51 来ちゃった
ブックマーク、ありがとうございました。
なんとなく犯罪感があるのは、気の所為だろうか?
私、倉守ゆりの自宅には今、女子小学生がいた。
これで私が男だったら、完全にアウトなシチュエーションだね……。
まあ私が彼女に手を出したら、どのみちアウトだけど……。
しかし幸いにも……というか、なんとなく残念な気もするが、相手は私の本命ではないので、間違いはまず起こらないだろう。
「わぁ……ここがlily先生の仕事場なんですね!」
世間ではまだ夏休みが続いているある夏の日の昼下がり、綺美ちゃんの友達の福井さんという娘が、私の部屋に訪れた。
本来ならばこんな知り合って間もない──しかも年の離れた女子小学生を1人だけ家に招くてことは有り得ないのだが──、
「先生、キャンプ中はよくさくらさんの隣にいましたよね?
学校でのさくらさんの話や、画像なんか欲しくありませんか?」
「ぐっ……!」
そんな破格な条件を提示されて、私は要求を呑むしかなかった。
私とさくらの関係を見破り、こんな交渉を持ちかけてくるなんて……おそろしい娘!
「そ、その代わり、珠戸さんや先生のこと──それに創作のことを、もっと教えてくれたら嬉しい……です」
いや、ただの私の同類だな、この娘……。
だから私のさくらへの想いも、気付いたという訳か。
「それと……こぶしさんの画像もいりますか?
遠足や運動会の時に、撮影したものがありますけど……」
「…………一応、貰っておくかな」
まあ一応ね。
この前のキャンプの一件以来、ちょっとこぶしのことも気になってしまう。
で、私の仕事場を見学したい──そして更には物語の作り方などの、創作について教えて欲しいという福井さんは今、私の仕事場に訪れて、周囲を物珍しげに眺めていた。
子供の目に触れてはいけないものは、置いていないはずだ。
いや、私の作品はちょっと微妙だが……。
まあ福井さんも、あちこち勝手に触るような様子は無いし、その辺はしっかりと弁えているようだ。
「あ、アニメのブルーレイとかも沢山あるのですね」
「ああ、参考資料にね……」
これは本当だ。
半分趣味でもあるけれど、色々な作品を観ることで、自作品のヒントを得る事も多い。
それに良い作品に出会えた時は、「感動した」で終わるのではなく、「自分もこういうのを書きたい」というモチベーションの上昇にも繋がる。
ただし、ただ傑作の真似をするのではなく、同時に「自分ならこうやりたい」という部分も無ければ、オリジナリティを出すことなどできないが。
私の場合、そんな「自分ならこうやりたい」を頭の中に何百とストックしているので、それを組み合わせていけば、作品は自然にできる。
正直言って、ネタが出なくて困ったということはあまりない。
むしろ寿命が尽きるまでに、書きたいことを全部やりきれるのか──と心配しているくらいだ。
まあ、それだけネタがあったとしても、どのネタとどのネタを組み合わせれば面白くなるのか──というところでは、頭を悩ませるけれどね。
そんな風に、書きたい物が沢山あって困る……というくらいでなければ、作家になるのは難しいと思う。
そんなことを話してやると、福井さんは、
「なるほどぉ、参考になります!」
と感心していた。
しかし年の離れた小学生との会話は、結構大変だな……。
綺美ちゃんとなら家族みたいなものだから、自然と会話することができるけれど、この娘とは共通の話題があっても、まだ探り探りで話さなければならない。
やっぱり年齢差があると、知識量や価値観にずれがあったりするし、思わぬところで会話がすれ違うからね……。
「なんなら、なにか観る?」
だから私は、間をもたせる為に円盤の視聴を勧めた。
これで話題の切っ掛けになればいいんだけど……。
「それじゃあ……これを!」
「えっ……?」
それ、ガッチガチの百合物じゃん!?
一応全年齢対象だけど、深夜アニメで女の子同士の濃厚なキスシーンがあるやつだよ!?
「あの……駄目でしょうか……?
私の家では、深夜のアニメは観せてもらえなくて……。
録画でも駄目なんです」
「あ~……」
それは辛い。
私にも覚えがあるけど、思春期の頃には性的なことに興味があったとしても、それを満たして解消する手段が極端に少ない。
本来は1番欲している時期に禁止されているから、一部では鬱屈した物をため込んで爆発させ、犯罪に走る者もいるし、成長して解禁された時に、歯止めがかからずにのめり込む者もいる。
……うん、後者は私だ。
子供の頃に満たされなかったものを取り戻すかのように、大人になってから薄い本とか色々と買いまくったなぁ……。
だから本当は性的なことだって、子供の頃から適度に触れさせて、発散させておいた方がいいのだ。
そうすれば人によるだろうけれど、いつかは飽きて適度な付き合い方を覚えていくだろう。
駄目なら私のように、「作品」という形で内に秘めた欲望を発散させていけばいい。
この娘なら、それができる素養があると思う。
「分かった。
好きなだけ観るといいさ!」
「ありがとうございます!」
その後福井さんは、真剣な目でアニメを鑑賞していた。
件のシーンでも、顔を赤らめて恥ずかしがり、時には鼻血を流していたけれど、それでも彼女の目は今までに無くキラキラと輝いていた。
そんな福井さんの活き活きとした姿を見ていると、私も嬉しくなってくる。
ただこの時私は、彼女がこの部屋に入り浸る理由を与えてしまったことに、まだ気付いていなかった。
そう、この後彼女は、この円盤の続きを観る為に、何度もこの部屋に訪れることになったのだった。
「う……!」
「どうしたの綺美ちゃん?」
「いや……、今何故か外堀が埋まったような気がして……」
「なにそれ?」
……お母さんは笑うけど、こういう時の私の勘って、結構当たるんだよなぁ、何故か……。
一体私の知らないところで、何が起こっているんだろう……?
まあ、考えても分かる訳がないけどさ……。




