26 遠足に行こう
ブックマーク・☆でのポイントをありがとうございました!
「う~~~ん……」
今日はお腹が痛い──そういうことにしよう。
私は起床の時間になっても、布団にくるまっていた。
このまま嫌なことを忘れて、ずっと眠っていたい……。
しかし、それを許さない者がいる。
「綺美ちゃーん、起きてーっ!!
出発の準備をするわよーっ!!」
この騒がしいお母さんを無視して眠り続けることは、不可能なんだよなぁ……。
「……今日はお腹が痛いので、休みます」
「ふむ……綺美ちゃんは生理で休み……と。
みんなに言っておくね」
「セクハラはやめてっ!?」
そもそもお母さんは、私がまだなのを知っているでしょ!?
まだ生理用品を、用意してもらったこと無いもん。
「仮病で休もうとする、綺美ちゃんが悪いと思います!」
くっ……やはりバレているっ!
こういう時だけ甘やかしてくれないのは、親としてある意味では立派なんだけど、今日だけは見逃して欲しかった……。
「綺美ちゃ~ん、いくら運動が嫌いだからって、遠足まで休もうとするのは、どうかと思うよ?」
「ぐぬ……」
そう、今日は遠足なのだ。
進級したクラスがある程度落ち着いた頃にある、6年生最初の学校行事である。
この行事を通して、クラス内の結束を更に強めようという意図があるのだろう。
しかし運動が苦手な者にとって遠足は、長距離を歩くだけの苦行でしかないんだよなぁ~……。
しかも、ただ長距離を歩くだけではない。
「さあ、綺美ちゃん!
はやく準備しましょう!
山の上からの綺麗な風景が待っているわよ!」
──そう、我らが6年1~2組の遠足は、登山なのだ。
……私の足が、死ぬ予感しかしない……。
そんな訳で気が重いってレベルじゃ無い私なのだけど、一方でお母さんはウキウキしている。
遠足が楽しみで仕方が無い……って感じだ。
ホント、行事とか好きだよね、このひと……。
そういえばお母さんの出発の準備は、既に終わっているようだ。
時計を見ると、まだ6時なのに……。
いつ起床したんだろ?
「……お母さん、もしかして遠足が楽しみで、あまり眠れていないの……?」
「うんっ!」
「…………マジかぁ」
お母さんは良い笑顔で返事をするけど、引率の先生がそれで大丈夫なの?
なんだか、更に不安になってきたよ……。
結局、嫌々登校した私は、そこから目的地の麓まで、バスに乗って移動した。
遠足なのだから、適当なところまで歩けば良いのに。
その方が登山よりは、余っ程マシだと私は思う。
で、バスで移動するからには、目的地は近所ではない。
隣の県との境にあるスキー場だ。
私達の遠足は、この雪の無くなったスキー場のコースを登るのだという。
スキー場のコースは、樹木や岩などの障害物が無いので、子供でも登りやすいし、見晴らしも良いので遭難の危険性も少ない……ということらしい。
で、バスから降りて、スキー場の麓の広場に集合した私達に向かって、お母さんの説明が始まった。
「はーい、今日はこのスキーコースを登ります。
一見高い山で、頂上まで登るのは難しく感じるかもしれませんが、実際の標高は800m程度しかありません。
800m歩くと思えば、大したことないように思えるでしょ?」
いや、高低差!
マンションや学校の階段を上るだけでもそこそこ疲れるのに、その何十倍の高さとか、地獄でしかないよ……。
「まず、登り始める前にトイレは済ませておいてください。
基本的にコースから外れて、森の中に入るのは禁止なので、途中でトイレはできません。
頂上手前のロッジにもトイレはあるので、なるべくそこまで我慢してください。
2時間くらいで到着するので、そんなに難しくは無いと思います。
ただし、どうしても我慢できない場合は、先生の付き添いがあることを条件に許可しますので、申告するように。
まあ、汗を大量にかくので、おしっこはそんなに出ないと思いますけどね。
だからむしろ水分は、こまめに摂ってください」
トイレの問題も憂鬱だなぁ。
屋外でするのは論外だけど、ロッジのトイレは絶対に混雑するよ……。
「あ、許可を貰っているので、今日は男子トイレの個室も使って良いですよ」
げっ、なるべく男子トイレには入りたくないから、女子トイレの奪い合いになるじゃん……。
山に登る前から一波乱有りそうだよ……。




