表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】苛烈な聖女様 ~聖女召喚?!これは拐かしだし、其方達は全員罪人じゃ!!~  作者: 千椛
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/128

七十四話

「隣国より、支援物資が到着しました!」


 デラノ・エジャートンが、オルドリッジの執務室に報告に来た。


「直ぐに中身の確認を。問題なければ、予定通り半分は第二倉庫に、残り半分は食料支援・要請一覧の上位五領地への搬送準備にかかるように」


 既に何処にどれだけ食料を送るかは、決まっている為、エジャートンは頷くと、直ぐに手配へと向かう。


「思ったよりも早かったの。もう三、四日はかかると思っておったが。では、妾も支度をしに参るか。久しぶりにあの者たちの顔が見れるのも、楽しみじゃて」


 先日、ウィリアムやオルドリッジが補佐官達を交えて行った会議の場で、食料支援一覧の一番上にクラッチフルードの名を見つけた香菜姫は、自ら運搬係を買って出ていた。


「どうせ信長殿の所へ行くのじゃ。ちぃとばかり寄り道したとて、大して変わらぬ」


 そう言って笑うが実際は、王都ウィルソルからロウェイ王国の王都リスカンは南東にあり、クラッチフルードは北東に位置するため、少しの寄り道とは到底言えない距離だ。しかしウィリアムやオルドリッジはその事には触れず、「ではお願いします」と言うだけに留めた。


 残り四領地は、どれもが比較的王都から近い場所であるため、討伐隊が討伐・浄化も兼ねて運ぶことになっている。その際、少しでも荷物を減らせるよう、マジックボックス持ちの魔術師は今、引く手数多の状態で、非常に忙しい思いをしていたからだ。

 香菜姫も自身の不思議収納箱に、食料を入れられるだけ入れて持っていく予定にしていた。


「それはそうと、ウィリアムは戦の準備をするよう、ビートンに命じたというではないか。そちらの協力は、隣国には要請せぬのか?」


 現在組まれている討伐予定が済み次第、魔獣の討伐・浄化に関しては、バーリー達討伐部隊に一任し、ビートンには騎士隊を中心として戦の準備にかかるよう、命を下したばかりだ。


「勇者殿達は、受けて下さると思われますか?」


「そうじゃの。妾同様、召喚の原因を作った者達に、酷く腹を立てておるゆえ、可能性は高いであろうの。じゃが、もし頼むつもりでおるなら、ウィリアム、そち自らが出向いたほうが良かろう」


 ウィリアムは頷く。


「その時は、同行をお願いしても?」


「心配せずとも、それくらいの事ならば、してやろうぞ」


 今この時期に国王が城を空けるのは、極力避けたい為、短期間での往復を可能とする姫の協力は、有難かった。


「ならばそちの訪問を伝え、あちらの都合も聞いておいてやろう。さすれば戻った後直ぐに、日取りを決められよう」



  **



「なんと、意外と入ったの」


 手元の箱を見ながら、香菜姫は感心したように呟いた。クラッチフルードへと運ぶ荷の全てが、姫の『不思議収納箱』に収まったのだ。


「入らなんだら、周王の背に積まねばならぬと思うておったが、要らぬ心配じゃったな」


 その横では周王が、あからさまにホッとした顔をしている。


「では、今回の同行は、クラレンス翁とガレリア、そしてベックウィズという事でよろしいでしょうか?」


 荷物の積み込みをも監督しているデラノが、香菜姫に確認を取る。物資の振り分け等で忙しいため、今回デラノは城に残る事になり、代わりにベックウィズが同行する事が決まっていた。戴冠式後の宴以降も、幾度か会議の場で顔を合わせている為、問題はない。

 サイモンも同行を願っていたのだか、討伐メンバーとしての遠征がすでに決まっていたため、泣く泣くあきらめていた。


「必ず買ってこいと、言われました」


 呆れたようにガレリアが言うのは、狐の耳付き兜のことだ。


「あれは、子供用の玩具だと聞いておるぞ」


「それでも欲しいんですよ、兄は」


 サイモンから預けられた、金の入った袋を振ってみせた。デカデカと『狐の兜代・サイモン』と書かれている。


「まるで子供じゃの」


「子供なんです」



  ***



 クラッチフルード領において、香菜姫達は到着直後から、大変な歓迎を受けていた。

 領主屋敷の前へと向う周王や華王が、地に足を着ける前から、人々が集まり、皆、一行に手を振りながら、口々に感謝や歓迎の言葉を掛けてくる。


「「ようこそ、聖女様!」」


「「聖獣樣!」」


「「この度も、ありがとうございます!」」



 領主屋敷前には、既に領主であるダリル・クラッチフルードや兵達が列を作り、待機していた。後ろの方では奥方や、嬉しげに手を振る子息ダルトンの姿も見える。


「ようこそ、お出で下さいました」


「久方ぶりじゃな。皆、息災にしておったか?」


「お陰様で、なんとか」


 頭を下げる領主は、前に会ったときよりも顔色も良く、少しだが肉付きも良くなったように見える。


「此度は支援物資を持って参った。食料じゃが、何処に出せば良い?」


「わざわざ聖女様自らお持ちいただき、誠に有り難く思う所存で。では早速ですが、早急に配りたい物も有りますので、屋敷の中庭にて、芋と乾燥豆をそれぞれ半量、小麦を三分の一、出して頂けますでしょうか。残りは倉庫の方に、お願いします」


「あい判った」


 中庭には既に荷馬車が数台用意されており、香菜姫はその側に頼まれた量を、箱から取り出す事にした。箱の中には二十八枚の札が入っており、それぞれに品名とその数が書かれてある。数字は十が最大で、それ以上は新たな札となる事が、今回判った。


(半数ということは、芋が三枚に、豆が二枚じゃな。それと小麦が三分の一……六枚か)


「芋の大樽三十、乾燥豆の大樽二十!」


 札を取り出し品名と数を読み上げると、たちまちそれらが眼の前に現れた。


(ほんに便利よの)


 続けて、残りの札も読む。


「小麦の大袋六十!」 


 積み上げられた食料に歓声を上げた兵達が、次々と荷馬車や荷車に積み込んでいくのを一頻り眺めた後、香菜姫は残りの荷を降ろすため、領主と共に倉庫へと向った。


 全ての荷を降ろし戻って来ると、ダルトンが駆け寄ってきた。頭には先程迄無かった、狐耳の付いた兜を被っている。


 ガレリアがどこで買ったのか尋ね、良く似合っていると褒めると、嬉しげに笑い、


「ぜひ、見て欲しくて。これ、今街で凄く流行っていて、色んな所で売ってます。もし、ご入用でしたら、お勧めの店にご案内しますよ」


 その可愛い申し出を受けることにした一行は、領主に断りを入れ、ダルトンと数名の兵と共に、街に行く事にした。その際、周王は若侍姿となり、しかも狐耳の兜姿となったおかげで、いっそうの注目と子供達、特に少年達からの声援を浴びる事になった。


「狐の兜を売ってる店は幾つもあるんですが、僕はここが一番品物が良いと思っています。友人達も、ここの物が一番だと言ってましたし」


 案内された店は神殿近くの広場にある出店で、兜と木剣が二つ一組として売られており、大きさも数種類、取り揃えてあった。


「うちのは頑丈に出来てますよ。土産や贈り物に人気で、大人でも稀に欲しがる者がいますので、寸法の大きな物も有りますし」


 笑いながら説明する店主の言葉は嘘ではないらしく、大人向けの、少々手の込んだ創りの物も置いてある。香菜姫は、その中で一番大きな物を指差すと、


「これで良いのでは?」


「そうですね。兄のごつい頭でも入りそうですし。店主、これを一組、いや、二組貰おう」


「お買い上げ、ありがとうございます。直ぐにお包みしますね!」


 その横ではクラレンス翁が、孫達にと言いながら、結構な数を注文していた。その中には大人用の物もある所を見ると、この様な物を好む者は、意外と多いのだと姫は思った。


 兜の売店の横の店では、華王を模したらしい狐の木彫りの置物が売られていた。ちょこんと座った姿で、その体には色とりどりの花の絵が描かれている。姫はその一つを手に取ると、


「なかなか、可愛いく出来ておるではないか」


「そうでありもすか?」


 満更でもないようで、少し照れた顔の華王が可愛く思えた姫は、


「幾つか買うてゆこう。どれが良い?」


「良いのでありもすか?では、こちらと、こちらを」


 それは赤や桃色の花が描かれている物と、青や水色の花が描かれた物で、対で並べると、まるで狐の雛飾りの様に見えた。


「良いな。店主、こちらを包んでもらえるか」


 香菜姫が袂から金子袋を取り出し、金を払おうとすると、


「そんな、聖女様からお代なんぞ頂けません!」


「構わぬ。ほれ、受け取れ」


「そうですか。では、ありがたく」


 そんなやり取りをしていると、買い物を終えたガレリアが寄って来て、


「聖女様、何を買われたので?あぁ、これは可愛らしい。店主、私にもこれと、こちら、それとこれも貰おう」


 三つの置物を手早く選んだ。


「ガレリア、三つもどうするのじゃ?」


「一つは自分用です。後はソフィーナと、これから会いに行く姫様へのお土産にと思いまして」


 ロウェイ王国の王女キャンディスは今、信長によって幽閉されており、面会人もほとんど無く、淋しい思いをしているという。この小さな置物が、少しでも慰めになればという思いからなのだろう。

 他にも本や、流行りの装飾品等を持参しているらしい。


 香菜姫は、ガレリア達の全ての荷物を預かり、空になった不思議収納箱の中へと収めると、ダルトンに礼を述べ、信長の待つロウェイ王国の王都リスカンへと向かった。



  ***



 同時刻、ロウェイ王国王宮の地下牢。


「おーい蘭ちゃん。直に聖女の姫さんが来るだろうから、その前に終わらしたいんじゃが」


「そうですね。ならば、少し身軽になって頂きましょうか。金で雇われた者ほど、口が軽くなるのは実証されてますし」


 そう話す二人の前には、三人の男が椅子に縛り付けられた状態で転がされていた。蘭丸はそのうちの一人を引き起こすと、抜き放った刀を男の肩に緩くあてる。


「では、ここからスパンといきましょうか」


「ま、待ってくれ!話すから!知ってる事は全部、話すから、切るのは止めてくれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ