34 日曜のママはちょっと違う
日曜日の朝──。
休日なので、私は昼まで惰眠を貪りたいのだけど、我が家では日朝独自の習慣がある為、早起きしなければならない。
つまり、女児向けバトルアニメ『プリンキュア』シリーズを観る為だ。
このアニメシリーズをお母さんは私が生まれる前から欠かさず観ているらしく、必然的に私も物心つく前から一緒に観ていた。
まあ、私はもう卒業してもいい年齢だし、実際に観ても観なくてもいい感じなんだけど、お母さんがどうしても一緒に観たいというので、付き合っている。
しかも最近は、女児向けアイドルアニメ等が全部日朝に集中している為、それを観る為にマラソン状態となっていた。
私は今、お母さんの脚の間に挟まった状態で座り、そして抱きかかえられて、テレビの前にいる。
これも昔からのアニメ視聴スタイルである。
で、毎週のように観ている『プリンキュア』シリーズだが、最近になってちょっと気付いたことがある。
作品に対して興味が薄れていたからこそ、物語には集中せず、別の視点から作品を観た結果──あれ? 登場している女の子達の距離感が近くない?──と。
うん、たぶん友情の範囲ではあるんだけど、必ずしもそれだけとは言い切れない、微妙な距離感。
思い起こせば、過去のシリーズ作品でもこんな要素はあったような気がする。
もしかしてこれ……。
「ねえ……お母さん、これ女の子同士で、妙にイチャイチャしてない……?」
「あら、ついに綺美ちゃんも気付いたのね。
このシリーズは、『百合』も隠れたテーマになっているのよ」
「ゆり……?
ゆりさん……な訳はないし、花の百合?」
「そうね、女性同士の恋愛の隠語よ。
男性同士の『薔薇』から派生した言葉だとも言われているわ。
今では定義が色々と論議されているけれど、私は『あれは違う』、『これは違う』なんてことはなく、女性同士の恋愛要素は全て内包できる許容力が『百合』にはあると思っているわ」
へえ……そんな言葉があるんだ。
って……、
「そんなテーマが、女児向けアニメに入っているの!?
一体いつから!?」
「初代からだけど?」
「私が生まれる前からっ!?」
衝撃の事実であった。
私は知らず知らずのうちに、その「百合」とかいう概念を受け入れられるような、下地をすり込まれていたというのだろうか。
その為にお母さんは、私に『プリンキュア』シリーズを観せていた……?
私のことを好きなお母さんにとって、都合がいいから……?
「まあ……どういう意図で百合の要素を入れ始めたのかは、関係者ではない私には分からないけれど、性的マイノリティの人達への理解が進むようにしてくれたというのなら、ありがたい話ねぇ……」
あ……お母さん、どちらかというと自分のことを理解して欲しくて、私に観せていたのかな……?
「プリンキュアー!
がんばえーっ!!」
あ……違うな。
純粋に楽しんでいるわ、これ……。
それから何日か経った体育の時間──。
「今日は創作ダンスに挑戦してもらいます。
ダンスは中学生になったら必ず習う項目ですが、それを先に体験しておこうという訳です。
今日の経験を活かして、中学の体育に備えておくのも良いと思いますよ」
「うえ~……」
お母さんの言葉を聞いて、私は天を仰いだ。
私の運動能力では、きっとまともに踊れない。
それなのに、それを人前で発表することになるだろう。
なにその屈辱的なプレイは……?
「今日は何人かで組んで、オリジナルのダンスを考えてもらいますが、まずは私が見本を見せたいと思います」
そして、お母さんは踊り出す。
……ん?
ちょっと待って。
これ。『プリンキュア』のエンディングのダンスや、アイドルアニメのライブシーンのダンスを組み合わせただけのパクリじゃない!?
「おお、凄いっ!」
「キレッキレだな」
でも、そんな事実を知らない他の子達からの反応は悪くない。
よかった……6年生にもなって、女児アニメを観ている人はいなかったみたい……。
だが──、
「あれ……?
これ、どこかで見たような……?」
「!?」
福井さんが反応した。
えっ、観ているの、『プリンキュア』!?
福井さんって結構お嬢様っぽいから……。
それこそなんちゃってお嬢様みたいな丹治易さんよりも本物っぽいから、そんなイメージは無かった……。
え……と……どうしよう?




