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半妖精の錬金術師ですが、どうやら義弟が運命のツガイのようです。  作者: ぷり


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67 スカウト、そして店舗敷地拡張 (☆登)

「リオネル? どうしたの?」

「あ……いや。ちょっと前から考えたことがあって」


 リオネルはそう言うとレナータさんに、


「レナータさん。空を高速で飛行することってできます? 先程も風魔法を駆使して盗聴しようとしてたみたいですけど」


 と、質問した。


「と、盗聴!?」

 

「マルリース……こいつは、自分の趣味のためならば、遠方の戦争にだろうと、ドラゴンの巣だろうと飛び込むやつだ……風魔法を駆使してやがる……」


 なんか、ぶっとんでますね……とコメントしようとしたら、レナータさんが叫んだ。


「なんでドラゴンの巣に行ったこと、知ってるんですか!? 内緒にしてたのに!」


「行ったのかよ!? 例え話を追加しただけだよ!!」


「なんでドラゴンの巣……」


 私が単純な疑問を口にすると、レナータさんは手を組み目をキラキラさせ、語りはじめた。


「それはとある村の物語。母親がなにかしらの罪を犯したということで村八分されている美少年がおりました。その村には数年に一度、ドラゴン様に生贄を捧げるしきたりがあり、美少年はその年の生贄になることが決定しました。しかし、彼には密かに愛しあっている彼氏がいたのです……」


 物語はじまった!?

 そしてはしょってる! なにかしらって何だ!? なんの罪かちょっとだけ気になるよ!


「リオネル卿の質問無視して語るな!!」


 ノルベルトさんが、レナータさんの頭をチョップした。


「痛い!! レディになんてことするんですか!?」

「それは、悪かったな。ただおまえは確実にオレより数段頑丈だ。ほら、リオネル卿の質問に答えろ」


「あ、すみません!!」


 リオネルの質問を無視してしまったことはペコっと頭を下げて素直に謝った。

 なんかアップテンポなひとだな……。


「あ、うん。気にしないで。 それで高速飛行のことなんだけど――」


 1人だけなぜか冷静なリオネルがレナータさんに聞き直す。


「あ、はい。それはもう、あちこち取材へ飛ぶので!! 隣国城下町まで30分で飛んでみせますよ!! 推し活と最高の絵物語を書くにはまずは体力からです!! どこへだって潜り込んで見せます!! ……それが、私!!」


 荒い鼻息でガッツポーズするレナータさん。た、たくましい!?


 そういえば、体格が結構がっしりしてる、そしてスマート。

 まるで訓練された兵士のような体格だよ!? 推し活とやらをやれば、ここまでなるの!?


「それはすごいな、僕より速いかもしれない。機動力も良さそうだ……ふむ」


 リオネルが感心したように言ったあと、私に耳打ちした。


「(マルリース。彼女に嫌悪感はある?)」

 

「(え? ううん。すごいこと言ってる割にそういえば嫌悪感はないよ。作ってるものはともかく、本作りにかける情熱は感心してるよ?)」


「(そうか、じゃあちょっとスカウトしてみようかな)」


 え。なに?


「レナータさん。あなたは宿屋の跡取り娘ですか?」


 レナータさんはリオネルにそう問われて目をパチクリした。


「いいえ? 跡取りどころか、行き遅れ・穀潰し・出ていけって言われてますよ~。看板娘の地位も5歳の姪っ子に最近奪われ……くっ」


「成る程、無職に近いんだね。じゃあ、シルヴァレイクで……この僕の下で働いてくれないかな? 僕のシルヴァレイクの領地に部屋は用意するよ。ただ、空を飛ぶスピードをテストさせてもらってから、だけど」

 

「えっ!」

「ふぇっ!?」

「なんだと……」


 ス、スカウトしただと!?

 てか、いまさらっと、無職に近いって言った!

 

「おい、リオネル卿。さすがにそれはやめておいたほうが」


 ノルベルトさんが、本気で心配した顔でリオネルに言った。


「ノルベルトさん、心配してくれてありがとう。嬉しいです。でもちょうど女性の風魔法使いもしくは闇魔法使いを探してたんだ。戦場を駆け抜けて帰ってこれる実力があるなら、僕の理想に近いんです」


 リオネルはノルベルトさんにそう言うと、またレナータさんに向き直った。

 ノルベルトさんは、何言ってんだコイツって心配してる顔だ。


 そしてそんなリオネルとノルベルトさんのやり取りを見て、目を輝かせてるレナータさん。

 なんか想像してる!! やめてほしい!?


「主な仕事は、伯爵夫人になるマルリースの送迎。僕が彼女を送り迎えできない時に、シルヴァレイク領地とこの店の往復とかだね。同時に護衛の訓練とかも受けてもらいたいんだけど……どうかな?」


 おお……。

 私もそれ、気になってたんだ。

 リオネルがずっと送り迎えしてくれるのは実質無理だと思ってたんだ。

 ちゃんと考えてくれてたんだね。


「え……。家事手伝い以下の存在の私に、華麗な仕事がいきなり降って湧いた!?」

「あー、なるほどな。それはこいつは向いてるかもしれん」


「私もそれ助かるな……リオネルも忙しくなるだろうし、気にしてたんだ。私はレナータさんさえ良ければお願いしたいかな」


 ……と、レナータさんの就職活動をそっと後押しする。

 というか、そんなに早く飛べるひとなら、送迎してもらいたい。


 仕事が立て込んできたら、闇魔法テレポートが欲しいくらいだもの。

 けど、闇魔法使いも聖魔法使いほどではないがかなり希少。いたとしても高位貴族になるだろうし、そんな御仁を足には使えない。

 優秀な風魔法使いがいるならここでゲットすべきだと思う。


「ただし、その君の独特な趣味は、マルリースに話したり、僕の領地で広めたりしないこと」


「ぷっ」


 ノルベルトさんが吹いた。

 さっきから神妙な顔して考え込んでたリオネルだったけど、ちゃんと聞いてた!


「布教禁止!? ……くっ。仕方ありません。いいでしょう、布教は今まで通り休暇の際にこの街でします……。というか、雇って貰えるなら助かります。とくに嫁ぎたいわけでもなかったですし、かといって実家にいつまでもいるわけにはいかないのに、私、手に職がなかったので……」


 ノルベルトさんは布教、の部分ですこし顔を引きつらせたが、


「良かったじゃないか。お前の得意なことが仕事になって。リオネル卿、テストしてやってくれ」


 結局は、レナータさんを後押しした。


「ノルベルトさん、アタイやったよ!」

「それを言うのは気が早すぎだ、レナータ」


 リオネルは、ノルベルトさんがそう言ったのを見て、さらに乗り気になった顔をした。


「そういうことで、テストが合格なら正式に契約を交わして、しばらくはシルヴァレイクで色々訓練を受けてもらうよ。では追って連絡はするので今日はこれでお引き取りください」


「わっかりましたー! では、私は親父……じゃなかった父さんに就職決まったから出てくって言ってきます~☆ マルリースさん……じゃなくてマルリース様!! これからよろしくお願いしますね!!」


「まだ決まってないぞ!!」


 ノルベルトさんが去るレナータさんに念押しした。


「はーい☆」


 レナータさんはそういうと、風のように去っていった。足もはや


 その場で見送りながら、リオネルが呟いた。

 

「……領地が賑やかになりそうだなあ」


「確実に賑やかだぞ。でもまあ、あの趣味だけはいただけないが、そこを除けば良いヤツだ。そっちは太鼓判押してやる」


「ノルベルトさんが言うなら安心だね」


 リオネルが、ふふ、と笑った。


「オレを信じすぎだ(笑顔が以前より柔和になったな、リオネル卿。夢が叶って力が抜けたか)」


 それに対してノルベルトさんが、少しリオネルの頭をコツ、と小突いた。


「ノルベルトさん、いたいですよー」


 リオネルが小突かれたところを、擦りながら嬉しそうに言い、ノルベルトさんが、フ……、と優しく笑った。


 ちょっと仲良すぎじゃないですかね!?



「ああ、そうだ。リオネル卿。もしできるならちょうど空いてる店の隣の土地をマルリースに買ってやれ。あと、マルリースの手足になるような職人も雇ってやれ。もう婚約者なんだし、その辺り、手助けしたっていいだろう」


 ノルベルトさんは、ふと真顔に戻ってそう言った。


「え、それは構いませんが。どうしてです?」


 リオネルが目をパチクリした。

 

 く……。それは心を許した相手にしかしない仕草!!

 わ、私以外の人に!!

 ……ノルベルトさんめ。少し妬けてきた。

 

「年末から年明けにかけて、オレも親戚やら上客に挨拶したり、彼らの宿泊があったりした。その時に『O're』の寝具を披露したわけだ。……まあ、隣の土地と職人が必要になりそうなほど注文がはいりそうってことだ。見たところ、そろそろこの店じゃ狭いだろう。特に寝具なんてかさ張るしな。これからも商品が増えるなら倉庫もいるだろうし」


 ごふっ。

 店が狭いって言われた! でも事実だ!


「なるほどね。そうだね。マルリース、僕が隣の土地を買っていい?」


「あ……。いやでも、ここは私の事業だし、となりの土地を買う費用はあるにはあるから私が買うよ!」


 これは譲れない。

 だってこれは私の事業だもの。


 素直にリオネルに頼るのが賢いのはわかってる。

 けれど、なんだか違う気がするんだ。


 リオネルに買ってもらうのと、他の誰かに出資してもらうのとは訳が違う。

 リオネルに助けてもらうと、こう……身内に甘えた感じがして、自分でやり遂げた達成感が薄れる気がする。

 

 ちょっと意固地だろうか?


 私がちょっと気張った顔をしていたのか、リオネルは少しクスっとして言った。

 

「わかったよ。でもなにかあったら言ってね」


「う、うん」


「まあ、費用があるならオレもなんも言わん」


「うーん、でもだよ、姉上。隣の土地を買ったとして、新たに建物を建てないといけないね。さらに雇用もあるよね?」


「あーうん。その費用もあるね……」


 金がごっそり! 減る!

 でっかい必要経費だなぁ……。


「じゃあ、他の業者と変わらない条件で貸すね? それならいいよね。」


「あ……それなら」


 なるほど、それなら、まあいいかな。

 リオネル相手だと借りるのも安心だし。


「僕も変な業者から借りないか心配しなくていいし」

「オレもそれのほうが変な業者から借りないか心配しなくていいな。……あ」


 リオネルとノルベルトさんが言葉が被って顔を見合わせる。


 ……ま、まさか!?


「やだな、言葉かぶっちゃった」

「思うことは同じだったようだな」

「も、もう。二人共変な心配しすぎだよ!」


 ふう。良かった。

 さすがに『ハッピープリン』はリオネルと私だけのものであってほしかったから。


「ん? なんか妙に笑顔だね、マルリース」

「そう? 気の所為じゃない? じゃあ遠慮なくリオネルから借りるとします! おねがいしまーす!」

 



 私はこじんまりした店で良かったのに段々と話が大きくなってきたなあ……。


 でも、こうなるなら王都の一等地とかに家を買わなくて良かった。

 あっちだと、こんな拡張するには途方もないお金かかるしね。


 この商店街周辺も、将来は一等地に負けないようなにぎわいのある土地になるといいなぁ。



 ◆

 ちなみに。


 レナータさんはその後、ちゃんとテストに合格した。


 リオネルが、言うには。

 

「いや、びっくりしたよ。彼女はホントに飛ぶのがとても速かった。レースしたけど、僕と拮抗したよ。おまけに、どこかで訓練を受けていたのかと思うくらい体はできあがってる。覚えも良くて、剣の扱いもメキメキ上達してる、卒業パーティには初仕事を任せられるかもね」


はやっ!!」

 

 ……しかし。


 その半年後くらいのこと。

 どう考えてもシルヴァレイクの騎士たちだろう……と思われる薄い本がちょっと流行するのだけれど、それは――また別の話。

お読みいただきありがとうございます。

励みになりますので、評価やブクマをいただけたら、うれしいです!


☆登場人物表 レナータが追加されただけですが^^;

マルリース=ポプラ■白緑色の髪に赤い瞳、額に赤い石のある18歳の女性。実家である子爵家から独立し、錬金術の店をやっている。

リオネル=リシュパン■マルリースの弟。金髪に青い瞳。姉のマルリースに長年懸想している。その内面の執着心はすごく、何年たってもマルリースを手に入れる意志がある。剣聖に至り、伯爵位と領地を賜る。


リージョ■マルリースが赤ちゃんの時からずっと傍にいる謎の黄色い生き物(おそらく妖精)

ハルシャ■コスモスの花から生まれたピクシー。オスニエルによって片羽を切られ、親友を失う。マルリースの家に身を寄せる。

ノルベルト=モンテール■ダークブロンドの男性。マルリースが所属してる商店街の若き商会長。

マダム・グレンダ■少ない常連客。娼館のマダム。彼女の愚痴がマルリースに天恵(?)を与えた……。




アーサー=リシュパン■マルリースとリオネルの父。リシュパン子爵。

パウラ=リシュパン■マルリースとリオネルの母。


グラナート■マルリースの実の父。

ジュリア■マルリースの実の母。


オスニエル■マルリースの昔の家庭教師。妖精学の教授



クレマン■マルリースの元婚約者

バレーヌ■クレマンの本命の女性。使用人の娘でクレマンの幼馴染




フレードリク■マルリースの近所の変人で頭が黒光りしていた。


ビルヒリオ=ボニファース■幼い頃の話。ボニファースが追い回し、マルリースは誕生日会で小池に落ち怪我をした。

黒髪 細い一重の目


ウィルフレド=パブロス■剣聖になり辺境伯位を賜った元平民。黒髪黒ひげの豪快な雰囲気の騎士。

粗暴な風体のちょいワルイケオジみたいな、結構目立つ容姿


レナータ■男性同士の物語を読み書きするのが趣味の宿屋の娘。リオネルにスカウトされ、マルリースの護衛となるべくシルヴァレイク騎士団へ入隊する……。



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