24 百合ヶ島小の鉄拳
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あたしは登校する為に、鳥居の下をくぐって、階段を下りていく。
うちの家業が神社だから仕方がないけれど、この階段の上り下りは正直面倒臭い。
まあ、おかげで身体は、かなり鍛えられてはいるけれど。
ちなみに、あたしの名字の「啓内」も、神社の「境内」が由来らしい。
古くからこの土地で神職を営んでいたので、土地の住人達からは、結構敬われているとも聞く。
多少の問題も、もみ消せる程度には──。
実際、あたしが多少無茶をしても、「百合ヶ島小の鉄拳」という不名誉な異名が付く程度で済んでいるのは、家のおかげのようだ。
親にはちょっと申し訳ないと思うけど、大切なもんを守る為には必要な戦いだったので、これは仕方がない。
……うん、必要な犠牲だった。
だけど、親に甘えてばかりもいられないので、普段の素行には気をつけている。
そこで持参したレジ袋と、火バサミの出番だ。
登校の道すがら、ゴミ拾いをしていくのが日課となっている。
ただ、最近はレジ袋が有料になってしまい、手に入りにくくなっているのが、ちょっと問題ではあるが……。
これ……そのまま纏めてゴミを捨てられるから、便利なのになぁ……。
しかし毎日捨てていたら、ストックがすぐ底をつくので、最近は学校でゴミを捨てた後に、袋だけを持ち帰っている。
さすがに拾ったゴミをエコバックとかに入れて持ち歩きたくはないし、困ったものだよ。
それでもゴミを拾っていれば、出会う大人達に褒めてもらえるし、やめる訳にはいかないんだけどね。
あたしは、不名誉な異名を払拭する為には、努力を惜しまないのだ。
……あ、そこのお婆さん、その重そうな荷物、運ぶの手伝いますよ?
さて、お婆さんの手伝いは終わった。
いつも早めに家を出ているので、まだ時間はある。
引き続きゴミ拾いをしながら、通学路を進むことにしよう。
ただ、もう少ししたら、集団登校の児童が増えて邪魔になってくるから、その前に終わらせた方がいいな。
なお、あたしは、学校で推奨されている集団登校には参加していない。
ゴミ拾いができないし、あたしを怖がる子もいて、居心地が悪いしねぇ……。
「ん?」
コンビニと隣の建物の間にある狭い通路に、複数の人影が見えた。
あんな狭いところでたむろしている時点で、ちょっと怪しい。
こっそりと覗いてみると、女子1人を、3人の女子が取り囲んでいる。
あ~……、あれは別の学園の中学生だな。
そいつらが、うちの学園の中等部の子に何かしているようだ。
イジメか?
いや……これは脅して金を巻き上げる、いわゆるカツアゲというやつだ。
ふぅ……さすがに見て見ぬふりはできないか……。
「ちょっと、今すぐそのつまらないことをやめなきゃ、警察を呼ぶけど?」
「なんだぁ、このガキ?」
あたしの警告を、不良達は睨んで威嚇してきた。
普段着のあたしならまだしも、今は小学部の制服を着ているから、舐めてかかっているのだろうなぁ……。
こういう時は、分かりやすく警告しなきゃ駄目だろう。
「こうなりたくなければ、さっさと消えた方がいいよ?」
「あん?」
あたしは、ゴミ拾いで拾った、缶コーヒーのスチール缶を取り出す。
そしてその缶の上部を右手で、下部を左手で掴んだ。
これだけなら、上下から力を加えて、押しつぶす前の状態に見えるだろう。
だけど、そんなちょっと強い男の人ならできそうなことでは、大した脅しにはならない。
だからあたしは、そのスチール缶を思いっきり捻って、上下を切り離した。
つまり缶をねじ切った訳だ。
「ひいっ!?」
不良達は引き攣った顔で、後退った。
まあ、これができるのは、あたしも自分以外には知らないから、かなり驚いたのだろう。
そして──、
「こ、この怪力……!!
百合ヶ島小の鉄拳……!?」
うん。
彼女らはあたしの正体に気付いたようだ。
「なにぃ!?
あの高校の不良グループに、たった1人で勝ったという!?」
うん。
「ええっ!!
あの暴力団を潰したという、あの……!?」
いや、そこまではしていない。
できないとは言わないけど。
「分かったら、さっさと消えたら?
次、こんなことをしているのを見かけたら、あんた達も潰すよ?」
「ひいぃぃぃぃっ!!」
あたしに凄まれて、不良達は逃げ出した。
そして取り残された女の子だが……、全身を震わせて、怯えた顔であたしを見ている。
「……大丈夫?」
「ひうっ!」
……怖がられるのは慣れているけど、あまりいい気はしないんだよねぇ……。
でもまあ、大丈夫そうだから、放っておいてもいいか。
「ん、じゃああたしは行くから。
また変なのに捕まらないでよ?」
あたしは女の子に背を向けて、元の通学路に戻った。
それから、10mほど歩いた頃──。
「あ、あのっ!
ありがとうございましたっ!」
そんな声が聞こえてきた。
あたしは片手を上げて、「分かった」と合図しておく。
うん……お礼を言われるだけ、いつもよりマシかな。
このエピソードは次回に続きます。




