18-青春時代と現在の恋
ブックマークありがとうございました。
私──倉守ゆりには、中学生の頃に恋人がいた。
いや、恋人のような人だったというのが、正しいのかもしれない。
お互いがどういう関係なのか、それを実際に確認したことは無い。
ただ自然に恋人のような雰囲気になったから、そのように接していただけで、彼女──紗藤恵がどこまで本気だったのかは分からないのだ。
一応キスまでしているので、遊び半分だったとは思いたくないんだけどねぇ……。
ただ、先輩だった彼女が卒業して高校生になってしまうと、私との接点も少なくなり、自然消滅的に私達の関係は終わってしまった。
しかもその先輩は、高校卒業と同時に、高校の先生だった人と結婚してしまった。
同性の私とキスまでしておきながら、男の人と結婚するって、どういうことなの?
──当時の私は、大いに混乱したものだ。
結局、彼女にとっての本命は男性で、私との関係は気まぐれだったのではないか……とも。
まあ、後日に本人に確認したら、あの結婚自体が彼女にとってもイレギュラーなことだったらしいけどね。
むしろ自分が男性を好きになれるとは、旦那さんと出会うまでは思ってもいなかったし、彼と出会わなければ生涯独身も覚悟していたそうだ。
ともかく、私にとってはちょっと複雑なところがある彼女の結婚生活は、思わぬ不幸に見舞われて、5年程度で終わることになった。
そして独りで大変な想いをしている彼女を見かねて、色々と助けた結果、疎遠になっていた関係も少しは修復されたが、今更恋人のような関係に戻れるとは、もう思ってはいない。
あの恋は、既に終わってしまったことなのだ。
青春の思い出になってしまっている。
それに彼女は、新しい恋に生きていた。
「……でね、その時の綺美ちゃんがねぇ、可愛いのよぉ」
事実、今私の目の前で、実の娘との惚気話を、延々としいるのだから。
その顔はだらしなく緩み、この新しい恋にすっかり夢中のようだ。
昔は何処か超然としていて格好良かったのに、どうしてこうなった!?
というか、近親相姦のロリコンって業が深すぎる……。
「あ~先輩、いきなり喫茶店に呼び出して何かと思ったら、綺美ちゃんの話をする為だけに呼んだんですかね?」
「あ、ううん。
今晩、新任の先生の歓迎会があってね、始まるのが中途半端な時間だから、一旦家に帰るほどでもないし、会場の近くで時間を潰そうかと思って」
「つまり、歓迎会の時間までの、暇つぶしの相手をしろ……と」
なんだか、年々傍若無人に拍車がかかっていくような気がするな、この人……。
いや、昔からそういう所はあったのに、猫を被っていただけなのかもしれない。
しかしこの先輩、
「ええ、今週は暇でしょ?
それに、夕食がわりに軽食を奢ってあげるから、いいでしょ?」
作家業をしている私の締め切りを、何故か把握しているから侮れない。
それに、奢ってもらえるのがありがたいのも、事実だしねぇ……。
私はあまり自炊をしないから、先輩の奢りや、綺美ちゃんからの差し入れでかなり助かっているので、あまり逆らえないのだ。
「じゃあ……綺美ちゃんは独りで家に?」
「そうね、さくらちゃんと遊びに行くって言っていたから、まだ家には帰っていないと思うけど、夕食は独りで食べることになるわね。
綺美ちゃんが寂しい思いをしないように、ゆりも一緒に食べる?」
「いえ……今食べているパスタで十分なので。
まあ、後で様子は見に行きますけど……」
「そう、ありがとうね」
いや、抜け目のない先輩のことだもの。
最初からそのつもりだったんでしよ?
まあ、私も綺美ちゃんを独りでお留守番させるのは心配だから、全然いいんだけどさ。
ともかくそれから30分ほど、先輩の綺美ちゃんトークに付き合わされたが、彼女は時間が来たから……と、歓迎会の会場へ向かった。
「それじゃあ、またね」
「はい、ごちそうさまでした」
喫茶店に独りで残された私だが、折角久しぶりに外出したので、まだ帰る気にもならない。
ついでだから、ここで次の話のアイデアをまとめようか。
私は自宅で仕事を全部することが多いけど、喫茶店やファミレスでネームを切る漫画家も多いと聞く。
ゲームとか趣味のアイテムが沢山ある自宅だと、集中できないのだろうな。
私は逆に、そういう趣味の物に触れていないと、インスピレーションがわかないから、自宅が1番いいけど、たまにはこういうのもいい。
そんな訳で、ぼ~っと外を眺めながら考え事をしていた。
傍目には全く動かないので、目を開けたまま眠っているように見えるかもしれないが、アイデアをまとめる時にはよくあることだ。
たまに立ったまま、この状態に入ることすらある。
それからどれくらい時間が、経ったのだろうか。
目の前に、見慣れた姿が通り過ぎる。
「さくらちゃん!?」
姪っ子のさくらが、喫茶店の前を歩いていた。
綺美ちゃんと遊びに行っていたらしいので、たぶんその帰りだろう。
私ははすぐさま、スマホで彼女に連絡を取り、この喫茶店へと呼び込むことにする。
はっはっは、可愛い姪っ子に、ケーキでもなんでもおごっちゃうぞ~!
そう、先輩との恋は終わった。
なぜならば先輩だけではなく、私も新たな恋に生きているから。
『近親相姦のロリコンって業が深すぎる』
……「ブーメラン」って声が脳内に響いたような気がしたけど、気にしないことにする。
久しぶりにpixivで漫画版を更新しました。
https://www.pixiv.net/artworks/87240798
下着を描きたかっただけともいう。




