37 双子と私
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私、倉守ゆりは、出先で偶然に姪っ子のさくらと出会い、彼女を喫茶店に連れ込んで餌付けを行っていた。
食べることが大好きな彼女の幸福そうな顔を見ていると、私も幸せすぎて脳内の変な物質が大量に分泌されているのを実感できる。
しかし──、
コンコンと、ガラスを叩く音がする。
「っ!?」
その至福の時間は、唐突に終わった。
喫茶店の窓に、さくらの双子の姉であるこぶしが貼り付いて、こちらを睨み据えていることに気付いたからだ。
短い夢だった……。
その後こぶしは店の中に入ってきて、さくらの隣に座った。
「おばさん、さくらになんでも食べさせないでって言ってるでしょ!?
いくらさくらが大食いだからって、食べ過ぎは健康に悪いんだからね!」
「ま、まあ……たまにだから、いいじゃない……。
別に毎日って訳じゃないんだし……」
うるさいんだよなぁ、この小姑……。
「そうだよ、お姉ちゃん。
もう注文しちゃったんだし、どうせなら楽しく食べようよ」
と、さくらからのフォローも入る。
まあ、彼女の場合は、ただ食べたいだけの気もするが……。
「さあ、折角だからこぶしちゃんも、何か注文しなよ。
好きな物を注文してもいいから……ね?」
「……仕方がないなぁ」
こぶしが折れた。
ただこれは、食べ物に釣られたからではないだろう。
あまりうるさく言って、さくらに嫌われたくないだけだ。
しかも「ジャンボパフェ」という、2000円近くもするものを注文して、私の財布にダメージを与えることも忘れない。
「わぁ~、美味しそうだね、お姉ちゃん!」
さくらがパフェを見てはしゃぐ。
うん、君さっきも同じのを食べたよね?
そしてこぶしは、スプーンでパフェの一部をすくい取り──、
「ほら、さくら。
あ~ん」
と、さくらに与える。
あ……「あ~ん」だと……!?
凄く親しい者同士──たとえば恋人同士とかだけに許される行為……!!
双子だからって、ナチュラルにすることができるのは羨ましい……!
大人の私が見た目は高校生以上に見えるさくらにこれをやると、周囲からおかしな目で見られかねないから、ちょっと勇気がいるのに……。
双子の姉妹だと、「仲がいいねー」で済むんだけどなぁ……。
……って、しかもこぶしは桜が口に含んだスプーンでパフェをすくい、それを自らの口へと含む。
か、関節キスだと……っ!?
なんて羨ま……っ!!
こぶしはそんな私の嫉妬の視線を感じ取ったのか、私の方に視線を向けて、勝ち誇ったようにニヤリと笑った。
「!!」
くっ……こいつ……!!
わざと見せつけているな……!?
しかも双子がイチャイチャしている姿に関しては、私自身も「可愛い」と思えてしまうのが悔しい。
ええ、事実は認めましょう!
確かに双子姉妹のイチャラブは尊い!!
だけどその双子の片割れが我が最愛のさくらでは、寝取られ感の方が酷いんだけど!?
「ああ、ほらさくら、頬にクリームがついている」
「ほえ?」
「お姉ちゃんが、とってあげるね」
と、こぶしはさくらの頬に付いていたクリームを、舐め取った。
しかも頬とは言っても、殆ど唇に近い位置だ。
これだと傍目には、口同士でのキスにしか見えない。
「お姉ちゃん、ありがとー」
そしてさくらは、動じることもなく礼を言う。
つまりこれは普段からよくあることで、慣れているってことだ。
日常的にこんな実質キスみたいなことを、やっているだと!?
「あ────っ!!
も────っ!!」
私は思わず大声を上げた。
この嫉妬や怒り等が複雑に入り混じった感情の爆発を、制御なんてできるはずがない。
「おばさん、うるさい!」
こぶしには怒られるし、店員や他の客からも奇異の目で見られたけど、そんなの知ったことか──っ!!
こうして至福だったはずの喫茶店での一時は、地獄へと変わった。
帰宅後──。
喫茶店での出来事は、「悔しい」の一語に尽きる。
だが、私は転んでも起きない。
私は作家だ。
このグチャグチャした感情を、作品にぶつける──!




