38 描き上げた作品
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私、倉守ゆりは、気がつくと何も無い広い空間にいた。
いや、人はいるな。
……さくらとこぶしが並んでいる。
そしてなにやらおかしな動きをしていた。
体操だろうか?
いや、これは某有名格闘漫画の──!?
「フ●ージョン!!」
さくらとこぶしの人差し指同士が触れ合った瞬間、眩い光が私の視界を覆った。
そして光が消えたその後に残ったものは──、
「美少女戦士、こぶらちゃん爆誕!!」
顔こそさくらやこぶしと同じだが、髪型がツインテールになっている美少女がそこにいた。
双子が対照的に結っていたサイドアップテールが、合体融合することでツインテールなったということなのか?
そして着ている服も、魔法少女っぽい。
名前は「こぶし」の「こぶ」と、「さくら」の「ら」を組み合わせたのか。
う~ん、「さくし」や「さぶし」よりは「こぶら」の方がまだ可愛いか……?
「ゆりお姉ちゃん、大好き~!
その「こぶら」と名乗る少女は、私に抱きついてきた。
なにこれ、天国!?
くっ……半分はこぶしのはずなのに、可愛い……っ!
でもここで何もしないのは据え膳ね。
まずは私も彼女の身体を抱きしめ返して、頬擦りして、クンカクンカして、キスして、ペロペロして、それから──それから──。
「ハッ!?」
スマホの呼び出し音で目が覚めた。
クソッ、これからがいいところだったのに……!!
本当に素晴らしい夢だった……。
で、私の天国を邪魔した罪深き者は誰だ?
これは万死に値するのだが……!!
……なんだ、担当か。
つまり私が寄稿している小説雑誌の、担当編集者である。
百合好きで、私の作品にも理解があるので、彼女の存在は作家活動をする上で欠かせないとも言える。
……うん、色々と恩があるから、私を幸せな夢から覚ました大罪は許すとしよう。
「はい、倉守です」
『あっ、リリィ先生、おはようございます。
この前の寝取られ百合は、反響が大きかったですよ。
否定意見もありますが、「刺激的だった」などの肯定的な声も多かったです。
ヒロインが寝取られた彼女を寝取り返し、更に寝取った相手まで手込めにしてしまうのは、淫靡で背徳的で……とにかく素敵でした」
「そう、それはよかった」
作品が評価されるのは嬉しい。
作品が認められることで、小説を書くこと以外には大した能力も無い私の存在が、認められたような気持ちになる。
駄目人間の私でも、世の中の役に立てることがあるのだな──という、ある種の確認作業だ。
まあ、こぶしにさくらを取られた悲劇的な現実がモデルだというのは癪に障るし、その仕返しを作品の中でしかできないというのは、ちょっと情けないので、純粋に嬉しいとも言えない部分もあるけどね……。
でも現実でこぶしに戦いを挑んでも、物理的には絶対に勝てないし、さくらも私とこぶしならば、姉の方に味方をするだろうからなぁ……。
悔しい……が、そんな鬱屈した心を込めたからこそ、作品が輝くこともあるのだ。
それに作品の評価は、ダイレクトに収入へ直結するからねぇ……。
そう、作品の評判が良ければ次の仕事にも繋がるし、将来的には書籍化されて印税も貰える。
そうなれば生活が楽になるのは勿論、さくらにだって色々と奢ってやれるもんね……。
うん、さくらの為にも頑張ろう。
『アンケートで寄せられた声は、後ほどまとめて送りますね。
それで……次回作のプロットはできていますか?」
う~ん……何も考えていない。
いや、さっき見た夢をヒントにして──。
「そうですね……。
2人の女の子が融合して、魔法少女になる話なんてどうですか?」
なんだか昔の巨大特撮ヒーロのエースを思い出したけど、気にしない。
そしてこんなに適当に思いついて、半ば悪ふざけで書き始めた話が、後にアニメ化するとは、全く予想していなかった。
世の中、何が起こるのか分からないものだ。
そう、『魔法少女・マギカフュージョン』は、何故か私の最高傑作になるのだった。
『魔法少女・マギカフュージョン』は、ぼんやりと構想はあるので、気が向いたらいつか書くかも。




