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戦国リーゼント  作者: 寛喜堂秀介


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考えるにも知恵がない



「山田の。助勢かたじけない」


「いいってことよォ」



 戦の終わった戦場で、信長と正道は親しく言葉を交わす。



「お主は、土地ここらの者ではないな」


「ああァ」



 信長への返答には、圧倒的に言葉が足りていない。


 正道に素性を隠すつもりはない。

 聞かれた言葉にまっすぐ答えただけだ。

 だから、正道は、続く質問にもまっすぐに答える。



徒党ととうを引き連れての旅か。仕官先を求めてか?」


「違うなァ。道に迷っただけよォ」


「迷っていて、わしを助けたのか?」


「当然だろォ?」



 正道は胸を張る。

 信長は一瞬、驚いた顔を見せて――笑った。



「どうだ? わしに仕えんか?」



 ――来たっ。



 二人のやりとりを見ていたシゲルは、心の中で歓声を上げた。

 合戦中、バイクでこけて頭を打ったため、仲間に支えられ、かろうじて立っている。よく生きていたものだ。


 これは信長に仕える絶好の機会だ。

 できればシゲルが直接仕えたかったが、正道が仕官してくれれば、取り入る機会はいくらでもある。



「断るぜェ」



 だが、正道はきっぱりと断った。

 シゲルはショックで気絶した。







 桶狭間の合戦から、数日。



「兄貴ぃ! なんであのとき仕官の話を断ったんだ!?」



 シゲルは、鬱憤をぶつけるように、正道に猛然と詰め寄った。


 信長からは、多額の謝礼を貰ったが、それまでだ。

 そのお金を熱田大宮司千秋せんしゅう家に預け、屋敷のひとつに仮住まいさせてもらっているが、百人もの大人数が、いつまでも置いてもらえるはずがない。


 というか、桶狭間おけはざまの戦いで当主が死んだばかりだというのに迷惑極まりない。


 あのとき、仕官するのが正解だった。

 歴史にくわしいシゲルから見れば、もったいなくて仕方がない。



「それはなァ、シゲルよゥ」



 悠然と。正道は答えた。



「――オレとヤツのタイマンは五分ごぶよォ。ヤツのことは気に入ったけどよォ、下につく気はねぇさ。五分ごぶの兄弟ならともかくなァ」



 その言葉は筋が通っている。

 相手が一国の主であるという事実を除けば、だが。



 ――この筋肉バカがぁ。



 シゲルは内心毒づいたが、他の舎弟たちは、そうは思わない。



「さすが正道さん! ビッグだぜ!」


「くぅーっ! イカス―っ!」



 ――バカばっかりだ。



 シゲルは頭を押さえた。

 そのシゲルも、熱田の豪商が、千秋家に口利きしてくれた理由に気づいていない。


 なにもかも、信長の手配だった。







 いい天気だ。

 熱田は今日も平和である。


 バイクの排気音があたりに響く。

 正道の舎弟たちがバイクを走らせているのだ。



「ボンクラどもが」



 シゲルは毒づいた。

 バイクがこの時代、どれほど規格外なものか、シゲルは理解している。


 ガソリンは二度と手に入らない。

 意味のないことに使うべきではない。

 にもかかわらず、舎弟たちは馬鹿みたいにバイクを走らせ、燃料の無駄遣いをしている。



「みとれよ。わいは燃料を温存して、ここぞという時にバイクを使って手柄をあげたる!」



 シゲルは気炎を吐いた。



「あー、ガソリンもうねーなあ」


「そういや、シゲルのやつ、バイク全然使ってねーっぺよ。ちょっと拝借するっぺ」



 こんな会話がされていることは、つゆ知らず。






 信長「弥三郎やさぶろう、お前の親父にあいつらの面倒みるよう言っといて」


 弥三郎パパ「千秋さんに頼もう。あそこ戦で人いっぱい死んだし、急場の戦力補てんにちょうどいいだろ」


 千秋季重「なんかかぶき者の集団に住みつかれた。解せぬ」




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