49 そして朝が来る
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肝試しは、お母さんが抱きついてきて困った。
「こんな密着した状態で、夜道を歩くのは危ないよ……」
「そうねぇ……じゃあ」
そう指摘すると、今度はおんぶされた。
まるで幼児のように。
「これはこれで、危なくない!?」
「大丈夫よ、綺美ちゃんは軽いし」
そう言って降ろしてくれない。
……まあ、歩く必要がなくて楽だからいいか。
それにしても、こうして背負われていると、昔のことを思い出す。
私がもっと小さい頃は、こうしていつもおんぶされていたっけ……。
ちょっと懐かしい。
だけど──、
「お母さん、ゴールの前では降ろしてよ?
こんなところを人に見られたら、恥ずかしいし!」
「ええ、分かっているわよ。
でも、綺美ちゃんの体温をもっと背中に感じていたいから、ゆっくり歩こうかしら……」
「あまり遅くなったら、捜索に来るからやめてっ!」
結局、ゴールには他の人達よりも時間がかかって辿り着いた。
特に問題も無く肝試しは終わったけど、結局久遠さんが何の儀式をしていたのかは、謎のままだったな……。
そのあとは、みんなで花火をした。
ただ、キャンプ場に設置されている誘蛾灯に誘われた蛾が、感電して焼ける香ばし臭いが漂う中だったので、早くテントの中に避難したいという気持ちもあったけどね……。
でも、いざ花火が始まってみると、なんだかんだで楽しかったと思う。
そんな中、お母さんとゆりさんが、妙なことを話していた。
「私達の子供の頃は、もっと地味だったわよね?」
「あ~、そうかも……」
「地味って、花火が?
火力が弱かったってこと?
それとも、火花の色が違ったの?」
私がそう聞くと──、
「いや、パッケージが……。
昔はこんなに文字やイラストで、全面が埋め尽くされてはいなかったと思うのよ。
なんだか雑誌の表紙みたいだわ……」
「ええ、もっと花火本体が見てましたよね?
今のは殆ど花火が見えないですよ」
「あと、もっと安かったような気がする……」
「そりゃ、20年くらい経てば、物価は上がりますよ……」
そんなことを言っていた。
ふ~ん、そんな変化があるんだ……。
でも確かにお母さんの子供の頃の話を聞くと、今と全く違うことが結構あったな。
時代って100年くらいで大きく変化しているというイメージだったけど、案外10~20年くらいでも変わっているんだなぁ……ということが分かる。
まあそれはともかく、花火は普通に楽しんだ。
そういえばこんな機会でもなければ、家で花火をするなんてこともないから、結構久しぶりだなぁ。
マンションの敷地内だと、ちょっとやりにくいしね。
そっか……花火ができただけでも、キャンプに来た甲斐があったような気がするよ。
そして翌朝。
「────っ!?」
目が覚めたら、目の前に鼻血を吹いた福井さんの顔があった。
「死ん……いや寝て……っ!?」
呼吸はしている……。
眠っているだけ……?
眠っている間に、鼻血を出した……?
「でも、なんて幸せそうな顔……。
どんな夢を見ているのだろう……?」
だけどさすがに心配なので、福井さんを起こして安否を確認する。
「あ、おはようございます。
えへへ、珠戸さんのおかげで、いい夢が見られました」
あ、大丈夫そうだ……。
でも、私のおかげというのが、よく分からないけど……。
「あの……鼻血が出ているから、拭いた方がいいと思うよ」
「わっ、本当だ!?
興奮し過ぎました……。
恥ずかしい……」
「……興奮?」
「あ、え、ええ……。
一緒に寝るのが……じゃなくて、キャンプが楽しくて……」
「うん、楽しかったね」
でもそのキャンプも、もうすぐ終わってしまう。
後は朝食を食べて、後片付けをしたら終わりだ。
さて、ホットサンドメーカーを持ってきたし、朝食はホットサンドを作ろう。
しかしまさか炊事場が、あんな惨状になっているとは思わなかったよ……。




