12-密室で
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私はお母さんに連れられて、理科準備室に来ていた。
あれ? なんでいきなり出入り口に鍵をかけているのかな、お母さん?
そして何をするのかと思いきや、椅子に座ったお母さんは私を膝の上に載せて、抱きしめている。
「どういうことなの……」
何故に学校の中で、教師に抱きしめられなければならないのか。
全く訳が分からない。
これ、誰かに見られたら、完全に事案だよ!
「お母さん、この状況について説明を」
「あ~、綺美ちゃん分が切れちゃったので」
意味が分からないことを、端的に言わないでほしい。
「私に理解できるように」
「つまり、仕事で疲れて気力が尽きたから、綺美ちゃんと触れ合ってモチベーションを回復させているの」
「ええぇ……今まで学校でそん風になったこと無いでしょ……。
なんでそんなことになっているの……?」
実際、お母さんはこの学校で3年ほど働いているけど、今までは私に接触してくることなんて、殆ど無かった。
ということは、私がいなくても問題無かったということだ。
「う~ん、やっぱり初めての担任で、色々と気を遣うことも多いからかな……。
昨日もちょっと大変だったし……」
いや、昨日のは、口を滑らせたお母さんの自業自得だけどね?
でもそうか……やっぱり仕事が大変なんだね。
……って!?
「まさかこういう機会を作りやすくする為に、私を委員長にしたの!?」
事実、私は委員長だからこそ、ここに連れ込まれている訳だし……。
もしも私が何の役職も持たない一児童だったら、お母さんは私にだけ手伝いをさせる理由が無くなる。
だって手伝うだけならば別に私ではなく、他のクラスメイトだっていいはずだもの。
だからお母さんは、私に委員長という特別な役職を与えて、連れ出しやすくしたのだろう。
そしてお母さんは、そんな私の指摘を認めはしなかったが──、
「えへ~」
「笑って誤魔化さないでよ!!
こんなの職権濫用だよっ!!」
しかもいい大人が「えへ~」って……。
微妙にイラッとする。
呆れるどころの話じゃないよ……。
「大体……私と違うクラスになっていたら、どうするつもりだったさ……。
初日からそんな調子じゃ、修学旅行で数日離ればなれになったりしたら、耐えられなかったでしょ……」
「うん、死ねる自信がある」
自信満々で認めないで!
ホント……私抜きで、生きていけるのかな、この母……。
その辺は凄く心配なポイントだけど、だからこそお母さんは、可能な限り私と離ればなれにならないように、対策を講じていたらしい。
「だけど、大丈夫よ。
綺美ちゃんのクラスの担任になれるように、校長先生にお願いしておいたからね」
「は? そんな一教師のワガママが通用する訳ないでしょ?」
「でも、実際に同じクラスになっているでしょ?
何故ならば、校長先生は私が小5の頃の担任でねぇ……。
うふふふふふ……」
と、意味ありげにお母さんは笑う。
なに? どういうこと!?
校長先生と昔からの知り合い!?
「まさかっ、校長先生の弱味でも握っているの!?
やめてよね、表沙汰になったらネットで炎上するようなこととかっ!!」
教師が校長を脅して職権濫用とか、シャレにならないよ……。
でもお母さんは白を切る。
「やあねぇ、普通にお願いしただけよ?」
「信じられない……」
お母さんの普通は普通じゃないからね?
とにかく、一体校長先生に何をしたんだか……。
あれ? そういえば、以前校長先生と廊下ですれ違った時──、
「あなたは……珠戸先生の娘さん?」
「え?
……はい」
突然校長先生に呼び止められた。
校長先生は口ひげを生やしたお爺ちゃんだ。
私は父方の祖父を既に亡くしているし、母方の方とは付き合いが薄いので、あまり馴染みの無い年齢層の人だと言える。
だからちょっと困惑している私に、校長先生は更に困惑するようなことを言った。
「色々と大変なことがあると思うけど、頑張るんだよ。
何かあったら、相談に乗るからね?」
「は……はあ?」
突然そんなことを言われても、どうすれば良かったのかなんて、私には分からなかった。
ただ、曖昧な返事をするしかなかった。
……あ~、その時は全く意味が分からなかったけれど、今にして思うと、校長先生はお母さんの正体を知っていたのだろうな。
そして、今の私が置かれている状況を予想して、心配してくれたという訳か。
あるいは、お母さんに振り回される者同士の、同情の念もあったのかもしれない。
はあ……お母さんってば、一体校長先生にどれだけ迷惑をかけているのだろう?
「ん? なあに?」
「いや……なんでもない……」
私はお母さんをじと目で睨みつつ思う。
今度校長先生に謝っておこう──と。
……ところでお母さん、そろそろ抱きしめるの終わってくれない?
もう15分くらいこうしているんだけど?
え? まだ? ええぇ……。
結局母が何分で満足したのかは、前回のラストで察することができるかと。
なお、祖父母の設定が変更になったので、ちょっと修正しております。
あと、近々異世界転生でTS百合物の新作を始めようかと思っています。




