表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/91

51 来ちゃった

 ブックマーク、ありがとうございました。

 なんとなく犯罪感があるのは、気の所為だろうか?

 私、倉守ゆりの自宅には今、女子小学生がいた。

 これで私が男だったら、完全にアウトなシチュエーションだね……。

 まあ私が彼女に手を出したら、どのみちアウトだけど……。


 しかし幸いにも……というか、なんとなく残念な気もするが、相手は私の本命ではないので、間違いはまず起こらないだろう。


「わぁ……ここがlily(リリィ)先生の仕事場なんですね!」


 世間ではまだ夏休みが続いているある夏の日の昼下がり、綺美ちゃんの友達の福井さんという()が、私の部屋に訪れた。

 本来ならばこんな知り合って間もない──しかも年の離れた女子小学生を1人だけ家に(まね)くてことは有り得ないのだが──、


「先生、キャンプ中はよくさくらさんの隣にいましたよね?

 学校でのさくらさんの話や、画像なんか欲しくありませんか?」


「ぐっ……!」

 

 そんな破格な条件を提示されて、私は要求を呑むしかなかった。

 私とさくらの関係を見破り、こんな交渉を持ちかけてくるなんて……おそろしい娘!


「そ、その代わり、珠戸さんや先生のこと──それに創作のことを、もっと教えてくれたら嬉しい……です」


 いや、ただの私の同類だな、この娘……。

 だから私のさくらへの想いも、気付いたという訳か。


「それと……こぶしさんの画像もいりますか?

 遠足や運動会の時に、撮影したものがありますけど……」


「…………一応、貰っておくかな」


 まあ一応ね。

 この前のキャンプの一件以来、ちょっとこぶしのことも気になってしまう。


 で、私の仕事場を見学したい──そして更には物語の作り方などの、創作について教えて欲しいという福井さんは今、私の仕事場に訪れて、周囲を物珍しげに眺めていた。

 子供の目に触れてはいけないものは、置いていないはずだ。

 いや、私の作品はちょっと微妙だが……。

 

 まあ福井さんも、あちこち勝手に触るような様子は無いし、その辺はしっかりと(わき)えているようだ。


「あ、アニメのブルーレイとかも沢山あるのですね」


「ああ、参考資料にね……」


 これは本当だ。

 半分趣味でもあるけれど、色々な作品を観ることで、自作品のヒントを得る事も多い。

 それに良い作品に出会えた時は、「感動した」で終わるのではなく、「自分もこういうのを書きたい」というモチベーションの上昇にも繋がる。


 ただし、ただ傑作の真似をするのではなく、同時に「自分ならこうやりたい」という部分も無ければ、オリジナリティを出すことなどできないが。


 私の場合、そんな「自分ならこうやりたい」を頭の中に何百とストックしているので、それを組み合わせていけば、作品は自然にできる。

 正直言って、ネタが出なくて困ったということはあまりない。

 むしろ寿命が尽きるまでに、書きたいことを全部やりきれるのか──と心配しているくらいだ。


 まあ、それだけネタがあったとしても、どのネタとどのネタを組み合わせれば面白くなるのか──というところでは、頭を悩ませるけれどね。

 そんな風に、書きたい物が沢山あって困る……というくらいでなければ、作家になるのは難しいと思う。


 そんなことを話してやると、福井さんは、


「なるほどぉ、参考になります!」


 と感心していた。


 しかし年の離れた小学生との会話は、結構大変だな……。

 綺美ちゃんとなら家族みたいなものだから、自然と会話することができるけれど、この()とは共通の話題があっても、まだ探り探りで話さなければならない。

 やっぱり年齢差があると、知識量や価値観にずれがあったりするし、思わぬところで会話がすれ違うからね……。


「なんなら、なにか観る?」


 だから私は、間をもたせる為に円盤の視聴を勧めた。

 これで話題の切っ掛けになればいいんだけど……。


「それじゃあ……これを!」


「えっ……?」


 それ、ガッチガチの百合物じゃん!?

 一応全年齢対象だけど、深夜アニメで女の子同士の濃厚なキスシーンがあるやつだよ!?


「あの……駄目でしょうか……?

 私の家では、深夜のアニメは観せてもらえなくて……。

 録画でも駄目なんです」


「あ~……」


 それは(つら)い。

 私にも覚えがあるけど、思春期の頃には性的なことに興味があったとしても、それを満たして解消する手段が極端に少ない。

 本来は1番欲している時期に禁止されているから、一部では鬱屈した物をため込んで爆発させ、犯罪に走る者もいるし、成長して解禁された時に、歯止めがかからずにのめり込む者もいる。


 ……うん、後者は私だ。

 子供の頃に満たされなかったものを取り戻すかのように、大人になってから薄い本とか色々と買いまくったなぁ……。


 だから本当は性的なことだって、子供の頃から適度に触れさせて、発散させておいた方がいいのだ。

 そうすれば人によるだろうけれど、いつかは飽きて適度な付き合い方を覚えていくだろう。

 駄目なら私のように、「作品」という形で内に秘めた欲望を発散させていけばいい。

 この娘なら、それができる素養があると思う。


「分かった。

 好きなだけ観るといいさ!」


「ありがとうございます!」


 その後福井さんは、真剣な目でアニメを鑑賞していた。

 (くだん)のシーンでも、顔を赤らめて恥ずかしがり、時には鼻血を流していたけれど、それでも彼女の目は今までに無くキラキラと輝いていた。


 そんな福井さんの活き活きとした姿を見ていると、私も嬉しくなってくる。

 ただこの時私は、彼女がこの部屋に入り(びた)る理由を与えてしまったことに、まだ気付いていなかった。


 そう、この後彼女は、この円盤の続きを観る為に、何度もこの部屋に訪れることになったのだった。




「う……!」


「どうしたの綺美ちゃん?」


「いや……、今何故か外堀が埋まったような気がして……」


「なにそれ?」

 

 ……お母さんは笑うけど、こういう時の私の勘って、結構当たるんだよなぁ、何故か……。

 一体私の知らないところで、何が起こっているんだろう……?

 まあ、考えても分かる訳がないけどさ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ