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半妖精の錬金術師ですが、どうやら義弟が運命のツガイのようです。  作者: ぷり


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77 翡翠色の妖精竜

 「――――グオオオオオオオオオオオオッ」


 聞き覚えがある。

 オスニエルの屋敷でグラナートお父様があげた咆哮、それとそっくりだ。

 それは、認めざるを得ない――私は妖精竜になったのだ。

  


 胸に張り裂けそうな痛みが広がる。

 人間の時とこの心の痛みは変わらないのに。

 けれど、泣こうとしても、泣くことはできず――出てくるのは、ただ恐ろしい咆哮。


 ――しかし、それでも時折、心の奥底から高揚感が湧き上がる。

 私の中の妖精の血が、よろこんでいる……。


 外に、飛び出したい――。

 大空に飛び立ち、自由に舞いたいという衝動が抑えられない。


 私が心のままに翼を広げると、それは繭を斬り裂いた。

 そのまま、翼で乱暴に繭を内側から破り、望みのままに天空へと舞い上がった。


 リオネルに連れられて飛んだ空と同じ場所へ――いや、それよりももっと高い場所へ到達した。

 

 太陽の光に照らされると、自分が以前の髪色と同じ、翡翠色の毛に覆われているのが見えた。

 鱗ではなく、滑らかな毛が輝いている。


「――綺麗……。まるで翡翠のような竜だわ……」


 傍についてきていたのか、ハルシャがポツリと感嘆の声を漏らした。


 綺麗な竜?


「(……)」

 

 美しいと言われても……今は何の慰めにもならない。


「(やっぱり……なってしまった。妖精竜に……これからどうしたらいいの……)」


 高揚から空へ舞い上がったあとは、ふと我に帰り、途方にくれた。


「あ、いけない。ぼーっとしちゃったわ!! マルリース! 聞こえる? イチョウの丘へ行こう!」


「にゅう、きゅう!」


 ……あ、そうか、そうだったね。


 ハルシャとリージョの声は頭上から聞こえる。私の頭に乗っかってるのかな。

 いつの間に。

 

 とりあえず、落ち込んでいる暇は……あれ。


 そこで私は気がついた。


「(お父様みたいに、空間が割れてない……)」


 ……私は、世界を……壊さない?


 つまり、それは……この世界にいられるということ……。


 グラナートお父様は言ってた。

 彼は圧縮できたとしても大きな山のような人間になるから、この世界にいられないって。

 でもオスニエルの屋敷での彼の様子を思い出すと――例えそんな風に圧縮しても、あの空間の割れようでは、とても無理な話しだと思っていた。

 

 でも。この今の私の状態なら……。

 人間に戻る……というか、変化する術を覚えれば……この世界に、リオネルと一緒に居られるってこと!?


「(あ……)」


 良かった……良かった……!


 涙はでない。

 しかし、仰ぎ見た空がとても美しく見えた。

 

 とても救われた気分だった。


 

 ――しかし。


 落ち着いてくると、たくさんの視線を感じた。

 そして、サイレンと悲鳴が聞こえる。

 

「!?」


 ああ、そうだ!

 ここって思いっきり住宅街の真上だった!!

 

『またドラゴンが出たわ!!』

『きゃあああああ』

『警備隊、警備隊を呼べ!!』



「マルリース!! 早く! こっち! アタシが見える!?」


 ハルシャが私の眼前に回り込んで来た。


 ――私はゆっくり頷いて、ハルシャの誘導に従って、旋回した。


 飛び方は自然とわかるものの、小回りがきかないから、そうなる。

 巨体って大変だ……。


 妖精の粉を散らし煌めかせながら、ハルシャを追いかける。


 ――とにかく妖精界に行かなければ。


 イチョウの丘は目の前だ。すぐに着くはず――。


 進路を定め飛び始めた私だったが、ハルシャの向こうに、大きな光球が現れた。


「(え!?)」

「え! なに!?」

 

 光球の中には、狂喜の笑顔を浮かべた血まみれのウィルフレド閣下が、リオネルと同じように、剣の柄を足場にし剣を構えていた。


「なに、アイツ! こわい!」

「きゅうきゅう……!」


 ハルシャもリージョも、驚いて、私の額石の上に張り付く。


 ウィルフレド閣下が叫ぶ。

 

「おまえ! こないだの黄金の竜じゃないのか!? 以前と色が違うようだが!! 淡緑色のでっかい翡翠が空に浮いてんのかと思ったぜ!」


「(うあああ!?)」


 私は驚いて、そのまま避けるように、更なる上空へ昇り、そこから、ウィルフレド閣下から離れるように飛んだ。


 え……? え……。

 卒業会場まで、もう私の話しが伝わったの!?


 そして彼が来た、ということは私を討伐しろって緊急命令が出たことだよね?


 やだ、人間こわい!!


 そして……ウィルフレド閣下の様子が、なんかおかしい?

 目つきが……。

 そりゃ、あんな事があったあとで、私を退治しろって緊急命令が出たら、ちょっとメンタルが忙しいかもしれないけど! それにしたって何か……。


 そういえば、ボニファースを裁いた時も、様子が尋常じゃなかったけど……あれは、普通に怒ってたからだと思ってた。あれだけ怒っても当然なことだったし。


 でも、今は……まるで狂人のような瞳をしている。


 一度ダンスした時に彼と合わせた瞳は、優しかった。

 こんな目をするような人には……とても。


 ――あ。


 ひょっとして、夜影の花の後遺症?

 そうか、まだ魂が影っているんだ!


 

 あれ、でもリオネルは? リオは命令を受けてないの?

 私とツガイの儀式をしたし、確かに私は自分の生命が彼へ流れる感覚があった。

 同じ剣聖のリオが来ないってことは、リオはまだ意識がないってこと?


 ……多分そうだ、きっとまだ意識が戻ってないんだ。大丈夫かな……。

 

 いや、そんな事を考えてる場合では――。


 ふと、後方から――”なにかが、来る” そう感じて私は身体を傾けた。


 私の翡翠の体毛を掠め、鋭い光弾がいくつも通り過ぎていった。

 妖精の粉と、私の緑毛が、キラキラと舞い散る。


「(うああ!?)」


「ははは!! 避けたか!! 結構結構!! 剣で仕留めたいからなぁ!! だが、なかなかの速度! 追いつくのが大変だぜ」


 なんて張りのある声。狩りを楽しもうとしてる!


 ……に、人間からしたら当然かもしれないけれど……私、驚かせたかもしれないけど……なにもしてないのに……!!


 私、悪い竜じゃないよおおおお!!



お読み頂きありがとうございます。

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