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半妖精の錬金術師ですが、どうやら義弟が運命のツガイのようです。  作者: ぷり


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64 ウィルフレド閣下とダンスする。

「おー、リオネルは攫われたか」

「ウィルフレド閣下」


 表向き笑顔で内心ではジェラシーを燃やしていたところ、ウィルフレド閣下が話しかけてくださった。


「そんでマルリース嬢はフリーか? それならオレと踊ってくれるか? オレも一曲も踊らないで帰るのもなんだし」


「え、いいんですか? ウィルフレド閣下なら踊りを申し込みたい貴婦人もたくさんいるんじゃないですか?」


「いやー。オレはほら、山男のような容姿だからな。やっぱ貴族の女性にはモテんよ」


 閣下は言葉と共に肩をすくめ、苦笑を浮かべた。その仕草が妙に人間味を感じさせ、思わず心からの笑みがこぼれた。


 ふふ。その謙遜、本当ですかね? ちがいますよね。


 リオネルがいなくなった私のガードをしてくれるつもりなんだろう。


 剣聖は耳が良いし、リオネルが先程「僕以外と踊っちゃ駄目」って言ってたのが聞こえてたかもしれない。


「いや、そんなことないと思います。頼れる紳士として心強く感じますし! お髭でお顔が一部隠れてらっしゃいますけど、ハンサムなこと、わかりますよ!」


 閣下は髪と髭には気を配ってらっしゃらないところがあるから、それを整えたら、きっと貴婦人にはモテると思うんだけど。

 ひょっとしたらモテたくなくて、わざとそうしてるのかもしれない。

 じゃなきゃ、領地の侍従がやらないわけないだろうし。


「そうかぁ? だが、褒め言葉はありがたく受け取っておこう。まあ、なんだ。オレと踊っとけば他の令息は寄ってこないだろう。男避けとしてこのオジサンはあなたの役に立てますかな?」


 私の褒め言葉に一瞬片目を見開いてすこし照れたような表情をされたがそれはサラッと流し、その後、軽くウインクして手を差し出された。


 やっぱりだ。


 正直助かる。ウィルフレド閣下なら、リオネルも怒らないだろうし。

 ウィルフレド閣下が傍にいれば、酔ったふりして絡んでくる令息とかも来ないだろうし。

 これは頼もしいサポート。


「とっても有り難いですよ! じゃあ、行きましょうか!」


「おう」


 私はウィルフレド殿下にエスコートしてもらい、ダンスホールに足を踏み入れた。

 背が高く堂々とした彼の姿は、踊る貴族男性の中でも、良い意味で目を惹かれるようだった。


 何人か頬を染めて見てる令嬢がいるのを私は見た。


 ほら、やっぱ。モテるじゃないですかー。

 

 ◆


 踊りながら閣下と話す。


 彼の豪快な見た目からは想像できないほど、ステップはしなやかで洗練されており、驚かされた。


 うーん、これはギャップ萌えで落とされた令嬢が今までたくさんいると見た。

 

 そんなウィルフレド閣下は、リオネルが彼に勝負を挑んだ時の話をしてくれた。

 

「いや、リオネルは強かったよ。度肝抜かれた。属性も俺が光だろ? 光属性が、風属性に負けるなんて思わないだろ。いや。属性が有利でも立ち回りで全然違うものと知ったよ。オレはいつも威力任せな実戦ばかりだったから」


 確かに。

 光属性はもう、光属性というだけで既に強い属性だものなぁ。

 王族以外で持ってる人ってあまり見ないし。


 そんな属性を持つウィルフレド閣下がリオネルを評価してもらえるなんて、姉として……じゃなかった、婚約者としてはとても、嬉しい。


「リオネルを褒めてくださりありがとうございます。リオは、父が騎士をしていましたので小さい頃から父に鍛えられてました。祖父も父も剣の腕は立つ方ほうでしたので、血筋かもしれません。だから試合形式は閣下より場馴れしていたかもしれません」

 

「なるほどなあ。うらやましいこった」

「でも、何でも有りの実戦なら勝てなかったかも? 実際に試合を見たわけじゃないので想像しか出来ませんが」


「ああ、確かに実戦ならオレもリオネルに勝てる余地は感じるなぁ」

「わわ、お手柔らかに……!!」


「ははは。リオネルは仲間だから、それはないから安心してくれ」

「味方でよかった!」


 軽口を叩き合いながらも、閣下の言葉に含まれる信頼の色合いに、心が温まる。


「しかし、リオネルも運が良すぎだろー。こんな美人で可愛い嫁さん、もらうんだろ? しかも両思いときた」


「び、美人で可愛いなんて」


「いや、自信もってくれ。マルリース嬢は、妖精のように美しい。生まれた家に血の繋がってないこんな美人の姉がいるとかリオネルは運良すぎだ」


「恐縮しすぎて踊れなくなりますよー!」


「ははは。ではここまでにしよう。 だがリオネルは本当に運が良い。希望した土地も貰いやがったし」


「確かに、リオネルは運が良いかもしれませんね」


 私が祈り、願いまくってるせいかもしれないけど。

 先ほどの両思い……という言葉やこの希望する土地、という言葉に彼の心残りを感じて少し胸が傷んだ。


「――でも閣下も辺境伯という名誉ある爵位を授かってらっしゃいますよね」

 

「名誉だけはあるよなー。ここだけの話、愚痴だぞ? もう防衛とかかったるいわ。爵位返上して旅にでたいよ、オレは。もうがんじがらめでそう言うわけにもいかんのだよなぁ。剣振るっていたいだけの男が、デスクに座らされて領地の勉強させられるんだぜ? 失敗したよ」


 彼の愚痴には、自由を渇望する心の叫びが透けて見える気がした。


 リオネルには、戦うのが好きだから辺境伯でいい、と言ってたみたいだけど、やっぱり嫌だったんだな、辺境警備……。お気の毒だ……。


「下位貴族からしたらとてもうらやましい立場なんですけどね。でも、私も貴族から平民になったタチですからわかります。平民も生きる辛さは同じですが、貴族のような気遣いなどは要らないので……なんか気楽です」


「おー! やっと意見がわかるヤツがいた。だよな。貴族生活は堅苦しいわ。オレはすぐにでもどこか旅に出たいわ」


 おっと。二度目の『旅に出たい』を頂きました。


 二度目の『旅に出たい』という言葉に、閣下が相当なストレスを抱えているのが伝わってきた。

 そういえば、領地の外に出たら出たで、ボニファースにストーカーされていたんだっけ……。


「跡継ぎが早めに継いでくれれば自由になれるかも……って、お子様は?」


「それがいないんだよな。そろそろ妻も産めなくなる年齢だし、養子でももらって――っと、下世話な話だった」


「あ、すいません。余計なことを聞いたようで」


「いやいや、全然構わん。あちこちでぼやいてることだからな! オレには貴族みたいな話し方しないでくれや。平民経験者としてマルリースは貴重な仲間だ」


 ニカッと豪快な笑顔を浮かべる。

 見た人を安心させる笑顔だな、と思った。

 私はもう、彼に対する心のカードがすっかり和らいでしまった。


「平民仲間、いいですね!」

「おう」


 平民仲間か。そんなふうに考えると、ノルベルトさんやマダム・グレンダと話しているような気楽さが出てきて、ウィルフレド閣下とのダンスは一層楽しく感じられた。


 ちょっと休憩しようとドリンクを手にしていると、父がやってきた。


「娘ぇ~。お父様とも踊ってよー」


 と情けない感じで言ってきた。

 なぜ身内にはダメ男風で喋るんですか、お父様。

 傍にウィルフレド閣下がいるんだから、恥ずかしいんだけど!


「お父様、ウィルフレド閣下に挨拶してください!?」


「あっ! これは申し訳ありません!!! マルリースの父のアーサー=リシュパンと申します。リオネルがお世話になっているようで」


 いきなりキリッと表情を切り替え、背筋を正す父。


 切り替え早いな!?


「いや、こちらこそお世話になっている。この間リオネルのおかげでストーカーが1人減ったしな」


 ……ストーカー。

 ……ボニファースのことだね。


「思い当たった顔してるな? マルリース。そう、おまえさんのストーカーでもあったボニファースだよ」


 そこで初めてリオネルが学院でボニファースに白手袋を叩きつけた話を聞いた。

 リオネル、私のために学院でそんな事をしてくれてたんだ……と、一瞬じーん、とはしたものの。

 

 あれ以来、私はボニファースをずっと警戒して生活してたんだよね。

 余計な心配してた。追い払ったなら早く教えてよ!?


「アイツ、なにやってんだ……。お父様聞いてないよ」


 これは父。眉間にちょっとシワよった。

 あとでリオネルに説教しそうだなぁ、これ。


「ははは。自分の大事な女を守るための決闘なんですから、いいじゃないですか。それに彼ももう大人なんですし」


「まあ、それもそうです」


「お父様ってリオネルに辛辣なようで過保護なとこありますよね」

「ち、ちがうもーん。私は私の家門に影響でないか心配なだけなんだからね!」


 笑顔ながらも父は、ツンデレ発言だった。

 本当はリオネルが心配なくせに。


 そんな話をしたところで、パーティ終了の鐘が鳴った。


「お、そろそろ終わりか」

「あ、終わりの挨拶をしなくちゃ。このあと、ご挨拶できるかわかりませんので……ウィルフレド閣下、本日はどうもありがとうございました。これからもリオネルと懇意にしてやってください」


 私は心をこめたカーテシーをし、その場をあとにした。


 そしてリオネルと合流し、終わりの挨拶をし、解散し、お客様の誘導を行う。

 宿泊客は、用意したお部屋へご案内!


 全てつつがなく本日の行程は終了!


 パーティ成功おめでとう! リオネル!



お読み頂きありがとうございます。

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