31 金の髪の人
ブックマークありがとうございました。
私、久遠理沙!
どこにでもいる、普通の霊感少女だよ(ツッコミ待ち)。
今私は、友達の啓内こぶしと下校中だ。
こいつ、双子の妹のさくらが大好きなクセに、一緒に登下校しないことが多い。
なんだかんだで、「束縛はいけない」というところはわきまえている──というよりは、妹にうざがられるの恐れているだけなのかもしれない。
そのこぶしはというと、
「で、さくらがさー」
さっきから妹のことばかり話している。
そういうところやぞ!
妹に対する配慮を、少しは他にも回して欲しい。
ともかく、下校している途中で私達は、その人に出会った。
「……ん?
何あの人、キョロキョロして?」
その人はどうやら、道に迷っているらしい。
だけど私は、声をかけるのを躊躇った。
その人は金髪碧眼で、いかにも外国人って感じの女性だったからだ。
私は英語とかを話せないからね。
というか、あの算数の記号のような言語を覚えることを、脳が拒否している。
単語とかならギリギリ理解できるが、文法とかになるとお手上げたし、会話なんか当然できるはずがない。
最近は小学校でも英語の授業があるけれど、全く政府の人は余計な制度改革をしてくれたものだよ。
「ん……私、行ってくる」
「おお、勇者だな!?」
こぶしが、金髪のお姉さんに歩み寄っていく。
基本的にこぶしは、困っている人を見つけたら必ず助ける。
その結果、自分の評価だけではなく、双子の妹の評価も上がるから。
そしてなんだかんだで、彼女は英語がそこそこできるというか、勉強全般ができる。
ただ、その理由が妹から尊敬されたいから──というだけで、必死に勉強した結果らしい。
こやつ、妹の為ならなんでもやる……!
というか、さくらが脳天気な性格だからいいけど、普通なら出来が良すぎる姉に劣等感を抱くんじゃなかろうか……。
そういうところに想像が至らないあたりは、こぶしもまだまだだな。
そんなことを考えていると……お、こぶしが戻って来た。
早いな。
しかし、その顔は困惑している。
「駄目だ、何語か分からない」
「ん? 英語じゃ通じなかったの?
フランス語か何か?」
「いや、たぶんもっと南の雰囲気」
「分かるのかよ!?」
南って、アフリカか東南アジアってことか?
「辛うじて、日本語で『役場』って言っているみたいだったから、そっちの方を指さしておいたけど、あれで正解だったのかどうか……。
とにかく、全く未知の言語で話しかけられて、驚いた……」
「ほ~ん」
結局、あの金髪のお姉さんがどうなったのか、私達にはそれを知る術が無かった。
「──ってなことがこの前あったって、お姉ちゃんが話してた」
「あ……そう……」
私──珠戸綺美は、さくらちゃんの話に対して、ぞんざいに答えた。
正直、今はそれどころじゃない。
体中が筋肉痛で痛い……。
「うう……もう遠足なんてもうヤだ……。
2度と山登りなんかしない……!」
「いやいやいや、遠足なんて、もうずっと前の話でしょ。
一昨日あったのは、運動会。
いくら嫌だからって、記憶から消すなよ」
さくらちゃんからツッコミが入った。
あれ……そうだったっけ?
そういえばもう6月に入っていたんだっけ……。
6月と言えば、運動会の季節だよね……と言うと、賛同してくれない人も多いと思うけど……。
他では大体秋にやるよね。
でも、うちの学園では、運動会を6月にやる。
どうやら学園を創設した人が北海道出身で、そっちの方のローカルルールが影響しているのだとか。
向こうでは5月下旬から6月の上旬にやるものらしい。
まあ北海道だと、10月では寒いとか、空気が乾燥していてグラウンドが埃っぽいとか、秋に運動会がやれない理由が色々とあるんだろうね。
ただ、こっちだと梅雨の時期に入りかけるので、そのまま雨で中止にならないかな……と、何度思ったことか。
ともかく、遠足はまだ綺麗な風景とか、思い出になるようなことがあったけど、運動会は私にとって得になることが何も無いので、思い出したくもない……。
そもそも、こぶしちゃんが無双しているだけだから、完全に脇役の私にはどうでもいいよ……。
そんな風に私がぐったりしていると、始業のベルが鳴った。
これから朝の学級会か……。
え……委員長の仕事をするの?
この状態で?
そんな風に戦いていたら、お母さんが入ってきた。
「お早うございます」
「き、きりーつ、れーい、ちゃくせーき」
私はなんとか立ち上がって、挨拶の号令をした。
その後は、脱力したように着席をする。
もう……登校の時点で力を使い果たしているので、これ以上動ける気がしない……。
でも、学級会の内容次第では、これからも仕事が続く訳で……。
「はい、これから朝の学級会を始めまーす。
先生から重要な話があるので、委員長はそのままでいいですよ」
ほっ……司会役が必要な議題は無いようだ……。
でも、重要な話ってなんだろう?
家でお母さんは、何も言ってなかったけど……。
「今日はみなさんに、紹介したい人がいます」
え、誰だろ……?
「さあ、入ってきてください」
お母さんに促されて教室に入ってきた人を見て、クラスメイト達がざわめいた。
入ってきたのは、金髪碧眼の女の人だった。
あれ? 外国の人……?
もしかして、新しい英語の先生なのかな?




