44 そして到着
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羽田さんの家は、古い一軒家を買い取ったものらしい。
洋風でそこそこ大きいので、まさに「洋館」と言った感じだ。
これ……近所で「お化け屋敷」とか言われてない?
こんな心霊スポットみたいなところ、市内にあったんだな……。
まあ羽田一家的には大自然の中でのテント生活から比べれば、これでも快適なのかもしれないけれど。
少なくとも、命を脅かすような生物はいないし。
そんな陰気な家とは対照的に、羽田さんは今日も元気いっぱいだった。
「みなさん、おはようございマース!」
……ブンブンと手を振るのはいいとして、胸は揺らさなくてもいいんだよ?
そして出迎えてくれた羽田さんの隣には──でっか!?
身長、胸ともに、羽田さんよりも大きな女の人がいた。
これが噂の、羽田さんのお母さん……?
でも本当に、お姉さんにしか見えない……。
「オハヨー。
ヨロシクオネガイシマス」
そして凄い片言。
これは羽田さん以上に、日本語が駄目っぽいな……。
そんな彼女に対してお母さんは、何事かを話していた。
「えっと……何を話しているか分からない……。
なんで会話できるの、お母さん……?」
こぶしちゃん経由の話では、羽田さんのお母さんは英語やフランス語などの西洋の言葉とは違う言語で話すらしい。
スワヒリ語か何かかな……?
それにも関わらず、お母さんは対応できている。
「先輩はなんでもできるけど、何故できるのか謎だし、意味が分からないよね」
「うん……」
ゆりさんの言葉に、私は同意するしかなかった。
お母さんはいろいろできるけど、そういうのを習ったり勉強したりしている姿を見たことが無い。
一体いつ習得しているのか、本当に謎だ……。
その後、借りたテントや寝袋を車に積み込んで、羽田さんのお母さんに見送られて出発した。
それから途中でショッピングモールに寄って食材などを買い込み、車は百合ヶ島市の郊外へ。
──とはいっても、キャンプ場まではそんなに遠くないので、1~2時間もかければ私の家からでも歩いていけなくもない。
まあ、私は絶対に嫌だけど、さくらちゃん達は身体を動かすのが好きなので、遠足気分で歩いて行ったらしい。
予定通りなら、もうキャンプ場に到着しているはずだけど……。
あ、キャンプ場の入り口にいた!
こうして啓内姉妹と、久遠さんを加え、キャンプ参加者が全員揃った。
それからお母さんがキャンプ場の使用とテントなどのレンタルの手続きをして、テントの設営である。
これには経験者の羽田さんが、大活躍だった。
私達はテントの組み立て方法なんて知らなかったから、非常に助かったよ。
それから羽田さんは、石を積み上げて竈を作り、更に火をおこす。
薪に木の棒を突き立てて、それを両手で挟み込んでこすり合わせることで、摩擦による発火をさせる手法だが──。
「それって道具を使わないと、難しいんじゃなかったっけ?」
「オー、ダイジョブですヨ」
構わず作業を続ける羽田さん。
漫画とかではたまに、そうやって火をおこす方法が描写されているけれど、実際には手の皮がめくれるほどやっても火が付かないと聞く。
でも羽田さんの手の動きは、めっちゃ早い!?
これは人類に可能な動きなの!?
まるで機械みたいだ……。
あ……煙が出てきた。
本当に火が付いたよ……。
ともかくこれで、昼食の準備に取りかかれるね。
「あれ綺美?
あたしたち、これから近くの川に泳ぎに行こうと思ったんだけど、行かないの?」
「私はここで料理してるからいいよ。
どうせ泳げないし」
さくらちゃんが川遊びに誘ってくれたけれど、無駄に体力を使うので私には無理だ。
「え~、そんなに深い川じゃないよ?」
「人間は5cmも水深があれば、溺れるんだよ?」
「それ、動けない人の話でしょ……?
いや……でも綺美だしなぁ……。
滑って転びそうか……。
分かったよ、あたし達だけで行ってくる」
……それで納得されるのもなんだか情けないけど、まあ私の運動能力の無さに理解があるのは、それだけ付き合いが長いからこそだ。
そもそも水着は、持ってきていないしね。
おや? お母さんが不満そうな顔をしている?
って、今荷物に仕舞い込んだの、私の水着だよね!?
なんで持ってきているのさ……。
いや、私の水着姿と着替えが見たかったのだろうけれど……。
ん? 福井さんもお母さんと似たような顔をしているのは、何故なんだろう……?
そして私の視線に気付いた福井さんは──、
「あ!
わ、私、お手伝いしますね」
「え、いいの?
泳がなくて?」
「私もそれほど泳ぐのは得意ではないので」
「そう。
じゃあ、お願いするね」
そんな訳で、私達は昼食の準備に取り掛かるのだった。
身内に不幸があった為に休載していましたが、今週から更新を再開します。今後ともよろしくお願いします。




