16-体育用具室で
ブックマーク、ありがとうございました。
体育用具室で二人きりって、漫画とかではこの後に閉じ込められる展開になるよね。
そして私達も今、実質的にそんな状態なんだけど、鍵をかけたのはお母さんだ。
……なんで体育用具室の鍵が、内側からかけられるようになっているの!?
「大丈夫よ。
悪用できないように、専用の鍵が必要だから」
お母さんはそう言うけど、今がまさに悪用されている状態だと思うのですが!?
というか、この鍵を私的に設置したのはお母さんだよね?
また校長先生に無茶を言ったんだと思うけど、学校施設の私物化はいけないと思います!
まあそれよりも、跳び箱の上に座った教師に、女児が抱きしめられている今の状態の方が、余っ程問題ではあるのだけどね……。
「いつも私のエネルギー補給に付き合わせちゃって、悪いわね綺美ちゃん……」
ホントだよ!
「まあ……こうしないとお母さんが仕事にならないって言うのなら、仕方がないけど……。
でも、今晩のお母さんの夕食は、おかず抜きね。
ふりかけで食べて」
「えっ、なんで!?」
お母さんは訳が分からないって顔をしているけど、それならばその罪をしっかりと追及してやろう。
なんで私にあんなTシャツを着せたのか?──ということについて、とことん……ね。
「あ~、そのことかぁ!」
私が怒っている理由を聞いて、お母さんは納得したのか、ホッとした顔をする。
「あれは昔、冗談で綺美ちゃんに着せてみたら、全く嫌がらなかったから、こういうのが好きなのかと思って……。
実際、今まで文句1つ言われたことは無かったし……」
「だからなんでみんな、私がアレのことを好きだって言うの!?
ファッションにこだわりが無いから、あるものを着ていただけだよ!?」
「そっかぁ~、ゴメンね。
……でもこだわりがないって、それも女の子としてはどうなの?
じゃあ、あのTシャツ達は捨てて、今度もっと可愛いのを買いに行こうか?」
「別にいいよ、勿体ない。
着られる内は着るから」
正直、興味が無い服とかを買うのは、面倒臭いし。
それよりも新しい調理器具や調味料か、サボテンの鉢植えが欲しい。
大体、もうすぐ身長も伸びてサイズも合わなくなるだろうから、あれらのTシャツも自然と着られなくなると思う。
……着られなくなるよね?
中学生になってもまだ着ているというのは、さすがに嫌だ……。
「ふふっ、綺美ちゃんのそういう物を大切にするところ、だ~い好き」
「ハイハイ。
給食が口から出ちゃうから、強く抱きしめないでよ」
「あと、運動した後の綺美ちゃんの、汗の匂いも好き」
いきなり変態発言しないで!?
「惜しむらくは体育なのに、綺美ちゃんのブルマ姿が見られないことねぇ……」
「……ブルマ?」
よく知らない単語が出てきた。
だが、お母さんの口から出てきたくらいだから、たぶんロクでもない物だろう。
「昔の体操服よ。
ほら、今でも女子陸上の選手とかが、似たようなのを穿いているじゃない?」
「ああ……あれか……。
って、ほぼパンツじゃん!?
あんなの無理、無理!」
スポーツ選手は、機能性とかを重視して穿いているのだろうけれど、さすがに私は恥ずかしいよ。
そもそも運動をしたくない勢の私としては、体操服自体があまり着たくない。
「というか、お母さんも昔はあんなのを穿いていたの……?」
「いや、私の時代でも既に絶滅しかけていたわよ?
現役で穿いていたのは、お祖母ちゃんの世代じゃないかしら?」
「そんな古いの、私に穿かせようとしないで!?」
「でも、今でも浴衣とかを着るみたいに、古き良き伝統文化というか……ね?
だから校長先生へ、学校指定の体操着にブルマを復活させないか?──って、働きかけたこともあるのよ?
校長先生には却下されちゃったけど……」
なにしてくれてるの、この母!?
そして校長先生、GJ!
「よし、お母さん。
今度、校長先生へ謝りに行こう
私も一緒に行って、謝ってあげるから」
「え……?
どうして?」
「どうしても!」
もうお母さんは野放しにしていたら危ない。
校長先生には謝るついでに、あまりお母さんの言うことは聞かないように、お願いしておこう。
そしてそれでもお母さんが暴走するようなら、私が自らが止めるしかない。
いざという時は事前に連絡してもらえるような、校長室とのホットラインを構築しないと……!!。
はぁ……、ホント世話の焼ける母だよ……。




