54 勉強会
ブックマークありがとうございました。
「おお……!」
今日は丹治易さんにお呼ばれされて、彼女の家で勉強会を開くことになっている。
メンバーは、私とさくらちゃんと福井さんだ。
羽田さんも誘ったけど、彼女は家族と何処かの山へ野生動物の観察に行くらしい。
また、久遠さんは、今東京の実家に行っているそうだ。
そしてこぶしちゃんだが、こういう時はあまり来ない。
彼女はシスコンではあるのだけど、あまりべったりとしてさくらちゃんにウザがられるのを恐れてなのか、適度な距離感を保っていることが多い。
まあ、いくら招待されたとはいえ、あまり大勢で押しかけるのも失礼だと思うので、この3人で丁度いいだろう。
それで丹治易さんの家だという「丹治易商店」へと、聞いていた住所を頼りに来てみたのだが……。
「マジで金持ちじゃん……!!」
さくらちゃんが呻いた。
そこにあるのは、7階建ての大きなビルだった。
「商店」という個人で経営しているお店のイメージを裏切って、想像以上に大きな企業のようだ。
ただ、このビルには店舗が無いように見える。
小売店ではなく、卸売りがメインなのだろうか……。
あるいは建築業とか、他の業種にも手を広げているとか?
それに店舗もどこかにあるかもしれないけど、少なくともそれが市内にあるという記憶は無かった。
これが今まで「丹治易商店」という名前を聞いても、ピンとこなかった理由か。
「みなさん、ごきげんよう!
ようこそいらっしゃいましたわ」
「ようこそー」
で、その大企業のご令嬢である丹治易さんと、家族ぐるみの付き合いがあるらしい頭映さんが入り口まで出迎えてくれた。
そういえば一緒に住んでいるんだっけ。
「最上階が居住スペースですのよ。
エレベーターでどうぞ。
まあ、鍵を持っていないと、最上階には入れませんけどね」
おお……自宅にエレベーターがあるって、凄いな。
いや、うちのマンションにもあるけど、共用のだし……。
「これ……地震とかで止まった時は、凄く大変じゃない?」
「ああ、前に停電で止まったこともありましたけど、階段の上り下りも足腰が鍛えられて良いですわよ」
……前向きだなぁ……。
私はこんなビルの階段を上ったら、途中で力尽きちゃうよ……。
その後、丹治易さんの自宅だという最上階の居住スペースに着いたけど、部屋の1つ1つが、我が家よりも広そうだ……。
広い家はいいよね……。
私も鉢植え専用の、日当たりのいい部屋が欲しいよ……。
「そちらは、鮎ちゃんが暮らしている区画ですわ。
今日は私の部屋で、宿題をやりましょう」
その後、みんなで夏休みの宿題をした訳だけど、案の定さくらちゃんは殆ど宿題を進めていなかった。
私も半分程度なので、丹治易さんに教えてもらうことを期待していたのだが……。
「ごめん、何を言っているのかよく分からない……」
「あたしも……」
「私もです……」
「なんでよ!?」
算数については全滅である。
丹治易さんの勉強の教え方は、感覚的で全く理解できなかったのだ。
「ああ、智ちゃんは問題を見た瞬間に答えが分かっちゃうみたいだから、何がどうなってその答えになるのか……ってことを教えるのは苦手だよ」
頭映さんがそうフォローする。
あ~、式を使わずに、全部暗算でやっているようなものなのか。
それじゃあ算数は駄目だ。
「でも暗記を必要とするような問題なら、全部記憶しているから、そういうのが分からないのなら、智ちゃんに聞いた方がいいと思う。
算数は私が教えるよ」
なるほど……人間辞書みたいなものか。
そしてそういえば、頭映さんも頭が良かったっけ。
真に頼りになるのはこっちだな。
「智ちゃん、全部答えを教えたら身につかないから、問題によってはヒントだけにするんだよ?」
「ああ、うん、分かりましたわ」
そんな訳で、頭映さんのフォローがあれば、宿題は捗りそうだ。
しかし──、
「あ~、もう駄目だーっ!!」
さくらちゃんが1時間半程度で音を上げる。
勉強が苦手な上に、あまり集中力も無いからなぁ……。
「あたし、分からないところは、空白で提出するぅ……」
確かに分からないところを全部埋めるまでやれと言うほど、お母さんも鬼ではないはず……。
テストだって分からなければ、空白のまま提出してもいいのだから、宿題だってそれでも問題ないはずだ。
ただし、物事には限度というのがある。
「いや……半分も進んでいない状態でそれをやったら、さすがに再提出を言い渡されると思うよ?
せめて8割は進めよう?」
理科や社会などの多くの問題は、教科書を見れば答えが書いてある。
そういう調べれば分かることは、さすがにやっておかないとね……。
「え~……?
でもあたし、お腹が減ってもう頑張れない……」
あ、そっちもあるのか。
じゃあ、本当に駄目だな……。
エネルギー切れのさくらちゃんは、何もできないもんね……。
「それでは休憩にしましょうか。
オヤツを用意しますわ」
「やった!」
さくらちゃんは「オヤツ」と聞いてはしゃぐ。
現金だなぁ……。
でも私も少し疲れていたから、正直助かったかも……。
だけど勉強会は、まだまだこれからだ。
宿題は全く終わっていないのだから。
とはいえ、休む時は休もう。
それに──、
「あの……おトイレ貸してくれる?」
「ああ、部屋を出て右側の廊下の突き当たりですわ」
「ありがとう」
そんな訳で、私はトイレを借りることにした。
やっぱりトイレも豪華なのかな?




