32 日本へようこそ
ブックマーク、ありがとうございました。
「さあ、自己紹介お願いね」
教壇に登った新しい英語の先生と思われる人は、お母さんに促されて自己紹介を始めた。
「羽田胡詠美デス。
今日から転校してきましタ。
これからヨロシクお願いしますネ!」
えっ、転校生!?
でも身長はお母さんと同じか、もしかしたらそれ以上あるし、それに……それに……!!
胸がさくらちゃんよりも大きいんですけど!?
えっ、転校生ってことは、あれで同い年なの!?
嘘でしょ……!?
それに見た目が外国人なのに、名前は普通に日本人だ。
ハーフってことなのかな?
だとしたら、直接会ったのは初めてだ。
教室がざわめく。
転校生ってだけでも珍しいのに、その人物がかなり予想外の存在だったのだから無理も無い。
「はーい、静かに!
羽田さんは、ご両親のお仕事の都合で、今までは海外で生活していました。
その為に会話はある程度できるのですが、読み書きがちょっと苦手です。
そんな訳で彼女は、本来なら中等部に通うはずの14才なのですが、中等部の授業にはついていけない可能性が高いということで、このクラスで中等部へ入る準備をすることになりました。
皆さんも、羽田さんが言葉などで困っている時には、教えてあげてください」
14才!? そ……それなら、あの胸もそんなにおかしくないかな……?
わ、私だって14才になれば、あれくらい大きくなっているかもしれないし?
あ……でも、小学部の制服を着ていないのはそういうことなんだ。
14才で小学部の制服はキツイもんね……。
いやまあ……さくらちゃんとこぶしちゃんは、年相応なはずなのに既にキツイけれど……。
「まずは委員長が中心になって、羽田さんを助けてやってくださいね。
そんな訳で、羽田さんの席は、委員長の隣にしたいと思います。
済みませんが、高橋さんは新しく用意した席に移動してくれますか?」
「え……はい?」
うわぁ……私が年上のお姉さんの、お世話をしなければならないのか……。
上手くできるかな……?
あ……羽田さんがこっちに来た。
近くで見ると綺麗な人だな。
そして凄い迫力の……胸だ。
「ヨロシクお願いしますネ」
羽田さんが少したどたどしいけど、明るい調子で挨拶してきた。
なんとなくだけど、柔らかい雰囲気で、意外と付き合いやすいかも……?
「うん、よろしく。
私は珠戸綺美。
担任が母親だよ」
「オゥ、センセーの。
目とか似てますネ」
あれ? 似てるって言われた。
物凄いサイズ感の違いの所為か、大抵は似てないって言われるんだけどな。
それに私は、どちらかというとお父さん似だし。
でもお母さんは見た目だけなら美人だって言われているから、似てると言われたら、ちょっと嬉しいかも。
うん、羽田さんはいい人だね!
それから授業が始まった訳だけど、羽田さんは本当に読み書きがあまりできないようで、私の机に机をくっつけて、「これはなんと読むのですカ?」とか、色々と聞いてきた。
取っているノートも、ひらがなとカタカナが殆どで、漢字はあまり使えていない。
おう……これを卒業までに、小学6年生レベルまで引き上げるのは、結構大変だぞ……!?
必要なら、休み時間にも教えた方がいいのかなぁ……?
でも、今日の休み時間は、クラスメイト達が集まってきて、色々と質問攻めである。
羽田さんによると、今までは動物学者をしていた両親と一緒に、アフリカやアマゾンなど、世界中を飛び回っていたらしい。
そんな訳で、日本での教育を受けたことは無いらしいが、父親が日本人なので、会話だけはなんとかできるのだとか。
「あ、お姉ちゃんが会った外国の人って、もしかしてこよみんのお母さんだったのかも。
こよみんと違って日本語は全く喋れなかったって言うし、こよみんの方じゃないよね?」
さくらちゃん……もう羽田さんにあだ名をつけている……。
でも羽田さんは、「鉄拳」の噂について知らないから、さくらちゃんに対しても特に警戒感を示していない。
さくらちゃんとしては、それが嬉しいのかもしれない。
「オー、ママがこの前、親切な子に道を教えてもらったって、言ってましタ」
「じゃあ、やっぱりそれ、お姉ちゃんだね。
私とは双子だから、隣のクラスにいるよ」
「では、今度お礼を言いたいデスネ」
「5時間目の体育が2組と合同だから、その時に会えると思うよ」
私がそう教えてあげると、羽田さんは嬉しそうな顔をした。
「私、身体を動かすのが大好きデス!
体育、楽しみ!」
そうはしゃぐ羽田さんは、年齢よりもちょっと幼く見えた。
大自然の中で育ってきたからなのか、天真爛漫というか……。
しかしこの後の体育があんなことになろうとは、予想もしていなかったよ……。
胡詠美のように家庭の事情で、16才なのに中学生だった知人はいた……。




