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誰よりそばにいた貴方

 それから私は異国を転々といたしました。流石に王太子もそんなに国をあけてられないので本人が追ってくることはなかったのですが、代理人をよこすので逃げ回っておりました。


 最近の王太子(バカ)殿下は謎の痒みに悩まされ、謎の落し穴にはまったり、謎の獣に襲われたりしているらしいですよ。

 部分的に心当たりがあるような無いような…気のせいですわよね?痒みが保健医で、落し穴が土魔法を得意とする義弟で、獣が獣に好かれる第二王子の仕業だったりしませんわよね?念のため、王妃様と父様に注意していただきましょう!


 さらにファンデとマカラから気になる手紙が来ました。


『王太子は第三の性癖に目覚めたので会ったらとにかく逃げて』


 何それ、怖い。しかも性癖が書かれてないのが余計に恐ろしいのですが…口に出すのもまずい系統ですの?








 それから1年。私とバングルの関係は変化しているように思います。








「ルージュは可愛いな」


「ここここら!どこを触ってますの!?」


「胸」


「だだだだダメですわ!そんなところを揉むなんて!」


「お前、さっき俺の尻を触っただろ」


「それ以上に触ってますわよ!」


 私はそこまで執拗に揉んでませんわ!そんな感じで、バングルの罰おさわりがさらに大胆になってきました。






「ほら、ルージュ。あーん」


「自分で食べられますわ!」


「…食べさせたいんだよ。ダメか?」


「くっ…卑怯な…」


 ダメか?でアヒルに変身してウルウルされました。こんな可愛い生き物のお願いを断れるはずがありませんわ!


「ちょっとだけ、ですわよ?」


「うんうん、完食までな」


「……え?」


 バングルが餌付け?給仕?をするようになりました。結局完食まででしたわ……しかも最近毎食なのですが…






「これ似合いそうだな」


「まあ、そうかしら?」


「うん、可愛いな」


 銀髪の美青年に微笑まれたら、誰だってときめきますわ!


「………こ、これだからイケメンは…」


 そんな感じでデートみたいなお出かけをしたり、バングルが短期の仕事をして私にプレゼントをくれたり…





「こ、今夜もですの?」


「ああ、不安なんだ…ダメか?」


 くっ…アヒル姿でウルウルしながら首をかしげるなんて…!なんて可愛いんですの!?こんな可愛い生き物のお願いを断れるはずがありませんわ!


「ま、まあアヒルなら…いい、わよね?」


「では遠慮なく」


「な、なんで人型になるんですのー!?」


「気にするな」


「気になりますわ!いくらなんでも、ものすごく気になりますわ!」


「ルージュ、アヒルでも人でも俺であることに変わりはない」


「そう…ですわよね。ごめんなさい。バングルはバングルですものね」


 私は素直にバングルの胸に寄り添いました。うふふ、温かくて幸せですわ。


「…チョロすぎる…」


「え?」


「いや、おやすみルージュ。いい夢を」


 そんな感じでおやすみのキスをされて毎晩添い寝したり…………





 これ、明らかにおかしいですわよね?人よりちょっとにぶい私でもわかりますわ!まるで……いやいや、主従関係!主従関係ですわよね!使い魔を甘やかす主人ですわ!

 バングルは魔力が上がったのか、最近は人型でいることがほとんどで…ちょっと心臓に悪いですわ。





 ずっと、ずっとバングルと居られたらいいのに。






 そんなことを考えていたから、罰が当たったのでしょう。


 とある北の国。ソルレイクの隣国で……バングルは本当のご主人様と再会してしまったのですわ。

 人型のバングルと二人で町を歩いていたら、綺麗な青年に呼び止められましたの。


『探しましたよ』


 バングルにそう話しかけた青年は、バングルに似た美しい銀の髪をしていましたわ。バングルはあまり嬉しそうではありませんでした。


『…そうか、悪かったな。ルージュ、俺はこいつと話がある』


『わかりましたわ』







 離れたところで、泣くのをこらえていました。いつかは来るはずだったことですわ。泣いてはいけません。ちゃんと笑顔でバングルを送り出さなくちゃ、ダメですわ。バングルがいるべき場所に戻れるのだから。

 バングルがたまに、北の空を眺めていたのを…私は知っていましたわ。それなのに私は…バングルをソルレイクに連れていかなかった。これ以上は別れを引き延ばせませんわ。バングルには戻るべき場所があるのです。





『ルージュ…ごめん。俺は元の場所に帰らなきゃならない』


 ああ、バングル。そんな悲しそうな表情をしないでくださいまし。


『いいえ…バングルと過ごせて楽しかったですわ。どうか、幸せに…バングルをよろしくお願いいたします』


 私は深々と青年に頭を下げました。


『…はい。かしこまりました』


 私は上手く笑えているかしら?最後くらいは…彼に向ける最後の表情は最高の笑顔でありたいわ。


『バングル…元気でね』


『ルージュ!!』


 バングルが私を抱きしめた。びっくりしてこらえていた涙が溢れる。


『そんな表情(かお)するなよ…!迎えに行く!必ずお前を迎えに行くから、1年待っていてくれ!それまでは誰のものにもなるな!』


 私、どんな表情(かお)をしていますの?笑えていなかったのですか?おかしいわ、私…愛した人に別れを告げた時だって、ちゃんと笑えていましたのに。


 感情が高まりすぎたのでしょう。私はそのまま気を失ったようです。



 気がつけば、朝でした。留学先の自室のベッドで寝ていました。


「……バングル?」


 悪い夢だったのではないでしょうか。そんな私の願いを込めた問いかけに、返事はありません。それが、昨夜のことが現実だったのだと…私を打ちのめすのでした。


・???が仲間になった。


 話の展開上ここで切りますが、基本的にきりのいいとこで切りたいので、明日も更新します。

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