表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国リーゼント  作者: 寛喜堂秀介


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/34

番外編6 相手にとって不足ない

 イスパニア。

 ヨーロッパだけでなく、海外全土に領土を持つ、太陽が沈まぬ国。

 西欧随一の強大国にして、レパントの海戦でオスマン帝国を破った地中海の覇者。



「ふむ……抗議?」



 マニラを経て届けられた国王フェリペ2世直々の抗議文である。

 渡されて、日ノ本の統治者である織田信忠おだのぶただは首をかしげた。


 日本とイスパニアの関係は悪くない。

 イスパニアも、統一が果たされ、東洋の軍事強国となった日本を警戒はしているものの、交易を通じてたがいに有益かつ友好的な関係を築いている。


 抗議文は、ごくごく丁寧ながら、意訳するとこうなる。


 新大陸で襲撃してきたインディアンにサムライが混じってたぞ。ワレわしのシマでなに上等くれてんだ? とにかく説明しろ。事と次第によっちゃただじゃおかねえ。 



 ――なにをした親父殿ぉーっ!?



 心の中の父の襟首つかんでぶんぶんふりまわしながらも、信忠は努めて平静を装い、使者に返答する。



「ふむ、にわかに信じがたい。調べてみるが……しかし、熱田にいすぱにあの暴徒が出るのだ。新大陸――“あめりか”に日ノ本の暴れ者が居てもおかしくなかろう?」



 三年前、熱田でイスパニアの商人が騒ぎを起こしている。

 駆動機の基幹技術をなんとか入手しようとして、職人の誘拐を図り、失敗したのだ。


 調べから、フェリペ2世の密命を受けたことが明らかになった。


 だが、信忠はこのとき目をつぶった。

 交易相手と無用な摩擦を起こすべきではないと思ったからだ。

 ただし、技術流出への対策は速やかに行われた。もっとも、あまりに飛躍した技術ゆえ、たとえ漏れても再現に十年や二十年の時が必要だろうが。


 ともあれ、信忠は言ったのだ。

「目くじらを立てるな」と。


 世界中の富を集める西欧の覇権国相手にそれが出来る。

 相手がはるか遠国というだけではない。天下人織田信忠にはそれだけの実力と自負がある……と、使者は見た。


 信忠も内心冷や汗をかいているのだが。

 相手が父だけならともかく、山田正道までいる以上、無下に切り捨てに出来ないのが辛いところである。







 とにかく、事情を把握する必要がある。

 信忠は急遽熱田より山田三郎忠正ただまさを呼び寄せた。

 信長や正道の動向は、この男がまだしもわかっている。



「三郎殿、親父殿や父御の消息は届いておらぬか?」


「いえ、届いておりませんが……父たちがなにか?」


「なにかも何もないわ! いすぱにあ王から新大陸で侍に襲われたと非難があったわ! 間違いなく親父殿であろう!」


「ははあ……」


「犯人の処罰を求められてはたまらぬ。突っぱねたが、まずは情報が欲しい。それで主を呼んだのだ」


「なるほど、では、確認いたしますか」



 三郎がうなずいた。

 情報などほとんど共有されているが、現状を整理する必要がある。



「まず、父たちの乗る船――“熱田丸あつたまる”が熱田を出たのが六年前になります。それから“世界地図”の通り“あめりか”に向かい一直線に進んだところ、嵐に遭い、“はわい”に漂着いたしました」



 うむ、と信忠はうなずく。



「船の修理中、部下にした部族に助力して“はわい”を統一しました。その折、彼らに船を作らせて、日本にこのことを伝えさせております」


「珍妙な異人に突然“オダ ノ キョーダイ ノ ムスコサマ デスカ ヒート!”などと言われて、ひっくり返るかと思ったわ」


「まあ、その後、我らも“はわい”に船を出し、所在を確認。かの地を守っていた森忠正もりただまさ殿にそのまま統治を任せております」


「住民が妙におびえておったらしいが」


「なぜでしょうね……ともあれ、我々の船が着く以前に父達は“はわい”を出立し、“あめりか”に向かいました。三年ほど前です。それから三年。“熱田丸”並の巨船も数がそろいつつあります。此度こたびのことをよい機会として、新大陸に船を送ってみては?」


「いすぱにあを刺激せぬか? 戦は避けられんぞ?」


「なぜ避ける必要があるのです?」



 三郎は。日本に冠たる大商業都市、熱田の若き主は言い切った。



「――織田信長おおとのが、山田正道ちちが、あえて敵に回した相手です。遠慮など無用でしょう……それに、奴らは熱田に上等くれやがった。ここで叩くもまた良しってもんでしょう?」


「裏の顔がのぞいておるぞ三郎殿……しかし、デアルカ」



 外洋に出る手段を手に入れた日本にとって、世界の海を我がものとするイスパニアは、潜在的には敵、ということになるだろう。

 日本一国を治め、その支配権を確立しつつある信忠にとっても、ここは無鉄砲な不良中年どものやらかしを奇貨とし、外に目を向けるべきなのかもしれない。



「よし。“あめりか”に将兵を送る。誰がよい?」


「なにぶん難儀の沙汰さた。志願を募るのがよろしいかと……もっとも」


「ふむ?」



 気を持たせる三郎を、信忠はうながす。

 若き熱田の主は、苦笑しながら言った。



「なに、選りすぐるのに手間がかかるであろうと思ったまでです」







織田信忠「新大陸行きたい人!」


九鬼嘉隆「はい!」


柴田勝家「はーいっ!」


鬼武蔵「はいっ!」


伊達政宗「(スッ ドヤァ」


浅井長政「泳 い で で も 参 る ぞ !!」


戸沢盛安「泳ぐ!?(ガタッ」


羽柴秀吉「じゃあわしマカオ!」


大友宗麟「キリスト教は棄てました」


島津忠恒「琉球欲しいです」


亀井茲矩「琉球はワシのものだ!」






戦国リーゼントにおつき合いいただき、ありがとうございます。

リクエスト外伝を不定期更新中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ