17-閑話 協力者(騙された人)
ブックマークありがとうございました。
なお、今回はちょっと短めです。
私は壬山香織。
6年2組の担任だ。
今日は1組と合同で体育の授業があるのだが、その直前に1組の担任である珠戸先生が1つの提案を持ちかけてきた。
「あの……壬山先生?
体育の後の片付けは、私に任せてもらえませんか?」
「……?
後片付けは、双方のクラスの体育委員が行うはずですが……?」
私がそう指摘すると、珠戸先生は少し後ろ暗いところがある様子で、私から視線を逸らしながら白状する。
「え……と、先生には正直に告白しますが、1組の委員長は私の娘で、その娘と一緒に作業をしたいなぁ……と。
仕事でなかなか構ってやれなかったもので、二人の時間を作ってあげたいのです」
「へぇ~……娘さんと……。
……って、娘っ!?」
珠戸先生の言葉に、私は驚愕した。
「はっ!?
珠戸先生って、結婚していたんですか!?」
「ええ……今は独身ですが……」
「あっ……それは立ち入ったことを……」
これは意外だった。
てっきり26才の私と同い年くらいだと思っていたので、小学生の娘さんがいるとは思ってもいなかったのだ。
もしかして30才を過ぎているのか?
えぇ……全然見えない……。
それとも、16才くらいで娘さんを産んだのだろうか……?
「しかも6年生の娘さんって、随分と大きいですね……」
「はは……大きい……って言っても、身体は小さいんですけどね。
いたでしょ? 1番小さい子」
「ああ……あの……」
確かに、1組には飛び抜けて背の低い子がいた。
さすがに「ちゃんと食べさせてます?」と聞くのは失礼だな。
それに「あまり似ていないですね」というのも……。
今は独身だというから、何か複雑な事情があって、血の繋がりが無いということもあったりするのだろうか?
旦那さんの前妻の連れ子を引き取っている……とか。
それとも父親に似ただけ?
だとしても、現在は旦那さんが離婚か死去でいないってことなんだよね?
うん……、これも直接聞けないな……。
とにかく、シングルマザーで子育てをしているのなら、色々と大変なこともあるのだろう。
だから子供と一緒の時間を作るのも、なかなか難しいのかもしれなぃなぁ……。
「……なるほど、わかりました。
そういうことなら、お任せしましょう」
「わぁ、ありがとうございます、壬山先生」
と、屈託無く笑う珠戸先生。
子供との時間が持てて、本当に嬉しそうだ。
こんな娘思いの母親が持てて、娘さんも幸せだな。
その後、珠戸先生の娘さんを廊下でみかけた時、
「この前の体育の後は、お母さんと一緒の時間が持てて良かったな!」
と呼びかけたら、凄く微妙な顔をされた。
「…………はぁ~」
凄い溜め息も吐かれた。
「あれっ!?」
……娘さん的には、不本意な部分があったのだろうか……?
色々と親子関係が、複雑なのかなぁ……。
むぅ……教師の私が言うのもなんだけど、子育てってやっぱり難しいのだろうな……。
私はまだ先の話だけど、ちょっと不安になってくるよ……。
一方──。
「お母さん、2組の先生を騙したよね?
今後、そういうの禁止」
「え~?」
そんないつもの日常だった。
次回から新しいエピソードに入ります。




