59 夏休み終了
思っていたよりも色んなことがあった夏休みが終わって、今日は始業式だ。
久しぶりの登校だと思うと、なんだか心身共にだるく感じる。
特に私は委員長だから、こういう学期の始めは色々とやることがありそうだしね……。
で、校門をくぐり、玄関のところまで行くと、そこには丹治易さんと、頭映さんがいた。
彼女達は偶然居合わせたというよりは、待ち構えていた感じだ。
その証拠に丹治易さんは、腕を組んで仁王立ちだった。
あ……そういえばあの日以来、会うことも電話で話すことも無かったな……。
今もなんだか気まずい。
「おはようございます、委員長。
早速ですが、鮎ちゃんがお話したいそうですわ」
「え、う……うん」
私は何事かと身構えるけれど、しかし肝心の頭映さんはなにやらモジモジしていて、なかなか口を開かなかった。
いつもは軽いノリの彼女にしては、珍しいと思う。
そしてようやく口を開くと……、
「あの……珠戸さんが会ったという、私のお母さんは元気そうだった?」
あ、頭映さんは、お母さんのことが知りたいのか。
「え、うん、普通の人とまったく同じで、そうだとは気付かなかったよ。
なんだか嬉しそうに二人のことを話していたから、心配事は無いみたい」
「そっか……」
そう呟いたきり、頭映さんは暫く無言だったけれど、やがてホッとしたように息を吐き、そして微笑んだ。
「お母さんのことを、教えてくれてありがとう……」
「う、うん」
いつもは何処までが本気なのか分からない軽いノリの子だけど、ちゃんと笑うと綺麗に見えるなぁ。
それから──、
「私も、あの時は疑って悪かったですわ」
丹治易さんも謝ってきた。
微妙に態度が偉そうなままだけど、まあこの子はこういう人だってのは分かっているからいいや。
それから二人からは、
「またお母さんを見たら教えてね」
「というか、私達を呼んで通訳してくださいな!」
そんなことを頼まれたが、もう無理だ。
「あ~、久遠さんのお母さんに霊感を封じてもらったから、もうできない……」
「なんですの、それ!?」
私は夏休み中にあったことを二人に話した。
「は~、そんなことが……」
「だから私は無理だけど、久遠さんなら見えると思う。
でも……家の仕事としてやっているみたいだから、お金はとられるかも……」
「友達割とかあるのかしら……?」
「お小遣いを貯めてみるとか……」
どうなんだろうねぇ……。
私には亡くなった人とコミュニケーションをとることが、いいことなのかどうか分からない。
なんだか知らなくてもいいことまで知ってしまいそうだし……。
だからもう霊と会う機会が無いのなら、それはそれでもいいと思っている。
そんなことを考えていると、
「珠戸さーん!!」
玄関から入って来た福井さんが、私の姿を見つけて走ってきた。
「お会いしたかった~!」
福井さんは全力疾走だったのか、私のところまで辿り着くと、力尽きたようにすがりついてきた。
「会えない間、寂しかったですぅ~」
そんな大げさな……と言いつつも、丹治易さんの家で変な空気になって別れて以来、私も能力の封印やらで忙しくて会う機会も無かったしな……。
もしかしたら心配させたのかもしれない。
「あ~……うん、寂しかったね?」
「はい!」
私に同意されたのが嬉しかったのか、福井さんはいい笑顔になった。
そんなやりとりをしている間に、
「みなサーン!
お久しぶりデース!」
と、羽田さんが駆け寄ってきた。
どことは言わないが、ゆさゆさと揺れていて凄い。
「って、赤っ!?」
羽田さんの白かった肌は、日焼けで小麦色を通り越して赤くなっていたのだ。
あ~、白人って肌が弱いって聞くしなぁ……。
「それ、大丈夫なの……?」
「ちょっと……!
日焼け止め、使わなかったんですの?」
「あ~、使っていたケド、ズーット外にいたのデ……」
そうなるまで、動物の観察をしていたというのか。
確か動物学者の両親と一緒に、何処かの山へ行っていたんだよね……。
熱心なのはいいことだけど、皮膚癌が怖いよ……。
「もっと大きな帽子を使うとか、別の対策を考えた方がいいと思うよ……」
「そうですネ~」
「で、痛くないのそれ?」
「お風呂が辛いデス」
そんなとりとめもないことを話しながら、私達は教室へ向かった。




