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半妖精の錬金術師ですが、どうやら義弟が運命のツガイのようです。  作者: ぷり


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66 戦場を翔ける宿屋の娘。

 リオネルの領地で両親と共に新年を迎えた。

 

 新年のお祝いを4人と使用人たちとで祝い、そして新年二日目には両親は、自分たちの領地ロザンティアに帰っていった。


 彼らもこれから、あちこちの新年パーティへ出掛ける予定があるのだ。

 私達もそう。


 しかし、出席するパーティは結構被っているもので、結局は行く先々で遭遇した。


 参加したパーティでは、リオネルと私が婚約したことや、就任パーティを終えたことを話題にして伝え、挨拶した。

 

「これでもう釣書もこないかな」

「そうだね。それでも諦めきれない令嬢やその家門はあるだろうけど」


 リオネルに近寄れない令嬢たちの視線が痛い。


 前の婚約者の時には、なかったことだなぁ……。普通に祝福されていた。

 世の中上手くいかないものだな。


 リオネルはパーティでは、私から一切離れないでいてくれた。


 多分リオネルがそうしてくれなかったら、私は令嬢たちに何かされてたかもしれない。

 それぐらい嫉妬が見て取れた。

 キラキラ王子様の婚約者も楽じゃない……くわばらくわばら!

 


 ――そして密かに憧れたいた平民の冬休みを味わえることなく、私の短くて忙しい冬休みは終わった。


 来年からもリオネルが領主の間は忙しいだろう。

 でも、リオネルとならきっと楽しい。



 ◆


 工房に戻ってきて、荷物を片付けると、私達は早速、ソファーでもたれあってれた。


「いやー。忙しい冬休みだったね」

「お休みが終わったことに、リラックスを感じるなんて……」

「私達は楽しかったよねー」

「きゅうきゅう」


 小妖精たちは元気だ。

 ソファから見える庭の景色は出かける前と変わらず、ホッとする。

 リオネルの城も素敵だけれど、私のこの小さな城も愛着が湧いて心に馴染む。

 

「なんだか、この工房に帰ってくると不思議とホッとするよ」

「それはアタシもそう思う。この家好きよ」


 リオネルとハルシャがそう言って、私のテンションは上がった。


「そ、そうでしょ? この家、ホッとするでしょ!?」


 私はこの家が相当気に入っているので、そんな風にやすらぎを感じてもらえると、とても嬉しい。


 そして、今日はまた着ぐるみスタイルになっている。もこもこ落ち着く。

 リオネルがくれた服もちゃんと着るけど、もこもこ落ち着くんだよなぁ。

 

「うん、ここの暮らしも好きだよ。日はまだ浅いけど」


 そう言うとリオネルはギュ、と私を抱き寄せた。


「ぬいぐるみー」

「なんだろう、犬か猫のようにモフられている気が」

「きのせいー」

「はいはい。ところで、しばらくはパーティはないよね?」


「うん。次は卒業パーティまで何もないはず。それで……まだ結婚式の予定を話してなかったんだけど」

「あ、うん」


 ちょっとドキリとする。

 私、本当に結婚するんだな、とか思ってしまう。

 環境の変化に対応するのは早い方だとは思うんだけど……結婚は大きな行事だし、うっかりすると夢の出来事のように思えてくる。

 

「春はもう準備が間に合わないと思う。マルリースも仕事が忙しくなってきてるしね。僕も春からは、しばらく王宮務めだし」


「じゃあ秋頃にする? 夏は汗だくになるし……」


 水属性の方を雇えば会場はひんやりさせられるけれど、やはり化粧崩れや汗は他の季節のようには抑えられないんだよね。


「そうだね、イチョウ祭りよりは前にすると、季節的にちょうどいいかもね」


「うん! 楽しみ。準備がんばる」

「にゅうきゅう」

「私も手伝うよ!」


 小妖精たちも手伝いに声をあげてくれた。頼もしい。何を頼もうかな、という会話をしかけたところで――

店のドアベルが鳴った。

 

「あけおめー」


 ノルベルトさんの声だ。

 

「あ、ノルベルトさんだー」

「えっ!! ノルベルトさん!?」


 なんと、リオネルが抱っこしていた私を離してスッと立ち上がった。

 目がキラキラしてる!!


 おいぃ!?


 しかし、私もノルベルトさんには、会いたかった!


 2人でバタバタと店へ出ていく。

 その時に垣間見たリオネルの顔が甘々な笑顔で……仕事から帰ってきたご主人を迎える犬のようだ!?


「よう、あけおめー、マルリース」

「あ、ノルベルトさん、あけましておめでとうございます~」

「あけましておめでとうございます!!」

「よお。リオネル卿もあけおめ………なんだおまえら二人共。なんでそんな興奮した顔でこっちを見……こら! リオネル卿、近い!」


 ノルベルトさんも、そんなリオネルにもう慣れたのか普通※に接している。

(※ノルベルト氏の普通とリオネル・マルリースの普通には若干のズレがあります)


 彼も、もはや貴族への配慮みたいなのも感じない。

 きっとリオネルがやめてほしいって頼んだんだろう。



 私達が冬休み中にあったことをノルベルトさんに伝えると、彼はとても喜んでくれた。

 

「へー。じゃあ、婚約パーティも同時に済んだ、?……二人共おめでとう! 良かったな!! 何かお祝いを贈らないとな!(やった……これでもうリオネル卿の恋愛相談に乗らないで済む……!!)」


「ノルベルトさんから贈り物を頂けるんですか!? 僕、一生の宝物にします……!」


 ノルベルトさんの手をとって尻尾パタパタする(しているように見える)リオネル。

 なんだその懐きよう。ちょっといい加減、ジェラシー沸くわよ。


「はは。お貴族様に贈るには粗末なものしか贈れないぞ」

「ノルベルトさんに貰えるならその辺りに落ちてる木の棒だって良いです……!!」

「リオネル……懐いた相手にはひたすら尻尾振るタイプだね……」


 私が薄目し呆れた感じでその様子を見ていた時、


 ガタッ!


 外で物音がした。


 リオネルの顔つきが変わり、ノルベルトさんの手を離すと、驚異的なスピードで、外に飛び出す。

 そして次の瞬間、

 

「きゃー!!」


 と女性の悲鳴が聞こえた。


「な、なにごと!?」

「……」


 私はその声に驚いたが、ノルベルトさんの顔を見ると眉間にシワをよせて不機嫌そうな顔をしている……え、なに、どうしたの!?


 しばらくすると、リオネルが1人の女性の首根っこを猫のように捕まえて、店内に戻ってきた。

 ん? ダークローズの髪色に背は高めのこの女性、どっかで見たような……。

 

「……こないだから彷徨うろついているなぁ、と思って様子見てたけど……どこのスパイかな? いや、スパイではないだろうけど……得体がしれなくて不気味だ。何者かな?」


 リオネルが剣呑な目で首根っこを掴まれている女性を見下ろす。


「わ、私はスパイじゃありませええええんうう。怪しいものでもありません!!」


「怪しいよ。ずっとノルベルトさんと僕の会話を最近盗み聞きしてただろう。そろそろ話してもらおうかと思って捕まえた」


 ふと見るとノルベルトさんが手を目にあてて上を向いてる。どうした? と思ってたらそのまま口を開いた。


「……リオネル卿、そいつは宿屋の娘のレナータだ」

「……あれ? 宿屋の娘さん?」

「そーだ。……ちょっと変態だが、ただの一般人だ」

「……変態?」


 変態、という言葉に宿屋の娘さんこと、レナータさんはキッ! と顔つきをきつくした。


「変態はないじゃないですか!? 私はちょっと男性と男性の恋愛絡みを妄想してるだけですぅ!!」


 !?


 一瞬、何言ってるのかわからなかった。

 え、男性と男性……妄想……。ま、まさか。ノルベルトさんとリオネルで!?


「大声で言うな!? なんでそんなオープンなんだよ!! まったくマルリースといい、おまえといい……」


 ノルベルトさんが珍しく声を荒げて言った……って、どうして私まで!?

 

 そして、レナータさんも負けてはいない。

 

「好きなことも好きって言えないこの世の中とかつまらないでしょう!?」

 

 ……!!


 私はハッとした。

 でも、そうだよね。好きなことも好きっていえない……そこは同感だ。

 

「……」


 リオネルがふいに、力が抜けたかのように手を放した。


「げぶぅ!!」


 レナータさんが、顔から床に落ちる。


「り、リオネル。……あの、レナータさん、大丈夫? リオ、謝りなさい」


 リオネルが女性を床に落っことすなど、レナータさんの発言に私と同じで胸に来るものが合ったのかな。

 ……やっぱり、私から好きって言えないこと、引っかかってるんだよね。ごめんね……。

 

 私はレナータさんに駆け寄って打った鼻を見た。


「あ! すみません。レナータさん」

 

 リオネルはあわてて謝罪した。


「マルリースさん、ありがとう! ら、らいじょうぶれすぅ!」


「マルリース、大丈夫だ。そいつは自分の趣味の為に戦場も走り抜け、無事に戻って来るような女だぞ……」


「ええ!? 戦場!? いまこの国、戦争してませんよね!?」


「遠方の国へ出向いていますうー。推しカプの片割れが戦場に行ったら、そりゃ追うでしょう! そして無事に戻れるように補佐しないと、彼の帰りを待つ彼の最愛が悲しみますぅ!!」


「外国までチェックしてやがる……。だめだ、こいつ……!」


「……すごい人だな」


 ノルベルトさんはキレ顔で、リオネルは呆れ顔だ。

 私は軟膏を取ってきて、彼女の鼻に塗った。


「私が作った軟膏だよ。結構よく効くんだ~。あまり売れないけどね」


「ああ、マルリースさん、お気遣い無く! あ、でもこれスッと馴染みますね」


「ふふ、そういうの得意なの」

 

 私はこれまた自作の傷テープをペタリと彼女の鼻に貼った。


「はう。優しい看護師さん、推せる!!」


 びし! と指さされる。

 ……テンション高い人だな!?


「それで……どうしてマルリースの店を張ってたんですか?」

「リオネル卿、聞かないほうが――」


「あ、はい。リオネル伯爵様とノルベルトさんをウォッチしてましたあ!! 次の絵物語に描きたくて!!」


「……」

「……」

「……」


「えーっと……ひょっとしてですが、リオネルとノルベルトさんが恋人同士の話を描くってこと??」

「マルリース! 聞くな!」


 ノルベルトさんが、青い顔して私の発言を遮ろうとしたが、遅かった。


「そうですぅ!!」


 !? ……。 !? ……。


 私は、理解が追いつかず、思考がループして固まった。


「絶対やめろ! オレには来年結婚する相手がいるし、コイツらだって婚約者同士、そして来年の秋挙式だ!」


 ノルベルトさんがきつくレナータさんに言い放った。


「ええ!? そんな!! てっきりノルベルトさんは一生独身で、マルリースさんは、お姉様なだけだと思っていたのに!! リアル解釈違いですううう!!」


 レナータさんが突っ伏してして泣いた!!

 そんな、泣かれても!?


「人を勝手に一生独身にするな! いい加減にしろよ、レナータ。昨年から気がついていたが、オレはそのうち自分からやめてくれないかと思い、放置してた。……が、こうなった以上は、この件は親父さんに言うからな。これはオレたちに対するセクハラ。プライバシーの侵害。そしてリオネル卿に対しては不敬罪にもなるぞー。場合によっては別の罪を加算できるぞ。オレとやりあうか?」


 ノルベルトさんの目の剣呑さがあがった!! つり上がってる!!

 

「もぉ、わかりましたよぉ! ふん! ウォッチできるイケメンたちは探せばこの世にいくらでもいるんですからね!!」


 レナータさん強いな……。

 しかし、私もリオネルは私の大事な人だから、いくらノルベルトさんでも……その、想像の中でも他の人の恋人同士にはなってほしくはな……――あれ?

 

 さっきからリオネルがなんか考え込んでる。どうしたのかな。



お読み頂きありがとうございます。

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