14-閑話 蝶胡の夢
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私は福井蝶胡。
今日から6年1組です。
ここは女子ばかりの特別編成のクラスなので、今までとはちょっと勝手が違うと思います。
粗雑な男子がいないのは良いのですが、クラスメイトには知らない人も多くて、ただでさえ人見知りが激しい私が、上手くやっていけるのか心配です。
そんな不安で一杯の私でしたが、その不安を一気に吹き飛ばすような出会いがありました。
それは担任の珠戸先生です。
美人で仕事ができる女性って感じがして、憧れてしまいます。
是非ともお近づきになりたいです!
「素敵……お姉様って呼びたい」
ハッ、つい口から出てしまいました。
誰かに聞かれていませんよね?
恥ずかしい!
でも、どうしましょう……。
人見知りの私は、クラスメイトへ話しかけるのにも苦労するのに、大人の人に話しかけるなんて、ハードルが高すぎます。
無理です。
死にます!
……そこで思いついたのが、先生の娘さんです。
偶然同じクラスにいるので、お近づきになることができれば、必然的に先生との接点も増えるのではないでしょうか?
利用する──と言えば少し言葉は悪いですが、これはいい案だと思います。
だけど先生よりもハードルは低いとはいえ、親しくもない娘さんに、用も無いのに話しかけるのも難しいですね……。
どうすればいいのでしょう……。
何か切っ掛けでも、あればいいのですが……。
「それでは珠子さんは前に出てきて、まだ決まっていない副委員長の選出をしてもらいましょうか」
「!」
ああ、そうだ。
私が副委員長になれば、娘さんは勿論、先生との接点も増えますね。
でも……私に副委員長なんて、できるのでしょうか?
人前に立つなんてことは、かなりの抵抗感があります。
しかし……副委員長の仕事は、委員長の補佐で実質的には書記です。
娘さんが学校を休んだ時は代理をしなければなりませんが、それ以外の時はあまり人前で話すようなことは無いはず……。
それならば、ギリギリ我慢できるかもしれません。
どうしましょう……。
正直言って、やらなくてもいいのならば、やりたくないのですが……。
だけどこのまま先生達との接点が殆ど無いまま、この学校を卒業してしまうようなことになったら、それはこの1年間の使い方としては、凄く勿体ないような気がします。
「副委員長に立候補する人は、いませんかー?」
「!」
てっ、手を上げなきゃ!
でも、立候補しようにも、凄く心臓がドキドキしていす。
あまりに激しい鼓動を聞いていると、突然止まってしまいそうで怖いです。
手もプルプルと震えて、上手く上がらないぃ!
が、頑張れ私!
「わ……私、副委員長やります……」
「! では、福井さん、お願いします」
おお……娘さんが、凄く助かった……って顔をしていますね。
やっぱり立候補して良かった。
というか、もう私の名前を把握している!?
さっきの自己紹介だけで?
凄い……。
私は娘さんの後ろの方の席だから、顔はよく見えなかったはずなのに……!
「それでは、福井さんは教壇までどうぞ」
「あ……はい!」
私は教壇へ向かった。
すると、クラスメイト達の視線が集中して、早くも後悔が襲ってきます。
でも、教壇で娘さんの隣に並ぶと、そんな後悔もすぐに吹き飛びました。
はわわ……そんなに背が高くない私と比べても、凄くちっちゃいです……。
3歳くらい年下に見えるかも……。
なんというか……これは可愛いですねぇ。
「あ……あの、よろしくお願いします」
「うん、よろしくね、福井さん」
私の挨拶に、娘さんは笑顔で応えてくれた。
その笑顔のなんと愛らしいこと!
なんだか、心臓が跳ね上がったような気がしますよ!?
こ……これは、先生も娘さんも素敵すぎて、どちらか一方を選ぶなんてできません!
可能なら母娘共々親しくなって、それから……それからぁ……!!
ああ……なんだか呼吸が荒くなるのを、抑えられませんね。
娘さんから不審に思われるので、なんとか落ち着け私!
はああ……これは幸せな1年になる予感です。
でも、この心の底から溢れ出る気持ちを、一体どうすればいいのでしょう?
なんだか先生達とこれからやりたいことが、次から次へと思い浮かんで止まりません!
取りあえず家に帰ったら、ノートに書き出してみましょうかねぇ……。
数年後、「母娘丼」という概念を知って身悶えることになる福井蝶胡であったが、更に数年後、母娘百合ジャンルで知る人ぞ知る同人作家「柚津小蝶」として活躍することになるのは、別のお話である。
実は「7-タイトル回収」から台詞があった蝶胡の話でした。「9-クラス委員の選出」で、蝶胡が副委員長に立候補した真相がこれです。最初は漫画版の背景にいるただのモブだったのに、どうしてこうなった……。




