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第15話 帝都祓魔学苑入学試験②

「はあああああああああああああああああ!?!?」

「なんっ……な、え、何!?」

「カヒュッ」

「可愛い顔してとんでもない子ね……」

「霊力検査で天候変えるってなに? 化け物なの??」

「何者だあの銀髪美少女……」

「ヨシ、帝都祓魔学苑入試はもう受けないゼ☆」

「霊力量だけなら等級は虚級だろ!」

「こ、今年は豊作なんだな~」


 一瞬の静寂の後、会場が大混乱になった。

 祓い屋界のことをまだ少し知らない俺でも、今の霊力検査が異常だったということは理解できる。


 とっとと受験票を受け取ってこの場を後にしよう。


「あのー、受付さん? 俺は合格……っすよね?」

「は、はへっ? あ、あ、はいッ! 合格で、ございます! どうぞ!!」


 カタカタと震える手で受験票を手渡された。

 その瞳は恐怖一色であり、まるで俺が悪いことでもしたみたいな罪悪感があった。


 俺は待っていてくれた美紅ちゃんの元へ駆け寄りって泣きつく。


「美紅ちゃーん! まるで俺が化け物みたいな反応されたよ~!」

「そう? 至極真っ当な反応だったと思うけれど」

「俺に味方はいねぇんだな。オヨヨ……」

「べそかいてないでとっとと第二試験会場に行くわよ」


 今にも目が飛び出しそうな他の受験生を横目に、俺たちは鳥居をくぐって学園の敷地内に入る。

 噂が既に敷地内にいた受験生にも伝わったのか、奇異なものを見る視線が飛んできていた。


 広大な敷地を歩き続けること数分、会場へ到着した。


 第一次試験会場ほどの人はおらず、あれでふるい落とされた人が多かったのだろう。


「じゃ、私は別の場所に指定されてるから行くわね。三つの試験、精々頑張りなさいよ」

「おう! 任せろ!!」


 美紅ちゃんの試験会場はまた別の場所みたいなので、ここで一旦お別れである。

 次会うのは試験が全て終わった時だ。


 さて、それにしても実技試験か。

 大まかなことは教えてもらった。


 案山子に対して自分が所持している術式を放つ。持っていない者は霊力を放出してぶつけるという感じらしい。


「《風式(ふうしき)》……ッ!」

「《刈琉(かる)乱陀(らんだ)》」

「はぁああああああ!!!」

「《水仙華(すいせんか)》」


 各々が術式や霊力を放ち、案山子にぶつけていた。

 ちなみに術式は、技名を言って放つと威力が増す〝言霊〟があるらしい。

 なので、みんなして技名を叫んでいるのだ。


「はぁあ! くそッ……ああああああああ!!」

「君、もうそこまで。案山子の硬さを下げるべきだ」

「で、でも!」

災度(スケール)が高い案山子を壊せば高得点だ。だが、倒せなければ〇点だ」

「クッソォ!!」


 一人の受験生が試験官に止められ、地団太を踏んでいた。


 案山子は一次試験で出た結果から適した硬さになり、それを壊せば合格らしい。

 できない場合は硬さを下げるが、点数は低くなると。

 実際の悪霊やらの強さ、もとい災度(スケール)で分けられるらしい。


 この場所にいるほとんどは災度(スケール)(ファイブ)災度(スケール)(フォー)の案山子だ。

 ちなみに美紅ちゃんは災度(スケール)(ワン)という一番上のものだと、他の受験生から噂されていた。


(俺も災度(スケール)(ワン)に挑戦できたらいいな~)


 腕を組みながら待っていると、ようやく俺の番が回ってきた。


「えーっと君は、受験番号丙ノ○四七番……って、噂の子かよ!?」

「噂の……?」

「あ、コホン! なんでもないぞ。さて、では早速案山子の強度についてだが……。キミ、《《裏試験》》に挑戦してみるかい?」

「う、裏試験? なんすかそれ……」


 美紅ちゃんからそんなものがあるなんて聞いてないぞ!?

 俺はビクビクながら身構えている。


「あぁ、そう緊張しないで。これは霊力検査で測定不能を叩き出した受験生への試験なんだ。

 ここ数十年はいなかったから、幻の裏試験とされていたんだ」

「はぇーそうなんですね! 案山子を壊すのとは違うんすか?」

「いいや、案山子を壊すというのは同じ。しかし、その案山子の硬さは、災度(スケール)(ゼロ)級を可能な限り再現したものだ」


 災度(スケール)(ゼロ)

 確か、測定不能なほどの霊力量を持つ霊のことを指すもんだったか。


 その硬さの案山子に、俺の術式が通用するのかどうか……。


「挑戦回数は二回あるが、その一つを災度(スケール)(ゼロ)に使うか、初めから災度(スケール)(ワン)で挑戦するか。キミが決めるんだ」

「んなもん、災度(スケール)(ゼロ)でやるに決まってますよ!」

「了解した。準備するからちょっと待っていてくれ」


 そう言って試験官は案山子を準備し始めた。

 裏試験が数十年振りに行われるぞ! という噂が人伝に伝わったのか、人がみるみる集まってくる。


 人に見られながらは恥ずかしいんだけどなぁ。


「よし、準備ができた。この案山子にキミの全力を叩き込んでみてくれ」


 用意されたのは真っ黒な案山子だ。

 明らかにさっきまで見ていた案山子とは違う。霊力の込められ方が桁違いだし、周囲の霊力を反発していた。


「失敗たとて恥ずべきことじゃあない。挑戦できたという事実だけですごいからな」

「うっす! そんじゃあ……やりますか」


 案山子の前まで歩き、大きく息を吐いて集中力を高める。


「【天蒼滅(てんそうめつ)】」


 術式を発動させ、蒼い氷炎がマフラーのように首に纏わりついた。

 強く握った拳にも炎を纏わせ、姿勢を低くして拳を構える。


 技名を言って放つと威力が増す〝言霊〟がある。

 そのことは昨日美紅ちゃんから教えてもらってたから、一晩技名を考えてきたんだ。


「……ッ!? ま、まずい! 受験生の皆! 今すぐ彼女からもっと距離を置けーーッ!!」


 ビリビリと空気が揺れる。地面が凍り始め、冷気が放出され続ける。

 試験官が何かを叫んでいるが、極限に集中している俺の耳には入ってこない。


 俺が全力の〝溜め〟をして拳を放つこの技名は……!


「――《魄亞(ハクア)》!!!」


 充分にチャージした拳を、案山子に解き放った。

 案山子は言わずもがな氷漬けになり、その後ろにある小山は一瞬にして氷山へと姿を変える。


 衝撃波で氷が砕け、ダイヤモンドダストのようにキラキラとした氷の粒が宙を舞っていた。


 全力を出したつもりだったが、どうやら全力で俺の霊力を込めると肉体が耐えられないらしい。

 琴弧ちゃんの身体ではまだまだ力が制限されているみたいだ。


「案山子ぶっ壊しましたよ! 合格ですか!?」

「――――」

「あれ? あのー……。し、死んでる!?」

「生きてるよ、辛うじて……。ウン、裏試験、合格できちゃうんだぁ……一応歴史的快挙なんだよ……?」


 試験官はどこか呆然とし、遠い目をしながら氷山となった目の前の光景を眺めていた。


 俺以外のこの場にいる全員、顎が外れそうなくらい口を開いている。

 まあ無事に合格できたからヨシ!!

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