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27 登山開始

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 さて、現地についたら、すぐに山に登るぞ──ということにはならず、まずはトイレの順番待ちの長い行列である。

 この行列に並んでいるだけでも、疲れそうだね……。


 そんな訳で私とさくらちゃんは列には並ばず、トイレが()くまで後ろの方で待っている。

 別に今すぐ漏れそうということもないので、急ぐ必要も無いからね。

 

 ただ、先程まで近くで福井さんがうろうろしていけど、結局列に並んだ。

 私と一緒にトイレに行きたかったみたいだけど、我慢できずに泣く泣く先に行くことにしたようだ。

 どうやら緊張や興奮をした所為で、トイレが近くなったみたい。

 

 ……そんなに遠足が楽しみだったのかな?


 で、トイレが終わった人から山に登り始めているけど、丹治易(にじい)さんなんかはトイレにも行かず、真っ先に登り始めた。

 山頂に一番乗りしたいのかもしれないけど、まずは中腹のロッジ前の広場に集合して、お弁当を食べる予定らしいから、急いで登っても意味は無いと思うんだけどなぁ……。

 ちゃんとお母さんの話を聞いていたの?


 ともかく、わたしはのんびりとトイレが空くのを待っていた。

 すると、先にトイレを終えたこぶしちゃんがこちらに来た。


「さくら~、一緒に登ろう」


「ああ、お姉ちゃん。

 綺美も一緒だけど、綺美の体力が尽きたら運んでもらうよ?」


「うん、綺美の1人くらい、片手で運べるから大丈夫だよ」


「ありがとう、こぶしちゃん!

 凄く、助かるよ~」


 私が途中で歩けなくなるのはほぼ確定なので、本当にこぶしちゃんの存在は助かる。

 百合ヶ島の鉄拳の怪力なら、私の体重くらい余裕だよね。


「あ、こっちも久遠(くどう)ちゃんが一緒だけど、いいよね?」


「ああ、うん。

 確か4月から啓内(けいだい)の家に、下宿している()だよね?」


 こぶしちゃんの後ろには、前髪が一房だけ口元に届きそうなほど長いという、特徴的な髪型をした娘がいた。

 百合ヶ島中等部の女子校に通う予定があるということで、東京から転校してきたそうな。

 で、今は親同士が知り合いという繋がりで、啓内の家に下宿しているという。


 久遠さんが隣のクラスにいることは知っていたけど、実際にこうして直接話すのは初めてだ。

 彼女も転校したてで、新しい生活に慣れる為に忙しかったらしく、今までは学校でも学校の外でも接点は無かった。


「どうも~、久遠理沙だよ。

 特技は、霊視と除霊。

 よろしくね!」


 ……うん?

 何か奇妙な発言があったような……?

 私は説明を求めるように、さくらちゃんとこぶしちゃんの方を見る。


「ああ、久遠ちゃんの実家、除霊師をやってるんだよ。

 うちの神社でも、ガチめのお祓いの依頼があった時は、お願いしているよ」


 マジで!?

 うちではお母さんが苦手なのか、心霊番組やホラー映画の(たぐ)いは絶対に見せてくれないから詳しくないけど、本当に霊とかいるのかなぁ……?


 私がそんなことを思っていると、久遠さんが私の顔をじっと見つめて、


「ふ~ん、君が綺美ちゃんね。

 あ、今のギャグじゃないよ。

 色々(・・)と話は聞いているけど、強力な守護霊がついているから、当面は問題無さそうだね。

 もしも霊関係で気になることがあったら、遠慮無く相談してね」


 なんか意味深なことを、言ってくるんですけど!?


「う……うん、よろしく……」


 私は引き()った笑顔で、そう答えるのがやっとだった。


 その後、福井さんがトイレから戻ってきて、私達の順番が回ってきたから、トイレを済ませる。

 何故か福井さんが終えたばかりのトイレについてこようとしたけど、まだ完全に混雑は解消されていないので待っていてもらうことにした。

 何故残念そうな顔をしているのか、よく分からない……。


 とにかく準備は整った。

 私と啓内姉妹、福井さんと久遠さんの5人で、スキー場の山に登ることにする。

 ……はあ、今すぐ帰りたい。


 ……ん? あれ?

 お母さん、後ろからついてくるの?

 最後尾から、脱落者が出ないか、見張る為?


 ふ……ふ~ん……。

 なんか嫌な予感がするのは気の所為だろうか……。

 久遠理沙は、ブログでやっている別作品の主役の妹です。

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