23 お母さんの本音
ブックマークありがとうございました。
「はいはい、ちゃんと靴を脱いでね~」
「あう~」
私は抱きついてきたお母さんを引き剥がして、靴を脱ぐように促す。
そのまま家に上がられると、後で掃除が大変なんだからね!
とにかくお母さんは、外でお酒を飲む時は本性を出さないように気を張っている所為か、家に辿り着くと気が抜けて、突然グデングデンになってしまうことが多い。
完全に泥酔状態だ。
当然、行動はいつもよりおかしくなる。
「綺美ちゃ~ん……」
私に抱きついていたお母さんは、突然両手の掌で私の頬を挟み込んだ。
え? まさか!?
私が嫌な予感を覚えたその時、
「チューッ!
しゅき~!」
と、お母さんは、強引にキスしてくる。
「わーっ!?
バカ、バカっ!!
やめろーっ!!」
「はい」
……え?
やめた?
なんで?
「……随分素直だね?」
「綺美ちゃんが本気で嫌がるようなことは、いたしません」
マジで?
「……でも、私が本気で拒まなかったら、その……キスするつもりだったんでしょ?」
「勿論です」
「……そういう素直さは、いらないかなぁ……」
「スミマセン」
嘘でも良いから、「違う」と言って欲しかった。
でも酔っ払っている所為か、お母さんはいつもよりも正直に本音を言っているようだ。
ある意味、通常よりも会話が成立しているような気さえする。
……この機会に、普段は聞けないようなことを、色々と聞いてみるか。
まずは小手調べに普通の質問。
「お母さん、好きな食べ物は?」
「綺美ちゃんです」
「違うよ!?」
違う、私食べ物違う。
普通の質問をしたはずなのに、いきなりぶっ飛んだ答えが出てきたなぁ……。
「じゃあ、へそくりの隠し場所は?」
「冷凍庫の奥の、ポリ袋に入れてます」
そんなところに……。
一応覚えておこう。
「他に隠している物は?」
「薄い本が本棚の奥に……」
薄い本?
なにそれ?
でも、深く聞いちゃいけないことのような気がするのは、何故なのだろう……。
さて、そろそろ本命の質問を聞いてみるか。
「ねえ……お母さんは、なんで私のことがそんなに好きなの?」
「綺美ちゃんは、恩人なので」
え? なに? どういうこと?
訳が分からないので、もう少し詳しく聞いてみる。
「それはどういう……?」
「お父さんが死んで、私が駄目になっていた時に、綺美ちゃんが助けてくれたのです。
確か『お父さんが心配しているから、元気を出して』……って、言ってくれて……」
え……私、そんなこと言ったの?
全然覚えていない……。
まあ、3才くらいの時だから、当然だけど……。
「そして更に綺美ちゃんは、お父さんが将来の為に貯めていた貯金や、生命保険など、私も知らなかった物の存在を教えてくれました。
……あれは本当に助かりました」
ふぁっ!? なんで私がそんなことを知ってるの!?
お父さんが、私にだけ教えていたってこと!?
でも幼児に何故そんなことを!?
「だけど私は、これは危ないな……と思いました。
だから私がしっかりして、綺美ちゃんのことを守ってあげなければいけな……いと…………眠い」
えっ、えっ、ちょっと待って!?
大事なところで寝ないでっ!?
一体どういうことなの!?
「あ~もう!
ここで寝られたら私じゃ運べないから、なんとか自力でベッドまで行ってよぉ!」
こうして肝心なところは、有耶無耶になってしまった。
しかも翌日のお母さんは二日酔いになっていて、昨日のことは聞くに聞けない空気になっていた。
……私の過去に、どんな秘密があったのだろう……?
「うぇぇ……綺美ちゃ~ん、頭が痛い~。
お水ちょうだ~い~」
「はいはい、今持って行くからぁ~!」
あ~もう、このお母さんの面倒を見ていたら、細かいことなんか気にしている暇が無いなぁ。
でも機会があったら、も1度詳しく聞いてみよう……。
家族が入院中の為、更新が不定期になる可能性もあります。ご了承ください。




