50 魚 卵
※少々グロい描写があります。虫が苦手な人はご注意ください。
「お母さん、起きて。
もう朝だよ」
私はお母さんを起こす。
まだ起床予定の時間よりも早いけれど、同じテントの福井さんも起きたことだし、お母さんの油断しきった寝相はあまり見せたくない。
さすがのお母さんも、眠っている時は外面を取り繕うことはできないようだ。
実際、今のお母さんの姿は、寝袋からはみ出して、実にだらしなく見える。
シャツがめくれて、胸だって見えそうだよ……。
「あ……また鼻血が……」
あれっ、福井さん大丈夫!?
と、油断した隙に──、
「う~ん、綺美ちゃ~ん」
寝ぼけたお母さんが私に抱きついてきた。
「ちょっと、早く起きて、お母さんっ!!
今キャンプ中っっ!!」
私が慌てて、お母さんを叩き起こす。
「あ、おはよう、綺美ちゃん」
「おはようじゃ……ない!」
もう色々と、福井さんに見られてしまったんじゃないかな……。
どうやって誤魔化そう……。
そう思って、福井さんの方へと向き直ると、
「あの……福井さ……えっ!?」
福井さんが突っ伏し、その顔は鼻血の中に沈んでいた。
「ちょっ、大丈夫なの!?」
その騒ぎで色々と有耶無耶になったけど、驚いたよ……。
なお、倒れた福井さんの顔は、またもや何故か幸せそうだった。
テントの外に出ると、知らない子がいた。
……と思ったら、丹治易さんだった。
隣にいつも一緒の、頭映さんがいたから気付いた。
「あ、おはよー」
普段はツインテールにしている髪をほどき、いつもあげている前髪を下ろして特徴的な短い眉毛が隠れると、別人のように見える。
こっちの方がお嬢様っぽく見えるけど、何故この髪型にしないのだろう……。
「おはようございますわ、委員長・副委員長。
これから朝食の準備ですの?
手伝えることがあるのならば、手伝いますわよ」
「おはよう。
じゃあ、お願いしようかな?」
まあ、食材を切るくらいしかやることはないけど、手先が器用な頭映さんならばいい働きが期待できる。
……丹治易さんが役に立つのかは、知らないけど。
それから炊事場へ行くと、管理人のおじさんが流し台で何かの作業をしていた。
「おはようございます。
使ってもいいですか?」
「ああ、おはよう。
水を汲むだけならいいけど、調理や洗い物とかなら後の方がいいかなぁ。
今綺麗にしているから」
「お掃除ですの?
手伝いましてよ?」
「いやぁ……女の子には厳しいと思うよ、これは」
管理人さんがしているのは、なにやら流し台にこびりついた無数の物体を、ゴム製のヘラでそぎ落とすという作業だった。
表面は羊毛フェルトのようにふさふさしているけれど、中にはつぶつぶと丸い物が沢山入っている。
それが流し台の中に、無数に散らばっていた。
それはもしや……。
「夜の間に、蛾が大量の卵を産み付けていくから、取り除いているんだよ」
「「「「ひいっ!?」」」」
私達は同時に悲鳴を上げた。
確かにこれは、女の子には厳しい……。
福井さんなんて、よろめいてすらいる。
大丈夫?
血を流しすぎだよ……。
レバーを食べる?
「私……暫くは、数の子が食べられなくなるかもしれませんわ……」
「言わないでよっ!!
考えないようにしていたのにっ!!」
結局私達はすぐにその場から退散し、朝食の準備は少し遅れることになった。
その後は特に何も無く、帰り支度をしてお昼前には解散することになる。
なんだかキャンプの思い出は、最後の最後でトラウマに塗りつぶされたような気がするよ……。
帰宅後は疲れたので、昼食の後にお昼寝をすることにした。
いつの間にかお母さんが隣で眠っていたけど、もういつものことだし突っ込む気力もない……。
結局お母さんを放置したまま、私は夕方まで眠った。
……やっぱりお母さんがいると、密着されて暑いなぁ。
ちょっと入院していた所為でストックが尽きたので、来週は更新できるのか分かりません。




