56 目覚めた能力
ブックマーク、ありがとうございました。
「そうかぁ……。
ついに封印が解けちゃったかぁ……」
お母さんは、何かを諦めたように目を伏せた。
「封印!?
封印ってなにっ!?」
いきなり少年漫画みたいなことを言い始めたんだけど!?
それからお母さんは、もったいぶったように溜め息を吐き、そして衝撃の事実を語った。
「綺美ちゃんって……実は幽霊とかが見える子ちゃんなのよ……」
「ええっ!?
そんな馬鹿なことって……!
今まで幽霊なんて見たことないし……」
なにその超展開!?
いや……でも、今日も頭映さんのお母さんが幽霊だって気付かなかったし、今までも気付いていなかっただけ……?
だけど事実は違っていたようだ。
「だから久遠さんのお母さんにお願いして、その霊感を封印してもらっていたのよ……。
そしてその封印が解けないように、なるべく霊に関わる物には触れさせないようにしていたのだけどねぇ……」
え……だからお母さんって、私に怖いテレビ番組や映画は観せてくれなかったし、お墓参りに行ったことがないのも、その所為だったの!?
あ、キャンプで肝試しをした時、久遠さんが儀式をしていたってのも、私に幽霊を近づけない為!?
う~ん……なんだか信じがたい話だけど、腑に落ちる部分もあるぞ……。
「でも……封印って、そんなの記憶に無いんだけど……」
「そりゃあ、綺美ちゃんがまだ3歳くらいだったし。
あの時、お父さんが亡くなったのに、生命保険とか貯金とか、お父さんしか知らないようなことを、本人から直接聞いているみたいに話し出したのには驚いたわ……。
そして話を聞いてみたら、実際にお父さんと会話しているみたいだったのよね……」
ああ、前にお母さんが酔っ払った時に話していたこと……?
あれってそういうことだったの!?
「で……これはヤバイな……と」
「ヤバイ?」
でも特別な能力があるって、ちょっと格好良くない?
「幽霊が見えるってあちこちで話したら、変人扱いされていじめられるかもしれないし、悪い霊に近づいて取り憑かれても困るし……。
だから封印してもらったのよ」
「ああ……そういう……。
でも私はお父さんの記憶が無いから、幽霊でもいいからちょっと話してみたかったかも……。
あれ? でも封印が解けているのなら、今ならお父さんも見える?」
私は周囲を見渡してみたけど、残念ながらお父さんの姿は何処にもなかった。
「お父さんなら、綺美ちゃんの守護霊になっているんじゃないかしら?
守護霊って背後霊とも言うくらいだから、綺美ちゃんにとっての死角になる真後ろにいるかも?」
そうなんだ……。
でも常に背後にいるのは、いくらお父さんでもちょっと嫌かも……。
それにトイレやお風呂にも、着いてくるってことだよね?
それなら霊なんて全く見えることもなく、意識する機会が無い方がいいのかな……。
「まあお父さんは天国にいるか、もう生まれ変わっている可能性もあるけどね……。
そもそも封印が完全に解けたのかどうかも、よく分からないし……。
ともかく早めに久遠さんに連絡を取って、また封印してもらわないとね。
まあ、大人になったらこういう能力は弱くなっていくって言うから、次で最後になるかもしれないわ」
そうなんだ……。
それならやっぱり、1度くらいはお父さんに会ってみたかったかも……。
「……お母さん、その前にちょっとお願いがあるんだけど」
「え、なあに?」
それから数日後、私とお母さんは、市内の墓地に来ていた。
初めて来たけど、結構広いなぁ……。
私達はこれから、お父さんのお墓参りをする。
どうせ私の霊感の封印が解けているのなら、もう封印に影響があるようなことを控える必要はないし、この機会にやっておこうという訳だ。
まあ、お母さんは「危ないかもしれない」からと反対したけれど、お墓参りをする度に危ない目に遭うのなら、他の人達もいくら霊感が無くてもどうにかなっている──とか、色々と理屈をこねて説得した。
私は墓地を見渡してみる。
「結構……人がいるね」
御盆は少し過ぎているけど、それでもお墓参りに来ている人がいるようだ。
しかしそんな私の言葉に、お母さんは両目を瞑って、眉間に皺を寄せた。
なんだか、凄く困っている感じだ。
「……綺美ちゃん、私にはそんなに人がいるようには見えないのよ。
だからここにいる人とは、視線を合わせたり、挨拶したりしたら駄目よ?」
ひいっ!?
今見えている人達の大半が幽霊ってこと!?
これはお母さんが、私をお墓参りに連れてこなかった理由も納得だ……。
まさかそこまで幽霊が沢山いるとは、思っていなかったよ……。
それから私は、余計なものを見なくてもいいように、視線を地面に向けながらお父さんのお墓へと向かった。
ただ、ちょっと歩きにくいので、お母さんの手を握る。
べ、別に怖いとか、そういうことじゃないからね!
「綺美ちゃんが自分から私の手を……!」
お母さんが感極まった視線を向けてくるけど、だからそういうのじゃないから!
それから程なくして、小さなお墓の前に私達は辿り着いた。




