表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/91

21-5年生の恵

 ブックマークありがとうございました。

 私、紗藤恵(さとうけい)が小学5年生になった頃、生活自体には何も変化は無かったのだけど、私自身は何か違和感を覚えていた。

 私は……他の子達とは、何か違うんじゃないか──と。


 いや、これは中二病的なアレではなくて、そのなんというか……とにかく、当時はまだよく分かっていなかったんだ。

 ただ、恋愛には興味が無かったし、気になる男子もいなかった。

 友達とそういう話になっても、内心ではついていけなかったんだ。


 あの頃は女の子の友達と遊んでいた時が、1番楽しかったなぁ。

 例えば、鬼ごっこで私が鬼になった際には、捕まえた友達の身体に抱きついた時が至福だった。

 細いけど柔らかい身体の感触とか、なんかいい匂いとか、密着すると凄く幸せになれたんだよね。


 ただ、そんな自分に、やっぱり違和感を持っていたんだ。

 その違和感の正体がハッキリとした切っ掛けは、担任の先生だった。


 5年生から私達の担任を受け持つことになったのは、久城(くしろ)先生という、30代の眼鏡で痩せた体格の、普通の先生だった。

 なんだか真面目さだけが取り柄って感じの、何の面白みも無い──一見そうとしか思えない先生だった。


 そんな久城先生と学校の外で出会ったのは、5月の初め頃だっただろうか。

 ああ、ゴールデンウィークの頃だったから間違い無い。

 当時、隣の市に両親の友人がいて、連休を利用して泊まりがけで遊びにいっていたんだ。




 その時、街中をなんとなく探検していたら、何故か久城先生を見かけた。

 こんなところで何をしているのだろう?──そう思い、気まぐれで尾行してみる。

 すると先生は、大きな本屋さんに入っていった。


 どうやら先生は、本を買うようだ。

 こんな隣の市の本屋で?

 ふ~ん、これは怪しいですなぁ……。


 私達が住む百合ヶ島市にだって、大きな本屋くらいはある。

 わざわざ隣の市にまで、本を買いに来る必要はないはずだ。

 もしかして、先生……?


 ああ……予想通り、エッチな本のコーナーに行ってますねぇ。

 まあ、男の人としては仕方が無いのだろうけれど、先生としてはちょっと体裁が悪い買い物だから、隠すのも分かる。

 しかし、どんな本を買うつもりなのだろう?


 さすがに小学校の教師が、ロリ系だったら引くけど……。

 ん? あれは……レ●? 女の子同士のエッチな本?

 

 そ う い う の も あ る の か !


 この時になってようやく私は、感じ続けていた違和感の正体が分かったような気がした。


 それから私は、先生の後を追った。

 そして一応配慮して、人気の無い場所で声をかけることにする。

 昨今では大人の男性と子供が一緒にいるだけでも、通報されかねないからねぇ……。


「せ~んせぇ!」


「え……」


 突然声をかけられて、先生はギクリとした顔をしていた。

 私にはその理由が、手に取るように分かる。


「さ……紗藤さん……。

 どうしてここに……?」


「この町の知り合いのところに、遊びに来ていたんですよ。

 それで……散歩していたら、先生を見かけたので……」


「そう……なのですか……」


「本屋に入る前から、見ていましたよ♪」


「!?」

 

 私の言葉に、先生は一瞬目を見開いたが、すぐに顔から表情が無くなった。

 たぶん、必死で平静を取り繕うとしているのだろう。

 その証拠に、身体が少し震えている。


 人間って、本気で追い込まれるとこういう反応になるんだなぁ……。


「ねえ、先生……。

 さっき買った本を見せてよ」


「え……

 なんのことかな……」


「全部見ていたから、誤魔化しはきかないよ?」


「!」


 先生はまた焦った顔をした。

 そして、どうすればいいのか、迷っているようだ。

 そんな先生が出した答えは──、


「これは……未成年に見せたら駄目な決まりになっているから……」


 正直に話すことにしたようだ。


「ふ~ん、じゃあ今日のこと、みんなに話しちゃおうかなぁ」


 たぶん、本当に噂を広めたら、先生の立場は少なからず悪くなるだろう。

 私は男の人がそういう本を買うのは、そんなに変なことではないという話を聞いたことがあるので、偏見はそんなに無いと思う。

 

 でも、PTAとかは、凄くうるさいとも聞く。

 男の人と結婚したお母さん達が、男の人の習性に理解が無いというのも、不思議な話だねぇ……。

 ともかく、先生は凄く困ることになるだろう。


 でも、先生は──、


「それでも、駄目なものは駄目だ。

 これは子供達の為の決まりでもあるのだから」


 きっぱりと拒否した。

 私はこの時、この先生は信用できる人だと確信した。

 だから私も、正直に話すことにした。


「そっか……じゃあ、仕方が無いね。

 でも、ただの好奇心で、その本を見せて欲しいって言っているんじゃないんだよ?

 だって私、たぶん女の人が好きだから。

 だから、そういうのを知りたいと思ったの」


「え……!?」


 私の予想外の告白に、先生は酷く驚いた顔をした。

 完全にどう対応したらいいのか、分からないという顔だ。

 それでも──、


「えっと……この本は見せられないけど、その……相談には乗るから」


 真摯に私の問題に向き合ってくれた。

 地震のあった地域の方々は大丈夫だったのでしょうか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ