない。
逆にサボテンかと思ったら、ユーフォルビアという別の属だった……なんてこともある。
私が描いてきたのは、家にもある「金獅子」という種類だけど、丸や柱のような決まった形を持たず、デコボコと思い思いの方向に伸びていくので、岩のように見えなくもない。
それを忠実に描写したつもりだったのだが……。
「金獅子っていう種類は、こうなんだよ」
「そう……なのですかぁ?」
あ……信じていないな、これ……。
丹治易さんが疑いの目で見ている。
私の絵が下手だと、思っているんじゃないかな……。
そこで、さくらちゃんが、
「なあ、こういうのだぞ?」
私の家で撮ったスマホの画像を見せてくれた。
「あら……似てますわね……。
もしかして委員長って、絵が上手いのですか?」
「え……そう?」
絵が上手いというのはあまり言われたことがないけれど、そもそもそんなに絵を描いたこともなかったな……。
もしかして才能があるなんてこともあるのだろうか?
それならば今後、機会があったらもっと真剣に描いてみようかな……?
そんな訳で今年の夏は、自分のことなのに案外知らないことがあるのだな……ということが分かった夏だった。




