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15-体育とTシャツ

 ブックマーク・☆でのポイントありがとうございました!

「はーい!

 今日は1組と2組の合同で、ドッジボールをしまーす!」


 お母さんの号令を受けて、クラスごとに整列する。

 委員長である私は、級友達を整列させる役目がある。

 正直、面倒臭い。


 だけど、それ以上に面倒臭いのは、体育の授業そのものだ。

 ハッキリ言って、私には運動神経が無い。

 お母さんは運動神経がいいのに、娘の私がこれって、一体どういうことだよ!?


 ……身長や胸といい、遺伝子が仕事をしてくれない……。


 とにかく運動が苦手な私にとって、体育は学校生活の中で、お母さん関係を除けば最も憂鬱な時間だった。

 しかし一方で、テンションが上がっている人もいた。


啓内(けいだい)さんっ!

『百合ヶ島の鉄拳』と名高いあなたに、勝負を挑みますわ!」


 丹治易(にじい)さんが無謀な挑戦をしている……。

 そもそも、ドッジボールはチーム戦だから、個人対個人の勝負は成立するのだろうか?

 そんなことをぼんやりと考えていたら……、


 あ、丹治易さんの顔面にボールが直撃した。

 早速討ち取られてしまったか……。

 いや、顔面セーフだから、まだ勝負はついて──


 って、ちょっ!?

 私の方にボールが跳ね返ってきて、あっ──、


「はうっ!?」


 慌てて避けようとしたけど、ボスッという衝撃が背中に来た。

 ワンクッションを挟んだ割には、重い球だったよ……。

 うん、めっちゃ痛い。


「か……はっ。

 ──ちゃんの、怪……力め……!」


 私は思わずうずくまる。


「きみ──珠戸(たまこ)さんっ、大丈夫!?」


 お母さんが大慌てで駆け寄ってきた。

 そりゃあ、「百合ヶ島の鉄拳」が投げたボールの直撃を受けたのなら、心配するか。

 威力が普通じゃないしね。

 ……私よりも、顔面にボールが直撃した丹治易さんの方はいいの?


「さすがですわね!

 でも、勝負はまだこれからですわよっ!!」


 あ……大丈夫そうだ。

 強い。

 まあ私も、他人の心配をする余裕があるくらいだから、問題は無いだろう。

 というか、「鉄拳」の本気だったら、丹治易さんも病院送りだっただろうし、さすがに手加減はしていたと思う。

 あと、さすがに顔面は狙っていないはずだから、単純ミスだろう。


「まぁ……大丈夫……だと思います」


「そう……でも念の為に少し休む?」


「あ~……そうですね」


 渡りに船ですね。

 わ~い、合法的にサボれる。


「珠子さん、大丈夫?

 私、手伝いますね」


「うん、ありがとう」


 福井さんが肩を貸してくれた。

 そこまでのダメージじゃないので、ちょっと後ろめたいけれど、福井さんの親切心はありがたい。

 でも彼女こそ呼吸が荒いけど、そっちの方が大丈夫なの?




 体育の授業が終わって、私達は更衣室で着替えをしている。

 福井さんは、まだ呼吸が荒いけど、本当に大丈夫なのかなぁ?

 なんだか顔も赤いけど……。


「はぁ……はぁ。

 珠戸さんの……着替え……」


 よく聞こえないけど、なんだかブツブツ言っているし……。


 ともかく、憂鬱だった体育が終わって、ホッと一息付けた。


「はぁ~疲れた……」


「綺美は半分休んでいたし、復帰しても外野で立っていただけだろ?」


 さくらちゃんはそう言うけど、好きでもない授業は、精神的に消耗するんだよ……。

 というか、さくらちゃんの胸がまた大きくなってない!?

 私には必要の無いブラジャーをしているだけでも凄いのに、更に大きくなるとか……!


 ギギギギ……!

 そのお肉、余っているのなら、私にも分けて欲しい。

 そんな風に、私が内心で苦悶していると……、


「委員長、まだ着替えが終わっていませんの?

 私は30秒で、終わりましたわよ!!」


「いや……勝負をするようなことでもないので……」

 

 丹治易さんが、また絡んできた。

 30秒……って、●ピュタの空賊じゃないんだから、そんなので支度(したく)はできないよ。

 私はゆっくりと着替えるからね。


 そんな風にノロノロと着替えを続けている私に、丹治易さんはとんでもないことを言い出した。


「あら……?

 委員長、奇天烈なデザインのTシャツを着ていますわね?」


「あっ!」


「え?」


 何故か私よりも先に、さくらちゃんが反応した。

 そして私がさくらちゃんの方を見ると、目を逸らすし……。


「……何今の『タブーに触れちゃったよ、こいつ……』みたいな反応?」


「いやぁ……実はあたしも変だとは思っていたんだけど、綺美が好きで着ているのなら、そっとしておいてやろうと……」


 と、なんだか私を哀れんでいるかのような反応の、さくらちゃん。


「好きじゃないよ!?

 お母さんが買ってきたから、着ているだけで!!」


 心外である。

 確かに私は「鯖」とか「惰性」とか、変な漢字がプリントされたTシャツをよく着ているけど、これらのシャツは私の好みのデザインだという訳ではなく、お母さんが買ってきた物をなんとなく着ているだけに過ぎない。

 特にこだわりがある訳でもないので、着るのを拒否していないだけだ。


「わ、私は可愛いと思いますよ!」 


「あ、うん……ありがとう」


 福井さんがフォローしてくれたけど、今言われてもちょっと複雑かな……。


「……ということは、それは先生の趣味なの?」


 と、頭映(かしらば)さん。


「いや……お母さんがこういうのを着ているのは、見たことがないけど……?」


「では……先生の趣味でもない……と。

 それなのに、わざわざそんな珍妙なデザインの物を買ってくるということは……。

 委員長、先生におかしな格好をさせられて、遊ばれているのではなくて?」


「えぇ~っ!?

 ……その辺で売っていた物を、テキトーに買ってきただけでは……?」


「いや……そんな漢字を知らない外国人向けのお土産みたいなデザインのシャツは、その辺には売っていないよ。

 絶対にそういう物を取り扱っている店とかで、あえて選んで買ってる」


「そ……そんな」

 

 丹治易さんとさくらちゃんの指摘に、私は衝撃を受けた。

 でも信じられない。

 あの私を溺愛しているお母さんが、私を(おとしい)れるようなことをする?


 でも……お母さんの感覚はおかしいから、何処かこじらせた愛情によって、こんなことをやらかした可能性があるかも……。

 世の中には、好きな子の困った顔を見たいという人もいるらしいし……。


 だけど、そんな私を裏切るような真似をお母さんがした……とは、思いたくはないんだよなぁ……。


 その時──、


「委員長~」


 お母さんが入り口から顔を出した。

 着替えを覗かないでよっ!!


 だけど──、


「よし、いいタイミングだ……!」


「ちょっと手伝っ──え、なに?」


 どうせお母さんの充電タイムだろうから、二人っきりになった時に色々と問い詰めよう。

 何か様子のおかしい私に、お母さんはたじろいだようだったけど、手加減するつもりなんかないんだからね!

 漫画版を追い越した件。

 そして、そろそろストックが尽きそうだ……。そうなったら、更新頻度はどうしようかな……。

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